Kitaraのニューイヤー2023
2023年1月14日 15:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/鈴木 優人
箏/LEO
管弦楽/札幌交響楽団
ヨハン・シュトラウスII:喜歌劇「こうもり」序曲
ピツィカート・ポルカ(管楽器付き初版)
ポルカ「雷鳴と稲妻」作品324
藤倉 大:箏協奏曲(管弦楽版)
ヴィヴァルディ:「四季」より 春
ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調作品27より
第3楽章 アダージョ
ヨハン・シュトラウスII:ポルカ「春の声」作品410
ワルツ「美しく青きドナウ」作品314
鈴木優人は初めてのKitaraニューイヤー登場。彼の父君、鈴木雅明が2013年1月12日のKitaraニューイヤーを指揮しており、親子でKitaraの指揮台に登壇するのは、マズア父子(父クルト:フランス国立管弦楽団2004年4月22日 、息子ケン=デイヴィト:PMFオーケストラ2022年7月22日)以来2例目。
藤倉大の箏協奏曲が楽しめた。初演は2021年4月、コロナ禍のため無観客で今日と同じ指揮者とソリストで、読売日本交響楽団の演奏で行われている。
公式YouTube で全曲鑑賞でき、しかも他のサイトでは、公式かどうかは不明だが、スコア(管弦楽版)まで掲載されており、鑑賞の手引きとしては完璧だ。
基本的に、箏ソロパートは、増音程と減音程で性格づけられた幾つかのリズムパターンを、組み合わせを変えながらオスティナート風に繰り返され、所々で、自由で拍子感を感じさせないソロカデンツァが挿入される。オーケストラは和楽器を模倣した音色、響きを再現し、ソロと一体となって音楽を形成していく。
藤倉は和楽器のためのソロ作品を幾つも書いていて、和楽器の奏法とイメージ、音色については熟知しているようだ。この作品は、西欧のスタイルで作曲されてはいるが、根本には、やはり和のテイストが強く盛り込まれている。
作品は、映画に例えると、モノクロのシーンとカラーのシーンが交代で登場し、しかもカラーのシーンは時としてどぎつい原色だったり、美しい風景を描いた水彩画風だったり、と色彩豊かだ。
藤倉ならではのアクティブで、常に前向きで肯定的な姿勢が感じられる作風で、鑑賞後はある種の爽快感、満足感を与えてくれる彼ならではの特質を持った作品である。
箏のLEOは、札幌初登場。卓越したテクニック、特に「ゆりいろ」、「ちらし」などこの楽器独特の技法(スコアを見て,初めて知った)で表現される微妙な色合の音色が素晴らしく、また、繰り返し音型は無機質にならずに、楽器本来の響きの美しさ、芯のある力強さをいつも感じさせてくれた魅力的な演奏だった。
現代における箏の魅力、和楽器の存在の意味と限りない可能性を存分に伝えてくれ、ニューイヤーコンサートにふさわしい、しかもここでしか聴けない名演だった。
アンコールは鈴木優人のチェンバロと一緒に「新春によせて」というタイトルの数分の短い即興演奏。ここでは鈴木がLEOの即興を見事にサポートし、しかもチェンバロの機能を効果的に活用した素敵な演奏だった。
後半のラフマニノフが良かった。編成が12型だったにも関わらず、豊かな響きを導き出し、その中から管楽器群のきれいなソロがふわっと浮かび上がってきて、かつ過度にロマンティックになり過ぎず、この指揮者ならではの感性が光ったバランス感覚の良い演奏だった。
ヴィヴァルディの四季から「春」は、今日のコンサートマスター、会田莉凡がソロ。柔軟でこなれた、よく歌い込まれた演奏で、これは機会があれば、是非全曲が聴きたくなる抜群のセンスの良さを披露してくれた。
その他に定番メニューのJ.シュトラウス2世の作品が前半と後半で、全部で5曲。曲目が連続しないように、よく考えられた配置だ。取り立てて個性的ではないが、定番メニューを滞りなく上手にまとめ、作品の性格、魅力を過不足なくそのまま伝えてくれた好演。
アンコールにラデツキー行進曲。
ステージ上や、ロビーにはニューイヤーコンサートにふさわしい装飾が施され、多くの来場者で賑わい、いい雰囲気だった。
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