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2026/07/28

PMF GALA コンサート

2026年7月26日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール


【第1部】
赤枝サンテソン留果(第26代 札幌コンサートホール専属オルガニスト)*


PMFオーケストラ・メンバー**

 イザベラ・エガワ(ヴァイオリン I)
 ケイト・リー(ヴァイオリン II)
 マシュー・ジラデット(ヴィオラ)    
 ルナ・ノゲイラ(チェロ) 


PMFアメリカ***

 ヌリット・バー・ジョセフ

         (ヴァイオリン/ワシントン・ナショナル管弦楽団)
 ダニエル・フォスター(ヴィオラ/ワシントン・ナショナル管弦楽団)
 アレクサンダー・ハンナ(コントラバス/シカゴ交響楽団)
 ネイサン・ヒューズ(オーボエ/ミネソタ管弦楽団)
 スティーヴン・ウィリアムソン(クラリネット/シカゴ交響楽団)

【第2部】
指揮/デイヴィッド・ロバートソン
ヴァイオリン/吉本梨乃****
PMFアメリカ
PMFオーケストラ


【第1部】
 
◆J. S. バッハ:パッサカリア ハ短調 BWV 582*
◆J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト短調 BWV 1001 から****
◆ハイドン:弦楽四重奏曲 ニ短調 作品76-2「五度」から**
◆プロコフィエフ:五重奏曲 ト短調 作品39 から***

【第2部】
◆ストラヴィンスキー:管楽器のためのシンフォニーズ(1947年版)
◆ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61****
◆プロコフィエフ:交響曲 第5番 変ロ長調 作品100



 まず第2部から。ストラヴィンスキーは管楽器だけでありながら全体的に柔らかく、まろやかな演奏。やや取り止めのないところもあったが、冒頭に相応しい明るい雰囲気の演奏だった。指揮者のデイヴィッド・ロバートソンは陽性の音楽性で全体をまとめ上げるのがとても上手なようで、その長所は早くもこの演奏からも感じ取ることができた。

 ベートーヴェンのソリスト、吉本梨乃が素晴らしかった。その演奏は伸びやかで生命力に満ち、アクティブで思い切りの良さがある。均整の取れた深く歌い込んだ表情が印象的で、久しぶりに聴くスケール感豊かなヴァイオリニストだ。特に両端楽章でのカデンツァが見事だった。

 指揮のロバートソンは切れ味の良いビートの効いた指揮ぶりで、ヴァイオリニストを単にサポートするだけではなく、オーケストラをしっかりと把握し、全体を引き締まった鋭角な演奏でまとめ上げ、申し分なかった。やはり古典はいい、と思わせる名演だったといえよう。

 オーケストラは12型で、チェロが上手客席側に座る配置のためか、低弦がしっかりと聴こえてきて、全体的になかなかいい音がしていた。


 プロコフィエフは教授陣も加わっての大編成で、迫力満点。いったい何人ステージに奏者がいたのか数え切れないほど。配列もベートーヴェンと同じ。 

 オーケストラスタディとして、この作品を音楽祭フィナーレで演奏するのは意外だったが、確かに色々な要素が含まれていて、アンサンブルを学ぶには好例なのかもしれない。

 たくさんのモティーフが登場する、なかなかまとめにくい作品だが、ロバートソンは、これだけの大編成を見事に交通整理し、乱雑にならずにしっかりとまとめ上げた演奏で、その手腕は実に見事。前回の12日のPMFオーケストラ公演からすでに2週間、仕上がりは雲泥の差で、指揮者の力量はともかく、オーケストラとしての基本的なアンサンブル能力が格段に進歩していることが感じられた。

 当日配布プログラムの解説によると『作曲者によれば、この曲は「人間精神の偉大さへの賛歌」』。それを前提に聴いてみると、確かに、今日の演奏は、全体的な印象では、人生を高らかに謳歌する喜びに満ちた表情で、どの楽章も明るく楽しげで屈託がない。人生全て肯定的、とも言いたげな演奏だった。

 ただ編成が大きく、響きが豊かゆえなのか、細部のアーティキュレーションなど不明瞭になりがちでどの楽章も似たようなまろやかな雰囲気になりがちだったのは惜しい。プロコフィエフらしい皮肉っぽい、尖って、何処か白けたところが全く感じられず、多少不満でもあったが、ロバートソンは、これはそういう作品なのだ、と伝えたかったのかもしれない。

