第24代札幌コンサートホール専属オルガニスト
ウィリアム・フィールディング
フェアウェルオルガンリサイタル
2024年8月17日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
オルガン/ウィリアム・フィールディング
(第24代札幌コンサートホール専属オルガニスト)
パーカッション/入川 奨(札幌交響楽団 首席ティンパニ・打楽器奏者)*
コシュロー:シャルル・ラケの主題によるボレロ*
デュリュフレ:「来たり給え、創造主なる聖霊よ」による
前奏曲、アダージョとコラール変奏曲 作品4
エベン:聖日曜日の音楽より 第3曲 モート・オスティナート
フランク:オルガンのための3つの小品より 幻想曲 イ長調
J.S.バッハ:われを憐れみたまえ、おお主なる神よ BWV721
ヴィエルヌ:オルガン交響曲 第3番 嬰へ短調 作品28
ティンパニーと共演する珍しいコシュローは元来は即興演奏を採譜した作品。今日の演奏はアンサンブルを大切にした慎重かつ落ち着きのあるもので、即興的要素よりは才気あふれるコシュローの音楽の魅力をクリアに表現した好演だった。
この作品は2019年のKitaraのバースデイで、フランスのオルガニスト、ティエリー・エスケシュがやはり入川との共演で札幌初演をしている。
エスケシュはやや芯をぼやかせて即興性を強調した演奏だったように記憶しているが、それとはまったく好対照の演奏で、これは楽しかった。
2曲目のデュリュフレはファンタジックで表情豊かで音楽的に実に美しくまとめ上げた演奏。落ち着いた雰囲気があって、まるで巨匠のような風格のある、後半のフランクと共にKitaraオルガンの美しい音色を堪能できた素敵な演奏だった。
札幌初演と思われるエベンは、冒頭の伴奏型オスティナートリズムが後半では作品を展開する中心的モティーフとなったり、最初の旋律が後半ではペダルで変奏されたりと、わかりやすい内容の作風で、それを流麗に即興的に演奏し紹介してくれた。
フランクはよく歌い込まれていて、前半のデュリュフレとともに、これほど音楽的に美しく演奏されたフランクはそうそう聴けるものではない。
バッハはメロディーと伴奏という単純な形式だが、伴奏型の中に豊かな多声部進行が隠されていて、どこか不気味で不思議な雰囲気を持つ作品。
演奏はほぼ完璧に各声部が表現されていてとても魅力的だったが、今日のプログラムでは静的な性格の作品が多かったので、動的な性格のバッハが聴きたかったところ。
最後のヴィエルネは同じオルガン交響曲を書いているヴィドールほどの派手さはないにしても、じっくりとオルガンの響きを味わうのに相応しい天才肌の名品であることを感じさせ、技術的にも音楽的にもよくまとまっていた見事な仕上がりの演奏だった。
今日のフィールディングは全体的にレガート中心の美しくよく歌い込まれた演奏。作品の魅力を繊細に音楽性豊かに表現し、Kitaraオルガンからこれほど美しい音色を引き出した演奏は久しぶりに聴いた。
ただ、聴衆としてはもっとここのホールの豊かな音響を生かしたダイナミックな性格を持つ作品を聴かせて欲しかったことと、同じような雰囲気の作品が続いたので、プログラム配列にもう少し工夫があればより楽しめたと思われる。