2026/06/22

 ダネル弦楽四重奏団


2026年6月20・21日各15:00開演 札幌コンサートホールKitara小ホール


ヴァイオリン/マルク・ダネル、ジル・ミレ
ヴィオラ/ヴラッド・ボグダナス
チェロ/ヨヴァン・マルコヴィッチ


ポジティフオルガン/赤枝 サンテソン 留果

 (第26代札幌コンサートコンサートホール専属オルガニスト)※21日のみ


プログラム

DAY 1  

6月20日

メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 作品13
ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調 作品11


DAY 2 

6月21日

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 作品135

グレンジ:弦楽四重奏とオルガンのための新作
[ポジティフオルガン/赤枝 サンテソン 留果]
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第6番 ヘ短調 作品80



 ダネルカルテットは2005年札幌コンサートホールが初めて招聘し初来日。今回は2024年6月9日以来、2年ぶりの公演で、11回目の来札となる。古典から現代までレパートリーは広い。

 前々回の来札時にも書いたが、このカルテットの印象は当時と大きく変わらないので再掲しておこう。


 ーマルク・ダネルのアクティブで、しかも表情豊かに歌い込まれた演奏が中心に展開されるカルテットだが、内声を担当するセカンド・ヴァイオリンのジル・ミレ、ヴィオラのヴラッド・ボグダナスの安定感が素晴らしい。オーケストラでもそうだが、内声部が充実していると、音が厚く、音楽的にも充実して聴こえてくる。チェロのヨヴァン・マルコヴィッチはいつもバランスの良い演奏をし、飛び出ることもなく、隠れて聴こえなくなることもなく、中庸の演奏で、主張がないようである、というカルテット奏者としては理想的存在だ。ー(2022年6月4日、5日


 DAY 1(第一日目)は作曲家の第一作目の弦楽四重奏曲を特集したもの。なかなか魅力的な構成だ。

 メンデルスゾーンは1827年18歳の作品。明らかにベートーヴェンをお手本としているが、早熟の天才ゆえ、すでにメンデルスゾーン特有の流麗な作風が確立されている。

 冒頭はややマルクが突っ走り気味でどうなることか、と思ったが、第2楽章以降は安定し、特にマルクがノンヴィブラートで弾いてみたり、素朴で民謡風に表現したり、ダイナミックに切り込み激しく弾いてみたりと、その多彩ぶりが素晴らしい。以前よりもより表現の幅が広がったような気がする。もちろん、4人が一体となってメンデルスゾーンらしい覇気のある才気走った、駆け抜けるような鮮やかさが見事に表現されており、2年ぶりのダネル、ますますの充実ぶりが伝わってきて嬉しかった。


 続くラヴェルは2007年10月の札幌公演以来2度目の演奏。メンデルスゾーンとは音色やバランスをガラリと変えて、抑制されよくコンロールされた美しい音色による演奏。強烈なオリジナリティをすでに確立していた若きラヴェル(当時27歳)の様式観が見事に表現されており、聞き応えがあった。

 2007年時の彼らの演奏はもう記憶にないが、以前より一層緻密になったような気がする。


 チャイコフスキーは、2022年にも演奏されている。ベートーヴェンの影響が如実に感じられる作品だが、このカルテットの良く歌い込まれた演奏で聴くとチャイコフスキー独特の情緒豊かな世界が広がり、特に有名な第二楽章、アンダンテ・カンタービレが唯一無二の静謐な世界が展開され、素晴らしかった。

全体的にはロシア的というよりもむしろラテン的な明るさを感じさせた演奏。


 アンコールにショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第1番(!)ハ長調作品49より第4楽章とチャイコフスキーの第1番より第4楽章をもう一度演奏。



 DAY 2(第二日目)は作曲家最後の作品を特集したプログラム。

ベートーヴェンはこの2日間で演奏された作品の中ではやはり別格の傑作であることを再認識。他の作品とは違い、何か特定の感情を表現したり想起させることはなく、優れたバランス感覚による、大きな普遍性を感じさせた演奏。

 一方で、ことさら晩年の崇高な作品だ、という堅苦しいイメージを全く感じさせない。楽しみながら作曲したのであろうベートーヴェンをより身近な存在にし、親しみやすい、新しい作品像を紹介してくれた名演だった。