 この作品、演奏機会が少なく、札幌ではしばらく演奏されていないようで、札響定期でも過去5回しか取り上げられていない。その点では貴重な鑑賞機会だったと言えよう。


 第1部ではそれぞれ皆いい演奏だったが、ピックアップするならば、赤枝サンテソン留果のオルガンによるバッハのパッサカリアと、第2部で協奏曲を弾いた吉本のバッハのソロヴァイオリン・ソナタの演奏。

 パッサカリアは次第にエネルギーを発散させていく盛り上げ方が彼ならではのオリジナリティが感じられ、聞き応えがあった。

 ヴァイオリン・ソロは抜粋で演奏した2つの楽章とも、伸びやかでかつビートの効いた明快な演奏でとても良かった。この感覚は後半のベートーヴェンでも存分に発揮された。



2026/07/20

 PMFホストシティ•オーケストラ演奏会

2026年7月19日13:00 札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮/アンドレアス・オッテンザマー
チェロ/上野通明*
管弦楽/札幌交響楽団(PMFホストシティ・オーケストラ)
    PMFアメリカ・メンバー**
    PMFオーケストラ・メンバー**


◆フランツ・シュレーカー:間奏曲 作品8
◆ブリテン:チェロ交響曲 作品68*
◆ドヴォルザーク:交響曲 第6番 ニ長調 作品60**



 オッテンザマーは1989年生まれのまだ30代の若手。ベルリン・フィルで首席クラリネット奏者を長く務め、その後指揮者に転向、日本ではNHK交響楽団と共演している。

 冒頭のシュレーカー(1878〜1934)の「弦楽器のための間奏曲」は1900年の作品。生没年代が示すとおり、この時代の影響を直接的に受けた後期ロマン派風の作風で、凝った和声進行など興味深い作品だ。

 オッテンザマーの指揮は屈託なく大きく作品の概要を捉え、札響弦楽器セクションから豊かな響きを引き出していたが、細部に対するこだわりがもっとあると、更なる作品の魅力を聴くことができたのではないか。



 ブリテンのチェロソロを弾いた上野通明は札響第659回定期演奏会(2024年2月25日)でエルガーチェロ協奏曲の素晴らしい演奏を披露。今日も明確な主張のある確信に満ちた解釈による演奏で聴衆を圧倒、今日の演奏会の白眉だった。各楽章ごとに多彩な表情があって、この作品のやや不可解なところを見事に解明してくれるが如き鮮やかな演奏だった。

 指揮は過不足ないサポートだったが、もう少し上野のように表情豊かなところがあっても良かったのではないか。単刀直入過ぎて音楽がやや一本調子になりがちだったのが惜しい。


 ドヴォルザークは珍しい第6番交響曲。ここではPMFアメリカとアカデミー生が加わっての、札響との合同演奏。かなりの人数が加わっての迫力のある14型編成。管楽器群などほとんどがゲストプレイヤーで、オリジナルの札響トーンではなく、どちらかというと臨時編成のやや粗っぽい響き。

 オッテンザマーは、若さみなぎる溌剌とした指揮ぶりで、スケール豊かな明るい演奏を聴かせ、聴衆を大いに沸かせた。作品の解釈云々よりは、交流を深めるための意義ある合同演奏会、という印象を受けた。

 交流演奏の趣旨であればこれで良いのだろうが、第1楽章のブラームスを想起させるモティーフや、第2楽章の哀愁を帯びた表情、第3楽章の特徴的な民族舞曲やフィナーレのダイナミックな表現など、充実した表現の楽章と単純明快過ぎて物足りない楽章とが混在し、やや戸惑いを感じさせた演奏だった。

 リハーサルの時間が充分ではなかったような演奏だったが、それにもかかわらず、全体をそつなくまとめ上げた能力はさすがと言うべきか。スケール感豊かな感性の持ち主のようなので、これからの将来に期待しよう。

(写真はPMF HPより転載)

2026/07/13

 PMFオーケストラ演奏会

2026年7月12日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮/ライアン・バンクロフト
ヴァイオリン/ヤメン・サーディ
管弦楽/PMFヨーロッパ、PMFオーケストラ


シベリウス:交響詩「タピオラ」作品112

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ(1947年版) 



