2025/04/23

 札幌交響楽団 第668回定期演奏会

~エリアス・グランディ首席指揮者就任記念

 2025年4月20日13:00  札幌コンサートホール Kitara大ホール


指揮 /エリアス・グランディ<札響首席指揮者 2025/4~>

ソプラノ /マリ・エリクスモーエン

メゾソプラノ /カトリオーナ・モリソン

合唱 /札響合唱団、新アカデミー合唱団

管弦楽/札幌交響楽団


マーラー:交響曲第2番「復活」



 グランディの首席指揮者就任記念演奏会。全体的には、とても好印象で、これだけ編成が大きいと、最近は打楽器や金管楽器を思い切り鳴らして大音響の空間を作り出す指揮者が多いようだが、グランディは大騒ぎをせず、全体のバランスをよく調整しつつ、過不足なくスケール感を表現しており、いいセンスを持ち合わせている。

 今回はステージ上での山台を程よい高さでまとめており、前回665回定期公演のように、角度の急な階段上の山台配置で響きがまとめきれなかった不具合が今回なかったのはとてもいい。是非この形を継続して行ってほしい。


 オーケストラの配置は、前回の665回定期のマーラーとほぼ同じ。演奏は、声楽が入った第4楽章に入ると、途端に音楽に緊張感が増し引き締まった感じが出てきて、それまでの作品の長さを忘れさせた。

 アルトソロを歌ったエリクスモーエンが素晴らしかった。とても豊かでゆとりのある深い声量で、オーケストラの中から(歌っていたポジションはオーケストラの中で、第一ヴァイオリンのやや後ろより)湧き出てくるような歌で、ポジションを選んだグランディにも拍手。

 時間にするとわずか5分程度、スコアで6ページほどの長さにもかかわらず、なんと濃密な時間を感じさせる楽章なのか。グランディも微に入り細に入り絶妙にオーケストラをコントロール、繊細に美しくまとめ上げ、これは見事だった。この楽章があっての第2番だ、と強く認識させてくれた。


 第5楽章の冒頭、オーケストラのプロローグの強奏箇所でおもむろに合唱団が入場、これは気の利いた演出だ。この導入部分含め、この前後はやや雑然とした音楽だが、音量と全体の響きをバランスよくまとめ上げていた。それよりも次に続くティンパニー、ホルン、オーボエなどが弱音で静かで瞑想的な部分が実に丁寧に表現されていて、抜群の効果をあげていた。静と動の対比から言えば、今日は静の箇所の表情が素晴らしかった。また随所で登場する舞台裏の影オーケストラ群がこの楽章では実に的確にかつよく整えられた演奏だった。

 ソプラノソロを歌ったモリソンはP席最前列で歌い、位置の関係で声が当然エリクスモーレンよりはやや遠い感覚があったが、表現力があり、彼女らの2重唱はなかなか聞き応えがあった。合唱も好演。

 この楽章自体ややつかみどころのない、ごちゃ混ぜのようなところがあるが、それにもかかわらず、颯爽と音楽を進めてまとめあげており、これはグランディの優れた手腕の成果だろう。

 

 それまでの楽章では第1楽章の冒頭や、第2楽章の緩徐楽章のすっきりとした表情、第3楽章の多彩さなど素敵なところは数多くあった。しかし、第4、第5楽章の演奏の集中力と比べると、やや物足りなさと冗長さを感じさせるところもあったが、それはこの作品自体の持つ個性なのかもしれない。


 これだけの大曲、札響では定期含め今回が5回目とのことで、やはりそんなに演奏回数は多くない。しかし、演奏レベルは総じて高く、どこにも無理はなく、特に要となるトランペットやホルンなどの管楽器群がソロを含め、とても音楽的で良かったのが印象的。ごく普通にマーラーの大曲が今日のように聴けるようになったのはうれしい。

コンサートマスターは会田莉凡。