 フィリップ・グレンジの弦楽四重奏とオルガンのための新作、「Bobok」は饒舌で良く話しかけてくる作品。

 グレンジは初めて聴く作曲家で、プログラム解説によると、この作品は「衰退」と「消滅」を表現しているようで、ドストエフスキーの同名の作品から着想を得たそうだ。日本人の現代作品であれば、静と動の対比、沈黙の重要さを意識させる作品が多いが、この作品では冒頭の静かなオルガンソロはともかく、カルテットが加わってくると、次第に饒舌になり何かおしゃべりに夢中になっているような雰囲気がある。やや鬱陶しさを感じさせる瞬間もあったが、ダネルの集中力のある演奏が終始格調の高さを崩さず、作品の価値をより高めたのではないだろうか。同時に、ダネルを良く知っている作曲家ならではの語り口だったことは確かだ。

 一方で、オルガンは、導入と衰退というこの作品の本質に関わる重要な役割を担っているとも言えるが、欲を言えば、オルガニストの活躍をもう少し聴きたかったところだ。

 この作品は、アンコールにもう一度演奏。細部の印象はずいぶん違って聴こえてきて、一度聴いただけでは本質が理解出来ないことを認識させられた。


 最後のメンデルスゾーンは、同じ調性のベートーヴェンの熱情ソナタを彷彿とさせる爆発する激しい感情の発露をダネルが見事に表現。今、このカルテットでなければ聴けない気迫のこもった激しい感情の爆発のようなものを感じさせた名演だった。日本人であればここまで徹底した表現は出来ないだろう、と思わせるダイナミックで劇的な演奏で、これは実に素晴らしかった。


2026/06/01



 札幌交響楽団 第677回定期演奏会

 2026年5月31日13:00  札幌コンサートホール Kitara大ホール


指揮/エリアス・グランディ

コントラルト/ゲルヒルト・ロンベルガー

女声合唱/札響合唱団

児童合唱/HBC少年少女合唱団ジュニアクラス

管弦楽/札幌交響楽団


マーラー:交響曲第3番



 

 この作品、大作ゆえにライヴで聴く機会は極めて少ない。この札幌コンサートホールで前回聴いたのは、確か2000年のPMFで、最近惜しくも他界したマイケル・ティルソン・トーマスの指揮だったと思う。アカデミー生が冒頭のホルンを元気いっぱいに演奏していたことをうっすらと記憶している。

 札響では2010年の定期に尾高忠明の指揮で演奏されたようだが、残念ながら聴いていない。従ってライヴで聴くのは四半世紀ぶり。


今日は素晴らしい公演だった。何よりもグランディが首席指揮者ならでは大活躍。良く歌い込まれ細部まで丁寧に仕上げられ、全体的にやや遅めのテンポによる演奏で曖昧な箇所はひとつもない。各楽章の性格描写が的確かつわかりやすく、間延びしたり先走ったりするところが全くない。スコアのあちこちに書かれているマーラーの指示、「急がないで!」を思い出すほど、落ち着いた安定した演奏だった。

 それと良質の響き。これだけ金管楽器が多ければ、もっと派手で大音響の演奏が繰り広げられるのだろうと思いきや、金管楽器群が洗練された、かつ精巧にコントロールされた、例えれば、ヨーロピアンスタイルとでも言える、極めてバランス感覚に優れた演奏。

 この管楽器群と弦楽器群が作り出す全体の響きがまるでヨーロッパの良質のオーケストラを聴いているようだった。特に第6楽章のフィナーレに向かって次第に音量を増大していくところでも、まとまりのある極めてバランスのいい響きを失わず、これはとても心地良かった。こういう感覚の響きを札響から聴くのはひょっとして初めてかもしれない。


 そのグランディの要求に見事に応えたオーケストラもまた素晴らしくかった。特に、金管楽器ではトロンボーンの首席山下と、昨年11月に退団し、今日エキストラ首席として出演した福田の両名。良くコントロールされた音色と表現で、「歌う金管楽器」として本日の主役級の大活躍。余すところなくマーラーの魅力を堪能させてくれた。そのほかの管楽器グループももちろん好演。木管では最近フルート首席が良く音が通るようになってきて、今日もいい演奏だった。