指揮者バンクロフト

  冒頭にシベリウスの「交響詩タピオラ」。
 バンクロフトが、オーケストラを丁寧に細部まで配
 した表現でまとめ上げた好演だった。
  ただ、なかなかひつすじ縄ではいかない難しさがあ
 る作品のようで、これだ、という演奏になかなか出会
 わない。
  オーケストラに高い成熟度が求められる作品でもあ
 るようだが、結成後間もないオーケストラというハン
 ディにもかかわらず、大健闘した演奏だった。

ヤメン・サーディ
  ショスタコーヴィッチのソリストは、ヤメン・ 
 サーディ。
  冷静客観的な現代風のショスタコーヴィッチで、
 クニックの素晴らしさ、的確な音楽的表現は申し分な
 い。やや線は細いが、その繊細な響き、音色はホール
 全体によく通って聴こえてくる。
  ソリスティックなパワーと迫力よりは、より高い音楽性で作品を表現するタイプの演奏だ。第一楽章のノクターンの暗い内面的表現や終楽章の華やかな外面的表現など、よく考えられた演奏。
 オーケストラはクリアな演奏をするソリストに対して、リハーサル不足なのか、輪郭がぼやけてやや曖昧な箇所があったにせよ、よくまとめ上げた演奏だったと言える。

「ペトルーシュカ」は、前半でソロを弾いたサーディがコンサートマスターで登場しタフさを見せ、かつ前半ではアカデミー生だけだった各パートにウィーン・フィルの弦楽奏者とベルリン・フィルの管楽奏者が加わり、今だけしか聴けない贅沢な編成での演奏。
 作品の編成の大きさがあるにせよ、オーケストラの響きに華やかさが加わり、これはとても聞き応えのあるいい演奏となった。要所要所のソロはほとんど教授陣が担当し、もちろんこれは万全の演奏。
 全体的にはバンクロフトのまとめ方がやや大雑把なところがあったようにも感じたが、短期間のリハーサルにもかかわらず、ここまで仕上げたのは素晴らしいといえよう。

2026/07/11

 PMFベルリン演奏会


2026年7月10日19:00札幌コンサートホールKitara大ホール


PMFベルリン(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団メンバー) 
ステファン・ラグナー・ホスクルドソン(フルート)
ジョナサン・ケリー(オーボエ)
アレクサンダー・バーダー(クラリネット)
シュテファン・シュヴァイゲルト(ファゴット)
サラ・ウィリス(ホルン)
タマーシュ・ヴェレンツェイ(トランペット)
イェスパー・ブスク・ソレンセン(トロンボーン)
フランツ・シンドルベック(パーカッション)

PMFピアニスト
佐久間晃子(ピアノ)


◆P. ミュラー:木管五重奏曲 第2番 ハ短調 


◆リスト(ドクシツェル編):コンソレーション(慰め) 第3番 変ニ長調 

              S. 172
[トランペット、ピアノ]


◆メンデルスゾーン(シェーファー編)
真夏の夜の夢 作品61
[木管五重奏]


◆シューマン(ソレンセン編):歌曲集「詩人の恋」作品48から
美しい五月に/ばらに、百合に、鳩に、太陽/心を潜めよう
君の瞳に見入る時/恨みはしない/恋人の歌を聞くとき

[トロンボーン、ピアノ]


◆T. ブルーメル
木管五重奏曲 作品52


 前日のPMFウィーンが弦楽アンサンブルだったのに対して、今日は管楽器アンサンブル。メンバーは例年多少の入れ替わりがあるようだが、飛び切りの名手たちなので、どの曲目でも申し分ない仕上がりだ。

 管楽器PMF教授陣ではウィーン・フィルのかつてのホルンの名手、ギュンター・へーグナーが旧札幌市民会館でローカリティ豊かな、ふわっとした柔らかい雰囲気の音色で魅了させてくれたことを思い出すが、一方で今日のベルリン・フィルのメンバーは、張りのある力強い音色と乱れのないアンサンブルが特徴で、確固とした妥協のない、現代風、都会風の音楽性が特徴だ。

 奏者もこれぞベルリン・フィルというよりは、インターナショナルなトッププレイヤーの最強集団という印象だ。


 冒頭に演奏されたミューラーと最後に演奏されたブルーメルの木管五重奏はそれを物語る好例。ともかく全員が疲れを知らずによく吹ける奏者ばかりで、もちろんアンサンブルの乱れも、ミスもない。楽章ごとの性格づけもほぼ問題なく、圧倒的な演奏だ。

