札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第10回
2022年8月4日19:00 札幌文化芸術劇場hitaru
指揮/下野竜也
ヴァイオリン/会田莉凡
管弦楽/札幌交響楽団
廣瀬 量平:北へ
ドヴォルジャーク:ヴァイオリン協奏曲
ブラームス:交響曲第1番
※札響首席指揮者マティアス・バーメルトは、来日に向けた検査で新型コロナウイルスの陽性判定となり、今回の来日を見送らざるをえなくなりました。代わって、下野竜也が出演いたします。何卒ご了承くださいますようお願いします。(主催者発表)
廣瀬量平の作品は51歳の、おそらく彼が最も脂の乗り切った頃の作品だろう。
しかも下野が緊張感と集中力のある指揮で、作品の価値をより高める素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
これは最近の札響の現代曲の演奏では抜きん出た見事な出来だったのではないか。
ドヴォルジャークのソロは会田莉凡。今年の4月に札響コンサートマスタに就任後、初のソリスト。素晴らしい演奏だった。
ピッチは高すぎず、きれい。比較的高いピッチで演奏するソリストが多い中、よくオーケストラと調和していて、とても聴きやすい。
叙情的に歌うところ、技巧的に華やかに聴かせるところが程よくバランスが取れており、いいリズム感の持ち主だ。特に第2楽章の叙情性、第3楽章の鋭い切込などは見事で、この作品の魅力を余すところなく伝えてくれた。
だが、素晴らしいのは、オーケストラとの一体感。これはゲストで訪れるソリストからは聴くことのできないものだ。指揮者、オーケストラと三位一体となった、理想的協奏曲の姿とでも言え、これはアンサンブル経験の豊かさとコンサートマスターならではの配慮だろう。今後の活躍が大いに楽しみだ。
ブラームスは速めのテンポで、大きくまとめ上げたスケールの大きな演奏。オーケストラの響きが柔らかく、しかも細部まできちんとコントロールされて充実しており、実に心地よい。これは下野の大きな功績だろう。
前半こそ管楽器セクションがテンポに乗り切れず、やや不調気味だったが、後半3楽章以降が素晴らしかった。第4楽章のチェロ・バスによる有名な主題はとてもいい音がしており、それ以降のフィナーレに向かっていくエネルギッシュな展開は推進力があって、見事。
下野はまだ50代前半、今日の演奏からは生き生きとした若々しさを感じさせ、指揮ぶりはダイナミックだ。バーメルトとはまた違う魅力、たくましさ、エネルギーが感じられ、暑さを吹き飛ばす爽快な演奏だった。
なお、下野は9月3日の名曲シリーズ(札幌コンサートホール、14:00)にも登場予定。
今日のプログラム解説は藤野竣介氏。久しぶりだが、彼ならではの個性的な内容で面白かった。
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