2026/03/11


 びわ湖ホール プロデュースオペラ 

トゥーランドット


2026年3月8日 14:00 びわ湖ホール大ホール


指揮:阪 哲朗(びわ湖ホール芸術監督) 

演出:粟國 淳


振付:伊藤範子


装置:横田あつみ

照明:原中治美

衣裳:増田恵美

音響:小野隆浩(びわ湖ホール)


合唱指揮:大川修司

舞台監督:山田ゆか


合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル他

管弦楽:京都市交響楽団


トゥーランドット:並河寿美

皇帝アルトゥム:林誠

ティムール:西田昂平

カラフ:福井 敬

リュー:船越亜弥

ピン:迎 肇聡

パン:福西 仁

ポン:奥本凱哉

役人市川敏雅



 2日目公演を観る。とてもいい公演だった。舞台が美しく、ブルーを主体としたクラシックなスタイルを基本とし、そこにモダンなスタイル〜例えば冒頭両サイドに大きなパネルがあり、そこに今まで犠牲になった求婚者達を象徴する髑髏が投影される〜などがプロジェクションマッピング等で投影されるなど、音楽の進行に合わせて映像と色彩が変化してわかりやすい。

 トゥーランドットの登場シーンは、煌めく照明と古風な衣装で威厳あるシーンを創出し、支配者階級と民衆との違いを明確にするなど、細かい配慮があって観衆に親切、しっかりとした様式観があり、かつステージ全体を美しく見せるコツをつかまえた良質の演出だ。粟国らしい彼の特質が発揮された名演出と言ってもいいだろう。


 最後、プッチーニが病で作曲の筆を折ったリューの死までで一旦舞台が閉じ、補作以降が場面転換され、照明で美しく演出されたシンプルな舞台となり、愛に目覚めたトゥーランドットとカラフのラブシーンが展開される。

 全く別の作品が上演されているようで、これはなかなか気の利いた演出。プッチーニとの音楽的な落差を舞台で補っており、意外と気にならずに鑑賞できたのは、この視覚的効果によるもの。


 歌手陣は、福井のカラフはやや絶叫調ではあったが、期待通りの名演。トゥーランドットの並河、リューの越ともに申し分ない。ピン、パン、ポンの3人組が存在感があり、大活躍。さらに、全体を通じ合唱団が歯切れよくパワーもあり中々の好演。日本人スタッフによるほぼベストの公演だったと言えよう。

 

 全体を隙なくまとめ上げた阪の指揮がとても充実していて聞き応えがあった。表現の多彩さは実に見事。切れ味が鋭く、躊躇なく思い切ってオーケストラを鳴らし、歌手陣をしっかりサポートというよりは完璧にリードし、手中におさめた名演だったといえよう。

 特に拍手で音楽が中断されないようにアクティヴに舞台を進め、「誰も拍手をしてはならない」という雰囲気を作り上げていたのも良かった。


 阪の指揮によるトゥーランドットは2020年10月に山形県総合文化芸術館オープニング事業として山形のやまぎん県民ホールでの公演を、びわ湖ホールでは2019年7月に東京五輪公認プログラムとして大野和士の指揮でびわ湖ホール、新国立劇場、東京文化会館、札幌文化芸術劇場の提携オペラ公演を観て以来で、いずれの公演も強く印象に残る内容。


 山形での阪の指揮も良かったが(この時もカラフは福井だった)、今回は本拠地でいつもの京都市交響楽団ということもあって、さらに磨き抜かれた高水準の公演だったと言えよう。

 


 札幌交響楽団 第675回定期演奏会

 2026年3月 7日17:00  札幌コンサートホール Kitara大ホール


指揮/尾高 忠明<札響名誉音楽監督>

ピアノ /鈴木愛美<第12回 浜松国際ピアノコンクール 第1位>


シューマンピアノ協奏曲

エルガー 交響曲 第2番




 シューマンを弾いた鈴木愛美は枠にはまらない伸びやかな感性の持ち主。楽想に応じた程よいテンポの揺れがあり、音色はきれいで歌い方が自然。

 思い切りの良さもありシューマンらしい自由で飛躍するようなロマン性を強く感じさせ、個性的でいいピアニストだ。

 尾高はピアニストの自由な感性を大切に暖かく見守るがごとくソリストに合わせ、オーケストラを品良く歌わせ、柔らかい響きで全体をまとめあげた上質の仕上がり。とてもいいシューマンだった。

 ソリスト・アンコールのシューベルトの即興曲はやや硬さを感じさせたものの、なかなかの好演。これからの活躍が大いに楽しみだ。


 エルガーの交響曲第2番、前回尾高が振る予定だったのは第659回定期演奏会(2024年2月25日13:00 )のオールエルガープログラム。このときは体調不良で降板、今回やっと公演が実現した。

 この大曲をライヴで聴いてみると、作風は難解ではないが多様なモティーフが次々と、時には何度も登場し、やや入り組んでいて簡単には理解しにくい。エルガーを熟知していないとまとめずらい作品のようだ。

 尾高は、長年のエルガー演奏歴とベテランらしい経験豊富な指揮ぶりで、なかなか説得力のある演奏。冒頭こそやや不安な立ち上がりだったが、次第に落ち着きを取り戻し、尾高からしか聴けない充実した自信に満ちた柔らかい響きが聴こえてきた。かなり技術的にも高い演奏機能が要求される作品だが、オーケストラの機能は申し分なく、安定した管楽器群と、指揮と作品に対する機敏な反応はとても冴えており、この作品の魅力を充分伝えてくれた素晴らしい演奏だった。

 今回が札響2度目の演奏で、前回は2002年3月にやはり尾高の指揮で。残念ながら前回の演奏は聴いていないが、25年ほどの年月が過ぎ、オーケストラは別人のように演奏能力が向上しており、仕上がりは今回の方が群を抜いて良かったと思われる。全国的にも演奏回数が少ないのは、オーケストラに対する音楽的要求度の高さにあるようで、その点でも今日は貴重な機会だったともいえよう。

 コンサートマスターは会田莉凡。