 これらの木管五重奏は各楽器の個性をうまく発揮した名作であることは確かだが、作品の面白さとしては、編曲版とはいえ、やはりメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」が一番。楽想のオリジナリティ豊かな発想とか、アンサンブルのまとまった響きなど、今日の作品の中ではやはり聞き応えがあった。


 その他に、ピアノ伴奏でトランペットソロでリストの「コンソレーション」とトロンボーンソロでシューマンの「詩人の恋」。

 トランペットソロは作品が短く、本領発揮の前に終わってしまったのが残念。トロンボーンソロは2023年と同じプログラムでの演奏だったにせよ、初めて聴く聴衆も多く、前回同様、弱音主体の無言歌風名演で聴衆を魅了した。

 アンコールが2曲、最後に出演者全員とアカデミー生、パーカッションが加わり、華やかにシング・シング・シングを。

 

 

2026/07/10

 PMFウィーン演奏会


2026年7月9日19:00 札幌コンサートホールKitara大ホール


PMFウィーン(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団メンバー)
ヤメン・サーディ(ヴァイオリン)
ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン)
バルナバ・ポプラフスキ(ヴィオラ)
ペーテル・ソモダリ(チェロ)
ミヒャエル・ブラーデラー(コントラバス)

PMFオーケストラ・メンバー


◆J. シュトラウス I:ケッテンブリュッケ・ワルツ 作品4

ヤメン・サーディ(ヴァイオリン I)
ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン II)
バルナバ・ポプラフスキ(ヴィオラ)
ミヒャエル・ブラーデラー(コントラバス)


◆クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース 作品6
◆リヤード・アッ=スンバティ(サーディ編):
序奏とロンガ

                    (「ロンガ・リヤード」より)

ヤメン・サーディ(ヴァイオリン)


◆ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 作品10


◆メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20

ヤメン・サーディ(ヴァイオリン I)
ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン II)
バルナバ・ポプラフスキ(ヴィオラ I)
ペーテル・ソモダリ(チェロ I)

ハンナ・キム(ヴァイオリン III)

ティン・ウット・チェン(ヴァイオリン IV)

ダナ・リー(ヴィオラ II)

マシュー・ウィースト(チェロ II)



 注目はやはり初登場のヤメン・サーディだろう。前半は彼を紹介するためのプログラムで、先日のオープニングナイトでも演奏した「ケッテンブリュッケ・ワルツ」から始まり、クライスラーと珍しいエジプトの作曲家、リヤード・アッ=スンバティ(サーディ編)の小品を2曲。いずれも短いアンコールピースだが、まずは簡単な自己紹介といったところか。

 もちろんテクニックは素晴らしいが、音楽が柔軟で聴き疲れがしない。経歴を見るとイスラエル生まれで、早くからインターナショナルな教育を受けていたようで、ウィーン風の洒落っ気あるセンスの良い演奏で、生粋のウィーン人だ、と言われても誰も疑わないのではないか。


 ドビュッシーでは、リーダー役を遺憾なく発揮、的確なアンサンブルによる躍動的な演奏。常設のカルテットのように求心的で、ある一つの目標に向かって突き進む、というよりは上質の優れたアンサンブルを作り上げ、バランスなどの均整感の美を目指し、冷静客観的な解釈を聴かせることが主眼のように思えた。

 常にサーディがリーダーとなりまとめ上げていくが、全体のまとまりある響きはさすが世界のトップオーケストラメンバーだけあって、ハーモニー、バランスなどは申し分ない。また後半の二つの楽章に入ると、ドビュッシーの持つ独特の色彩感などが、張りがあるが、決してひび割れない美しい力強い音色で表現され、これはとても説得力ある見事な演奏だった。


 後半のメンデルスゾーンは、PMFオーケストラメンバーも加わっての八重奏曲。作品自体の特徴でもあるのだろうが、ファースト・ヴァイオリンのサーディが大活躍する作品。ここではPMF生も大健闘、とてもよく弾けており、メンデルスゾーン特有の、疾走する饒舌で華やかな楽想が、鮮やかに表現されスケール感あるダイナミックな演奏で楽しませてくれた。


 サーディはエネルギッシュで、どうだ、私の演奏を気に入ってくれたか、とでも言いそうな自信に満ちた雰囲気がある。才能ある若手に講師陣が若返ることはPMF学生にも聴衆にも活力を与えてくれ、これからのPMFが大いに楽しみになりそうだ。

