Kitaraのクリスマス
2021年12月25日15:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/原田 慶太楼 サクソフォン/上野 耕平 管弦楽/札幌交響楽団
ガーシュウィン:「ガール・クレイジー」序曲
パリのアメリカ人
プロコフィエフ:交響組曲「キージェ中尉」作品60より Ⅳ.トロイカ
カプースチン:アルト・サクソフォンと管弦楽のための協奏曲 作品50 [日本初演]
バーンスタイン/メイソン編曲:「ウェスト・サイド・ストーリー」
セレクション
R.ロペス、K.A.=ロペス/クログスタッド編曲:「アナと雪の女王」
より
アンダーソン:クリスマス・フェスティバル
チャイコフスキー/エリントン編曲:組曲「くるみ割り人形」
(特別版)
昨年は工事休館中のため2年ぶりの Kitaraのクリスマス。場内は盛況で約8割の来場者。指揮の原田慶太楼は三十代半ばの若手で、元気いっぱいだ。体全体でリズムをとりながらエネルギッシュに音楽を進める。エンターティメント的な要素を持ち合わせながらも、オーソドックスで、ポイントをしっかりつかまえた、きちんとした音楽造りをする指揮者だ。
アルト・サクソフォンの上野耕平を迎えてのカプースチンが素晴らしかった。ソロは淀みなく、クラシカルな部分はもちろんのこと、ジャズセクションの表現も見事で、優れたリズム感と柔軟なテクニックを存分に発揮した、多彩で品の良い演奏を聴かせてくれた。作品は個性的で面白く、飽きさせないのはやはりこの作曲家のすごいところだ。日本初演ということで、これ以上ないベストの出来。この演奏だけマイクで音を増幅して場内に流していたが、もう少し抑えた方が、生音の素晴らしさを堪能できたように思う。
ガーシュインは二曲ともきれいに整って落ち着いた演奏。「パリのアメリカ人」ではゲストソリストの上野耕平がオーケストラの一員として登壇していた。素晴らしいエネルギーだ。
プロコフィエフの「トロイカ」はわずか3分ほどの作品だが、今日のプログラムでは唯一の本格的クラシック。オーケストラから今日最も充実したサウンドが出ていて、特に弦楽器の響きが良かった。やはりこの優れた作曲技法はプロコフィエフならではだ。
後半のプログラムでは、アンダーソンの「クリスマスフェスティバル」がシンフォニックで立派な演奏。毎回必ず演奏される定番メニューだが、これだけ輪郭のしっかりしたきちんとした演奏は初めてだ。
最後の「くるみ割り人形」はエリントンの編曲版にオリジナルのチャイコフスキー版を加え、特別版と称した組曲。オリジナルは「トレパーク」と「中国の踊り」だけ。あとは完全にジャズ用の編曲で、サックス、トランペット、トロンボーンのソロあり、アンサンブルありで、ビッグバンドの贅沢なオーケストラ仕様版。これは面白く、楽しかった。オリジナルのイメージを残しながら、念入りに編曲された版のようで、いいサウンドが出ていた。ソリストに照明があたり、これは良かった。Kitaraでは珍しい仕込みだ。
当然のことながら、全体を通じて金管セクションが大活躍。ピッチはいつもきれいで、大きな音でただ吹くだけ、ということもなく(これが意外と本州のプロオケではある)音楽的によくコントロールされた演奏だ。よくありがちなミスもほとんどない。終始安定しており、今日の管楽器群は素晴らしかった。贅沢なシンフォニック・ジャズを堪能したコンサートだった。
原田は全体のサウンドもうまくまとめており、長時間金管のサウンドを聴かされても疲れない。いい指揮者だ。シリアスなクラシックをどう振るのか聴いてみたいところだ。
他に「ウェストサイド・ストーリー」と「アナと雪の女王」より。これらも安定したいい演奏だった。