札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第26回
2026年8月5日19:00 札幌文化芸術劇場 hitaru
指揮 /沖澤 のどか
ヴァイオリン /中野 りな
管弦楽/札幌交響楽団
林 光:吹き抜ける夏風の祭
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」組曲より
~沖澤のどかセレクション~
モンタギュー家とキャピュレット家(第2組曲No.1)
少女ジュリエット(第2組曲No.2)
マスク(第1組曲No.5)
ロメオとジュリエット(第1組曲No.6)
ティボルトの死(第1組曲No.7)
別れの前のロメオとジュリエット(第2組曲No.5)
ジュリエットの墓の前のロメオ(第2組曲No.7)
現在多方面で活躍中の沖澤のどかが札幌初登場。プレトークでのお話しを聞くと、明るく元気がよく、おしゃべり好きの活発な人柄のようで、指揮にもその人柄が現れていたようだ。
後半のプロコフィエフがとても良かった。オーケストラをよく把握し、札響からベストのサウンドを引き出し、管楽器群からは厚みのある豊かな響きを構築、弦楽器群はよく歌わせ、共に響きがとてもきれいで最強音でも聴きやすい。耳障りな響きは一切なく、全体的にとてもバランスの良い、いい音を導き出し、しかも細部まで細やかで豊かな表情があり、音楽的にも申し分ない。
冒頭の「モンタギュー家とキャピュレット家」のこれから起こるドラマを予期させるような不安感と期待感とが入り混じった表情、「ロメオとジュリエット」での歌い込まれた繊細で美しい表情など、ピックアップすればきりが無いほど多彩な表情に満ちており、これほど音楽的に豊かなプロコフィエフは滅多に聴けないのでは。
単なるバレエ音楽の枠を大きく超えた名曲であることを実感させた演奏で、沖澤の素晴らしい音楽性と統率力が感じられ、その幅広い活躍ぶりは当然だと思わせた。
とは言いつつ、後半のプロコフィエフの仕上がりの良さから見ると、冒頭の林光はやや物足りない。プレトークによると、この作品、祇園祭をモティーフにしているとのこと。筆者もこの祭を猛暑の中何度か経験しているが、そんな大衆の個人的想いではなく、もっと長い歴史の中で語り継がれる普遍的な祭の情景を、その準備から描写しているようだ。今日の演奏は、まとまりのあるとてもいい音がしていたが、全体的に一本調子。作品そのものは、もっと幻想的で多彩のように思えたので、もし演奏機会がまたあれば次回に期待しよう。
シベリウスはソリストの中野りなが素晴らしかった。2025年3月に札響とチャイコフスキーのコンチェルトを共演していたようだが、聴くのは初めて。
技術的には申し分なく、逞しさを感じさせる豊かな響きと音色が特徴で、シベリウスを太い線で明確にしっかりと描いてくれた名演。沖澤は単なるサポート役に留まらず、表現力豊かな、ドラマティックなシベリウスを聴かせてくれ、ソリストと一体となったスケールの大きいシベリウスを聴かせてくれた。
時としてオーケストラが響き過ぎ、ソリストが埋没してしまう瞬間もあったにせよ、コンチェルトでこれだけオーケストラを豊かに響かせた演奏は滅多にないので、とても聞き応えがあった、充実した演奏だった。
ソリストの音程の取り方が時々低めでオーケストラと調和していない箇所もあったように聴こえたが、これはあくまでも個人的好みで、気のせいかもしれない。
コンサートマスターは会田莉凡。