 今日は対向配置で、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンが離れて座っており、マーラーのように対位法的に各セクションの独立性が強い場合はこの配置がいいようだ。特に、終楽章のようにいかにもマーラーらしい通俗的歌謡性を感じさせる単純な旋律と豊かな対位法的動きとが一体となった楽章ではこの対向配置が抜群の演奏効果を挙げていたのではないだろうか。

 弦楽器は力まず、柔らかいボーイングでいい音色での演奏。特に第2楽章でのヴァイオリンの主題の歌い方が秀悦。軽やかでマーラーのいう無邪気さが素敵に表現されていて、これもグランディの的確な指示ゆえか。

 逆に、各パートがクリアに聴こえてきただけに、もう少し厚みのある響きがあれば、などと感じたところもあり、この辺は今後の課題かもしれない。

 コントラルトのゲルヒルト・ロンベルガーが深い奥行きのある声で、説得力のある歌唱。女声合唱団はやや歌詞がわかりにくかったにせよ児童合唱団と共に好演。

 トータルではここ最近の定期では抜群の仕上がりだったと言えよう。グランディの今後の活躍が多いに期待できる。

 コンサートマスターは田島高宏。

2026/05/29


ガエターノ・ドニゼッティ

愛の妙薬


2026年5月27日14:00 新国立劇場


【指 揮】マルコ・ギダリーニ

【演 出】チェーザレ・リエヴィ

【美 術】ルイジ・ペーレゴ

【衣 裳】マリーナ・ルクサルド

【照 明】立田雄士


【アディーナ】フランチェスカ・ピア・ヴィターレ

【ネモリーノ】マッテオ・デソーレ

【ベルコーレ】シモーネ・アルベルギーニ

【ドゥルカマーラ】マルコ・フィリッポ・ロマーノ

【ジャンネッタ】今野沙知恵

【合 唱】新国立劇場合唱団

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団



 2010年初演プロダクションの再演。今回が5回目の再演となる人気上演のようだが、観るのは初めて。

    舞台はモダン仕様で、ともかく明るく、派手で綺麗だ。衣装は様々だが、基本オレンジの暖色系が中心の色調。舞台照明など、様々な場面がこの配色を中心に展開される。ほぼ実物大のセスナ機がドンと登場したり、場面に応じてハリボテ状の大きな文字や厚い本が入れ替わり、場所や形を変えて様々な場面を作り出す。

 これがうるさくなく、劇の進行を妨げないばかりか、場面ごとの性格を極めて明確に語ってくれ、実にわかりやすい。

 今回5度目の再演ということでかなりこなれた舞台になっているようだ。音楽の進行、雰囲気に美しく合致している舞台で、モダン仕様の舞台の中では音楽を妨げない抜群の仕上がりと言えるだろう。


 指揮は劇場初登場のマルコ・ギダリーニ。音楽は生き生きとしており、テンポは早目で、快活かつ伸びやかで、ドラマティックな表情にも事欠かない。東フィルから様々な表情を引き出し、このオペラに相応しい音楽を作り出したいい指揮者だ。

 前半の主役は新国立劇場合唱団。合唱はもちろんだが、衣装の明るい色彩感と様々な動きによる演技力とが自然にマッチングしており、音楽的にも視覚的にも楽しませてくれた。


 歌手ではアディーナのフランチェスカ・ピア・ヴィターレが歌も演技も容姿もなかなか魅力的。表現力豊かで声も上から下までよく整っていて、高音はほぼ完璧。これはとても素晴らしかった。

 ネモリーノのマッテオ・デソーレは22年椿姫のアルフレード役でこの劇場初登場以来2度目だが、聴くのは初めて。多彩な表情で、やや頼りない馬鹿正直なネモリーノという雰囲気を出しこれもお見事。「人知れぬ涙」はあえてこのような表現にしたのかも知れないが、贅沢を言えば絶唱まで行かず、奥行きの深さでは名歌手の域までもう少しか、というところもあったにせよ申し分ない熱演だった。

 ドゥルカマーラのマルコ・フィリッポ・ロマーノはこの劇場初登場。コミカルで実は難しい狂言回しの役柄を実に楽しげに、主役の如き見事にこなし、好演。そのほか、ベルコーレのシモーネ・アルベルギーニも存在感ある歌で良かった。