2026/07/08


 PMF オープニングナイト

2026年7月7日18:30 札幌コンサートホールKitara(大ホール)


指揮:ライアン・バンクロフト
PMFヨーロッパ(PMFウィーン/PMFベルリン)
PMFオーケストラ



◆バーンスタイン:「キャンディード」序曲
ライアン・バンクロフト(指揮)
PMFベルリン
PMFオーケストラ

◆J. シュトラウス I:ケッテンブリュッケ・ワルツ 作品4

PMFウィーン
ヤメン・サーディ(ヴァイオリン I)

ダニエル・フロシャウア―(ヴァイオリン II)

バルナバ・ポプラフスキ(ヴィオラ)
ミヒャエル・ブラーデラー(コントラバス)


◆ルイス・プリマ(J. ディヴィス編):シング・シング・シング


PMFベルリン
ステファン・ラグナー・ホスクルドソン(フルート)
アレクサンダー・バーダー(クラリネット)
サラ・ウィリス(ホルン)
フランツ・シンドルベック(パーカッション)

◆バーンスタイン:『ウエストサイド・ストーリー』から

             「シンフォニック・ダンス」
ライアン・バンクロフト(指揮)
PMFウィーン

PMFオーケストラ




 今年もPMFが開幕、今年の客演指揮者はライアン・バンクロフト。昨年、NHK交響楽団を指揮していたようだが、札幌は初登場。まだ30代のようで、指揮ぶりは若々しい。毎年恒例となったPMF開幕を告げる「キャンディード」序曲は引き締まった若々しい華やかな演奏で、これからが楽しみな指揮者だ。

 続いて弦楽器だけで、逝去したPMF関係者への追悼演奏で、バッハの「G線上のアリア」。オーケストラはさすがにまだ未完成の域を出ないが、ところがバンクロフトの丁寧で細部まで気配りされた指揮で、曲が進むにつれ、次第にピッチと音色が整い始め、細かいアーティキュレーションなど音楽的な完成度が高まって最後はまとまりある演奏となった。



 一方、今年の目玉は初登場のヤメン・サーディ。J. シュトラウス 一世の「ケッテンブリュッケ・ワルツ 」で見事なソロを披露し、期待通りの抜群のセンスの演奏家。さすが25歳の若さでウィーン・フィルのコンサートマスターに就任した逸材。12日のPMFオーケストラで共演するショスタコービッチがとても楽しみだ。


 PMFベルリンではベルリン・フィルメンバーにPMFアカデミー生が加わっての「シング・シング・シング」を楽しげに演奏。


 最後は「シンフォニック・ダンス」の鮮やかな演奏で閉幕。バンクロフトのダイナミックな指揮ぶりは見事だが、むしろ随所で見せた繊細で透明な表情がとても印象的。今後、バンクロフトがダイナミックさと繊細さをどのようにバランスを取りながらこのオーケストラを誘導していくのかが注目点か。

 年配者にとってはバーンスタインは同時代の作曲家で、何度も繰り返し聴いてきた作品。今日の演奏はひときわ華麗でスケール感豊かな演奏だったが、彼らの、ノリのいい、しかし客観的な演奏を聴いていると、若手演奏家にとってはもはやクラシックなカテゴリーに入る作品なのだろう、という印象を強く受けた。

(写真はPMFHPより転載)

2025/07/28

 PMF GALAコンサート

2025年7月27日15:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


【第1部】
ファニー・クソー(第25代札幌コンサートホール専属オルガニスト)
パシフィック・クインテット
 アリーア・ヴォドヴォゾーヴァ(フルート)
 フェルナンド・ホセ・マルティネス・サヴァラ(オーボエ)
 リアナ・レスマン(クラリネット)
 長谷川花(ファゴット)
 ヘリ・ユー(ホルン)
 
【第2部】
指揮/マレク・ヤノフスキ
チェロ/スティーヴン・イッサーリス*
PMFアメリカ
PMFオーケストラ


【第1部】
【ファニー・クソー】
◆R. シュトラウス(F. クソー編):ツァラトゥストラはかく語りき 作品30
◆ワーグナー/リスト:歌劇「タンホイザー」から巡礼の合唱

【パシフィック・クィンテット】
◆バーンスタイン (D. スチュワート編):「キャンディード」序曲
◆モーツァルト (メイヤー編):アンダンテ ホ長調 K. 616
◆クルーグハルト:木管五重奏曲 作品79 

