園田高弘ピアノ•リサイタル
2003年12月13日19:00 札幌コンサートホールKitara 小ホール
ベートーヴェンピアノ作品連続演奏会第5回
ベートーヴェン 幻想曲 ト短調 作品77
ピアノソナタ 第32番 ハ短調 作品111
ディアベルリのワルツによる33の変奏曲
作品120
オープンから20数年経過すると、札幌コンサートホールで名演を聴かせてくれた演奏家の中には、他界した演奏家も少なからずいる。日本人では園田高弘。公式HPによると1928年生まれで2004年10月逝去。演奏家としてはこれから円熟の極みに到達する年齢だっただけに惜しまれてならない。
園田はKitara主催事業には2回出演しており、標題のコンサートが第2回目。初登場はベートヴェンピアノ作品連続演奏会のシリーズ第1回で、2001年10月3日。ピアノソナタ第27〜29番の後期ソナタ三曲を演奏し、巨匠らしい堂々とした見事な演奏だったが、園田の名音楽家としての素晴らしい存在感を示してくれたのはむしろこの第2回目だと思っている。プログラムがとても魅力的でベートーヴェンの晩年を色濃く物語る作品ばかりだ。
次々と色々な楽想が登場する一風変わった作風である幻想曲は、意外と聴く機会が少ない。園田の演奏は細部を精密に整えるというよりは即興的要素を反映させたスケールの大きな演奏で、幸いこの演奏はKitara 開館10周年記念CDに収録されており、今でもその名演を聴くことができる(2007年7月4日の10周年バースデイコンサートの来場者にプレゼントされた非売品)。
ソナタ第32番とディアベルリ変奏曲はまるで一つの大きな作品のようだった。技術的にも音楽的にも日本人演奏家としては最高のレベルで、やや硬質だが決して芯がぶれない気骨のある演奏。語り口はスマートではないが、真摯で、嘘偽りのないベートーヴェンの音楽世界を見事に表現した名演だった。
当時は開館4年目で、新しいスタインウェイにいいサウンドが出てきた頃だ。園田のサウンドは必ずしも美しい音ではなかったにせよ、言葉では表現できない深い味わいのある魅力的な音だった。
手元に詳細なデーターがないので断言は出来ないが、Kitara で大曲のピアノソナタ第29番とディアベルリ変奏曲の両方を演奏したのは園田ただ一人だ。
戦後すぐにデビューし、ヨーロッパで活躍した数少ない選び抜かれたエリート達の世代の演奏を聴けたのはとても貴重な機会でもあった。2004年12月9日の札響定期でブラームスのピアノ協奏曲第2番を演奏する予定だったが、果たせなかった。
写真は園田高弘帰朝演奏会
札幌公演予告パンフレット
(M•N氏提供、年代不明)
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