札幌交響楽団第665回定期演奏会
2024年12月1日13:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/エリアス・グランディ
ヴィオラ/ニルス・メンケマイヤー
札幌交響楽団
ヒンデミット:白鳥を焼く男
マーラー:交響曲第1番「巨人」
来年から首席指揮者に就任予定のエリアス・グランディが登場。プレトークがあり、首席指揮者の抱負の一つとして優れた世界のソリストも紹介したい、とのこと。今回はその第一弾として、ヴィオラのニルス・メンケマイヤーが登場。
このヒンデミットは札響初演。いかめしいタイトルだが、同名の民謡を題材にしたヴィオラコンチェルト。ソロパートはかなり技巧的で、ヴィオラより高音のヴァイオリンは登場させないなど、常にヴィオラに焦点が当たるようにと、編成に工夫がある作曲技法。ただやはり響きは地味で、余程の名手でなければ聴衆にこの作品の魅力をしっかり伝えることができないだろう。
メンケマイヤーは、両端楽章での力強く逞しい表情、第2楽章での繊細な表情など、安定したテクニックによる表現で、申し分ない仕上がり。
チェロセクションが第1ヴィオリンの席に座っており、首席の石川がコンサートマスター席。視覚的にも興味深い演奏形態だった。
ソリストアンコールにバッハの無伴奏チェロ組曲第1番からアルマンド。これはすっきりとした古楽器風の演奏で、余分なヴィブラートを省いて贅肉を削ぎ落とした美しい素敵な演奏で、この奏者の多面性を示してくれた名演だった。
前半の比較的シンプルな編成と違って後半のマーラーは16型のフル編成で、しかも対向配置。下手から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンと並び、コントラバスは下手奥、ホルンが上手、といつもの位置とは正反対。かつ山台を使用して、かなり段差をつけての配置で、これも最近の札響では珍しい。
グランディは細部をきちんと仕上げ、それを積み重ねてまとめ上げる、という今まで聴いてきた手法のとおりだ。細部の色々な部分は卓越した仕上がりで、オペラも振れる指揮者ならではの繊細さと表現の多様性、フレッシュな感性など、今までの首席指揮者にはない多くの魅力がある。
ただし、今日はいつもと違う配置と大編成のためか、また聴く方もこの響きに不慣れだったにせよ、オーケストラ自体もこの配置に対処する万全の体制が取れていなかったようだ。
このオーケストラであればもっと緻密に仕上げることができるはずだ、と思われる箇所がいくつかあったのは惜しい。
とはいえ、楽章が進むにつれ、次第にまとまりのある豊かな響きとなり、フィナーレの第4楽章はスケールの大きい見事な演奏。
今後、グランディの色々な考え方が浸透すると、オーケストラの実力が更にアップするのではないか。
来年度のグランディのプログラムを見るとマーラー、ベートーヴェン、リヒャルト・シュトラウスなどがプログラミングされていて、楽しみだ。大いに期待しよう。
コンサートマスターは田島高宏。
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