札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第13回
2023年4月11日19:00 札幌文化芸術劇場hitaru
指揮/大植英次
ピアノ/アンドレイ・ガヴリーロフ
糀場富美子:広島レクイエム
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
糀場は札響初演。作品の初演は1985年8月6日に本日の指揮者、大植(広島出身)によって「広島平和コンサート」で行われている。弦楽オーケストラにより演奏される。
冒頭、低弦で演奏されるテーマがパッサカリア風に、展開されて行く形式で書かれているので、構成感があり、かつ調性感もあるので理解しやすい。
大植は、これら作品の特質をわかりやすく、深い情感を込めて指揮、かつ会田の見事なソロもあって、実に聞き応えのあるいい演奏だった。札響の弦楽器の美しさが際立っていた。
原爆投下後の悲惨な情景と死者への追悼を込めた作品だが、ある程度冷静に描いているようだ。いつの時代にあっても戦争の悲惨さを訴えかけてくる普遍性を持った作品で、それを力強く伝えてくれた演奏でもあった。
ラフマニノフは、ピアノが一つのパートとして加わった交響曲のような演奏。大植の指揮が、アクティヴで、先へ先へと進んで行く。オーケストラがよく響き、歌い、ロマンティックな表現にも事欠かず、ホルンの素敵なソロがあるなど、こんなに雄弁な表情のこの作品は初めて。
ピアノはオーケストラの響きに埋没していて、ディテールがよく聴き取れなかったが、正確に弾けていないところもあり、大植がそれをカバーしていたのかもしれない。
ガヴリーロフはもう40年近くも前だろうか、名ピアニスト、リヒテルと共にヘンデルの組曲を演奏した映像と録音があり、その印象が強く残っているが、今日のラフマニノフを聴く限りは、当時とは全く別のピアニストになってしまったようだ。
ショスタコーヴィチは充実した、いい演奏だった。今日は、オーケストラがよく響いており、今までhitaruで聴いた札響のコンサートでもトップクラスではないだろうか。響きの良質さでは、尾高忠明のイギリス特集(「偉大なる英国の巨匠たち」、2022年6月18日)、豊かさでは今日の大植だろう。
作品成立の背景にある様々な政治的な要素などは、今日の演奏からはあまり感じられず、むしろ評価の定まった古典的な名作として仕上げられた演奏だったのではないか。
ショスタコーヴィチならではの緊張感のある表情やオーケストレーションが見事に再現されており、豊穣なオーケストラの響き、優れた弦楽器の響き、秀悦な管楽器群のソロなど、申し分ない。
特に後半の、第3楽章の静謐な響き、第4楽章での幅広いダイナミックな表現など、オーケストラを聴く醍醐味を充分味わえることができた演奏だった。
hitaruは今年で開館5年目だが、今日の演奏を聴くと、札幌コンサートホールKitaraとは違った、魅力ある濃密な響きが聴けるようになってきたようで、札響を聴く楽しみ方が一つ増えたようだ。
コンサートマスターは会田莉凡。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。