PMF GALA コンサート
2026年7月26日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
【第1部】
赤枝サンテソン留果(第26代 札幌コンサートホール専属オルガニスト)*
PMFオーケストラ・メンバー**
イザベラ・エガワ(ヴァイオリン I)
ケイト・リー(ヴァイオリン II)
マシュー・ジラデット(ヴィオラ)
ルナ・ノゲイラ(チェロ)
PMFアメリカ***
ヌリット・バー・ジョセフ
(ヴァイオリン/ワシントン・ナショナル管弦楽団)
ダニエル・フォスター(ヴィオラ/ワシントン・ナショナル管弦楽団)
アレクサンダー・ハンナ(コントラバス/シカゴ交響楽団)
ネイサン・ヒューズ(オーボエ/ミネソタ管弦楽団)
スティーヴン・ウィリアムソン(クラリネット/シカゴ交響楽団)
【第2部】
指揮/デイヴィッド・ロバートソン
ヴァイオリン/吉本梨乃****
PMFアメリカ
PMFオーケストラ
【第1部】
◆J. S. バッハ:パッサカリア ハ短調 BWV 582*
◆J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト短調 BWV 1001 から****
◆ハイドン:弦楽四重奏曲 ニ短調 作品76-2「五度」から**
◆プロコフィエフ:五重奏曲 ト短調 作品39 から***
【第2部】
◆ストラヴィンスキー:管楽器のためのシンフォニーズ(1947年版)
◆ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61****
◆プロコフィエフ:交響曲 第5番 変ロ長調 作品100
ベートーヴェンのソリスト、吉本梨乃が素晴らしかった。その演奏は伸びやかで生命力に満ち、アクティブで思い切りの良さがある。均整の取れた深く歌い込んだ表情が印象的で、久しぶりに聴くスケール感豊かなヴァイオリニストだ。特に両端楽章でのカデンツァが見事だった。
指揮のロバートソンは切れ味の良いビートの効いた指揮ぶりで、ヴァイオリニストを単にサポートするだけではなく、オーケストラをしっかりと把握し、全体を引き締まった鋭角な演奏でまとめ上げ、申し分なかった。やはり古典はいい、と思わせる名演だったといえよう。
オーケストラは12型で、チェロが上手客席側に座る配置のためか、低弦がしっかりと聴こえてきて、全体的になかなかいい音がしていた。
プロコフィエフは教授陣も加わっての大編成で、迫力満点。いったい何人ステージに奏者がいたのか数え切れないほど。配列もベートーヴェンと同じ。
オーケストラスタディとして、この作品を音楽祭フィナーレで演奏するのは意外だったが、確かに色々な要素が含まれていて、アンサンブルを学ぶには好例なのかもしれない。
たくさんのモティーフが登場する、なかなかまとめにくい作品だが、ロバートソンは、これだけの大編成を見事に交通整理し、乱雑にならずにしっかりとまとめ上げた演奏で、その手腕は実に見事。前回の12日のPMFオーケストラ公演からすでに2週間、仕上がりは雲泥の差で、指揮者の力量はともかく、オーケストラとしての基本的なアンサンブル能力が格段に進歩していることが感じられた。
当日配布プログラムの解説によると『作曲者によれば、この曲は「人間精神の偉大さへの賛歌」』。それを前提に聴いてみると、確かに、今日の演奏は、全体的な印象では、人生を高らかに謳歌する喜びに満ちた表情で、どの楽章も明るく楽しげで屈託がない。人生全て肯定的、とも言いたげな演奏だった。
ただ編成が大きく、響きが豊かゆえなのか、細部のアーティキュレーションなど不明瞭になりがちでどの楽章も似たようなまろやかな雰囲気になりがちだったのは惜しい。プロコフィエフらしい皮肉っぽい、尖って、何処か白けたところが全く感じられず、多少不満でもあったが、ロバートソンは、これはそういう作品なのだ、と伝えたかったのかもしれない。
この作品、演奏機会が少なく、札幌ではしばらく演奏されていないようで、札響定期でも過去5回しか取り上げられていない。その点では貴重な鑑賞機会だったと言えよう。
第1部ではそれぞれ皆いい演奏だったが、ピックアップするならば、赤枝サンテソン留果のオルガンによるバッハのパッサカリアと、第2部で協奏曲を弾いた吉本のバッハのソロヴァイオリン・ソナタの演奏。
パッサカリアは次第にエネルギーを発散させていく盛り上げ方が彼ならではのオリジナリティが感じられ、聞き応えがあった。
ヴァイオリン・ソロは抜粋で演奏した2つの楽章とも、伸びやかでかつビートの効いた明快な演奏でとても良かった。この感覚は後半のベートーヴェンでも存分に発揮された。