 ソリストがジャンネッタ以外海外勢というのは、このプロダクションでは初めてのようだが、日本人からはなかなか感じられないタフな声帯とコミカルな演技力は観ていて楽しいだけではなく、イタリアオペラのある種の筋金入りの逞しさ、一貫する大きな流れのようなものを感じさせてくれ、これは大成功ではないだろうか。



ジュール・マスネ

ウェルテル


 2026年5月26日14:00   新国立劇場


【指 揮】アンドリー・ユルケヴィチ

【演 出】ニコラ・ジョエル

【美 術】エマニュエル・ファーヴル

【衣 裳】カティア・デュフロ

【照 明】ヴィニチオ・ケリ


【ウェルテル】チャールズ・カストロノーヴォ

【シャルロット】脇園 彩

【アルベール】須藤慎吾

【ソフィー】砂田愛梨

【大法官】伊藤貴之

【シュミット】村上公太

【ジョアン】駒田敏章

【ブリュールマン】水野 優

【ケッチェン】肥沼諒子


【合唱指揮】平野桂子

【合 唱】新国立劇場合唱団

【児童合唱】世田谷ジュニア合唱団

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団




 2016年新制作プロジェクトの再演。16年は4月13日の公演を観た。冒頭のクリスマスソングの練習シーンの舞台は前回よりシンプルになったようだが、それ以外は多分同じだろう。 

 全体的に落ち着いた雰囲気のクラシックな舞台で、アルベールの部屋の豪華な装飾のクラブサンや、壁一面を埋める本棚のあるウェルテルの部屋など、さりげなく気の利いた調度品を使って上流階級の品の良さを出し、同時に余計な物を省いて空間の広がりを感じさせる良質のステージだ。

 

歌手はウェルテル役のチャールズ・カストロノーヴォがやはり表現力豊かで、揺れ動く感情に左右される不安定な雰囲気を常に漂わせ、好演。

 シャルロット役の脇園彩は、ウェルテルよりも大人で年上の落ち着いた雰囲気の女性を感じさせ、今までとはちょっと違うシャルロッテ像。特に第3幕での手紙の場での歌は圧倒的、また第4幕でのカストロノーヴォとの二重唱は両者とも細かい感情の動きをよく表現し、秀逸。この第4幕のシーン、個人的にはちょっと拗すぎると感じる場面ではあるが、美しく情緒的にまとめ上げ、聞き応えのあるいいシーンだった。

 ソフィー役の砂田愛梨はよく通る声で、可憐な雰囲気の従来のソフィー像を聴かせてくれた。アルベール役の須藤慎吾も好演。

 一方で第4幕直前のピストルの音がやや曖昧で、単なる舞台転換に伴うノイズか、と思ったほどで、このオペラの最も効果的な演出場面のひとつだったのにちょっと残念。


 だが、今日の立役者は指揮者、アンドリー・ユルケヴィチ。2019年のエウゲニー・オネーギンで新国立劇場初登場し、この時の10月3日公演を観ているが、実はあまり記憶になかった。一幕の初めこそオーケストラにやや荒っぽさを感じさせたが、次第に響きが整い始め、メリハリのあるドラマティックな音楽作りで、この作品を単なる非恋物語に終わらせずにスケールの大きな人間ドラマとして表現。イタリアオペラとは一味違う男女愛の形を情感豊かに表現した優れた上演だった。

2026/05/24


  森の響フレンド

札幌交響楽団名曲コンサート

ドヴォルジャーク×チャイコフスキー


 2026年5月23日14:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮/藤岡 幸夫

チェロ /石川 祐支<首席奏者>


ドヴォルジャーク:チェロ協奏曲

チャイコフスキー交響曲第4番



    ドヴォルジャークのソロは札響首席奏者の石川 祐支。この作品での石川と札響の共演はラドミル・エリシュカ時代の定期(2013.10.11第563回)で聴いて以来。従って個人的には13年ぶりに聴く演奏だ。