◆サリー・ビーミッシュ:ネーミング・オブ・バード
◆ラヴェル(M. ジョーンズ編):クープランの墓

【第2部】
◆ワーグナー:歌劇『ローエングリン』第1幕への前奏曲
◆シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 作品129*
◆シューマン:交響曲 第3番 変ホ長調 作品97「ライン」
◆R. シュトラウス:交響詩「死と変容」作品24



 まず第2部から。ヤノフスキーは今年86歳、PMF登場の最高年齢指揮者かもしれない。ただし、年齢を感じさせない見事な統率力と落ち着いた音楽づくりはさすがベテラン指揮者で、貫禄充分。 

 冒頭のワーグナーは16型を基本とする大編成で、今回は舞台下手側からヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの配列。ヴァイオリンが主役で、様々な音型を奏でながら音楽が進むが、それがどうもざわついているようで、何をどのように表現したいのかが、よくわからない。そのうち落ち着くだろう、と思っているうちに終了してしまった、というのが正直な印象。やや不消化の状態で、残念。


 シューマンのソリストはスティーヴン・イッサーリス。2005年に札響定期でエルガーの協奏曲を演奏している。おそらくそれ以来の来札か。個人的には10年ほど前にブダペストで室内楽のメンバーとして熱演していたのを偶然聴いた。いいチェリストだ。

 トレードマークの長髪を振り乱し、情熱的でエネルギッシュな演奏のシューマン。作品は決してスマートではないが、奥に潜むシューマンならではの熱い情念が見事に表出された名演だった。響きが翳るところもあったが、演奏の際に使用したチェロ台のためか。ここのホールはチェロ台を使わない方がよく響くような気がする。オーケストラはヤノフスキーがよくまとめ上げ好演。

 

 後半のシューマンの交響曲はよく練られた演奏でさすがヤノフスキー。弦楽器セクションがPMFならではの大人数でこんなに大きな編成でこの交響曲を聴いたのは初めてだ。ただし冒頭のワーグナーでのざわついた響きはなく、ここでは大編成ならではのゆとりのある深く居心地のいい弦楽器の響きを創出していた。

 しかもその響きは明るい音色というよりは最近あまり聴く機会が少なくなった、どちらかと言うと渋めの音色。PMFオーケストラではあまり聴けないベテランオーケストラ風の重厚感があり、中々いい音だった。

 ホルンを中心とした管楽器群もバランスの取れた力みのない音を出しており、弦楽器の大群とよく調和。

 全体的にはヤノフスキーが大編成オーケストラを見事に統率、バランス感覚に優れた中庸な解釈でいいシューマンを聴かせてくれた。


 後半さらにもう一曲、R. シュトラウス。これまではPMFアカデミー生だけによるオーケストラだったが、ここからはコンサートマスターにヌリット・バー・ジョセフが座るなど、要所要所にPMFアメリカ教授陣が加わった豪華布陣。さすがに良質な響きと卓越したソロなどが聴こえてくる。オーケストラのトッププレイヤーが数人加わるだけで、こんなに響きが変わる体験ができるのはPMFならでは。

 フィナーレに相応しい豪華絢爛な大編成だが、ヤノフスキーが暴走しがちな若々しいエネルギーを見事にコントロール。派手過ぎず、地味にもならず、音楽的に見事にまとめ上げた、スケールの大きい演奏を披露。味わい深い職人的指揮で、R. シュトラウスの豊穣な響きをホールいっぱいに響かせ、聴衆を楽しませてくれた。


 ガラコンサート前半は札幌コンサートホール専属オルガニストのファニー・クソーの演奏とPMF参加を機会に編成されたパシフィック・クインテットの演奏があった。

 オルガンソロはやや軽めのプログラムで、Kitaraのオルガンの持つ優れた機能が充分発揮されておらず、ちょっと残念。せっかくの機会なのでもっと重厚な作品が聞きたかった。

 パシフィック・クインテットは若々しくエネルギッシュな演奏。ただ、最後はちょっとお疲れ気味だったようだ。聞き手としては後半の第2部も考えて、もう少し短いプログラムで、中身をもっと濃い演奏にした方が良かったような気がする。


 今回のガラ・コンサートは15:00開演で、2回の休憩挟み、終演は19:00。第1部、第2部共に少々長めで、プログラミングにもう少し工夫が欲しかった。