 どのフレーズでも確実で誇張されることなく的確に表現されていて、安定感のあるいい演奏だ。気心の知れた仲間との共演のためか、オーケストラとのアンサンブルも全く問題なく、ゲストソリストとの共演からは感じられない安心感がある。かつて、名匠エリシュカはこの協奏曲では結構危なっかしい棒を振っていたが、今回の藤岡の棒は的確で、オーケストラはスケール感豊かな演奏。ドヴォルジャークの優れたオーケストレーションが見事に再現されていて、とても気持ちのいい演奏だった。

 終演後は石川のネームタオルが振られるなど、プロ野球選手並みの派手で熱烈な拍手が続いたにも関わらずソリストアンコールは無し。ちょっと残念でした。


 後半はチャイコフスキーの交響曲第4番。今年は676回定期(4/18、広上)で第5番、hitaru定期第25回(4/30、円光寺)で第6番「悲愴」を聴いたばかり。わずかひと月ばかりの間にチャイコフスキーの3大交響曲を聴いたことになる。

 数少ない貴重な機会で、こうしてまとめて聴いてみると、一筋縄では行かない重量感のある傑作揃いであることを改めて認識。今振り返ってみると、演奏は三者三様の個性があって実に面白かったが、何よりもこのオーケストラが安定した実力の持ち主であることを実感出来たのは良かった。

 この第4番は意外と聴く機会が少なく、この会場で聴くのは本当に久しぶりだ。華やかで派手な作風だけにオーケストラの実力が問われる作品だが、今日の藤岡は全体をそつなくまとめ上げ、どちらかというとオーケストラの機能をうまく引き出した熱い演奏。細かいディテールもきちんと仕上げられており、申し分ない。いずれの楽章も大きな瑕疵がなく、優れたアンサンブル能力を導き出し、このオーケストラの実力を余す所なく発揮させた、スッキリとしたいい演奏だった。

アンコールに「エルガー/夕べの歌 op.15-1」。

 コンサートマスターは田島高宏。

2026/05/01


札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第25回

 2026年4月30日19:00 札幌文化芸術劇場 hitaru


指揮 /円光寺 雅彦

ピアノ /松田 華音


久石譲:坂の上の雲  オーケストラのための

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」



    久石の作品は、オーケストレーションが素晴らしく、柔らかく豊穣な響きでとても聴きやすい。オーケストラの各楽器にほぼ均等に活躍の場を与え、聴き手は個々の楽器と全体のまとまりの響きを同時に味わうことができて、なかなか楽しい。久しぶりに聴く円光寺のタクトが冴え、札響から伸びやかで明るく、久石の作品を堪能するには最も相応しい響きを引き出してくれた。


 ラフマニノフを弾いた松田は、前回札幌コンサートホールでの名曲シリーズでチャイコフスキー(2022年11月6日 指揮 /松本 宗利音)を聴いて以来。かなりタフなピアニストだった印象を受けたが、今回もそれは変わらない。高い音楽性とテクニックを持ち合わせ、とてもバランス感覚に優れている。オーケストラのトゥッティでもほぼ何を弾いているか聴こえてくるし、技巧的には完璧、音色も綺麗でよく歌い込まれていて申し分ない。

 ただ今日は使用楽器の性格もあったのか、単音ではとても美しいのだが、ラフマニノフらしい分厚い豊かなハーモニーがちょっと痩せて聴こえてきて、よく伝わって来なかったのが残念。

 オーケストラは好演。ソリストとの呼吸がたまに合わなかったようだが、総じてスケールの大きさを感じさせたいい演奏だった。

 ソリストアンコールにムソルグスキー(ラフマニノフ編)/歌劇「ソロチンスクの定期市」より"ゴパック"。技巧的で華やかな作品で聞き応えがあった。


「悲愴」交響曲は、最後の楽章が素晴らしかった。弦楽器の深く心の底を抉るような歌い方、管楽器の美しい表情、コントラバスに託した次第に幕を閉じていく表情など、とても印象深く、フィナーレに相応しい表現だったといえよう。それと比較すると、第二、第三楽章など、大味で、指揮者が何を表現したいのかが、よく伝わって来ないもどかしさがあり、やや陰影の豊かさが少なく、単調になりがちだったのが残念。

 しかしながら劇場いっぱいに響き渡るサウンドはとても心地よく、札幌コンサートホールで聴く札響とはまた違った魅力的なサウンドを引き出してくれた良質の公演だったとも言えよう。

 コンサートマスターは田島高宏。