第25代札幌コンサートホール専属オルガニスト
ファニー・クソー デビューリサイタル
2024年10月12日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
オルガン/ファニー・クソー
(第25代札幌コンサートホール専属オルガニスト)
リスト:バッハの名による前奏曲とフーガ
レスピーギ:3つの小品 P.92より 第1番 前奏曲 ニ短調
J.S.バッハ:わが身を神に委ねたり BWV707
レスピーギ:3つの小品 P.92より 第3番 J.S.バッハのコラール
「わが身を神に委ねたり」による前奏曲 イ短調
J.S.バッハ: われは汝に希望を抱けり、主よ BWV640
レスピーギ:3つの小品 P.92より 第2番 J.S.バッハのコラール
「われは汝に希望を抱けり、主よ」による前奏曲 変ロ長調
J.S.バッハ:キリストはわれらに至福を与え BWV620
ラドゥレスク: 受難のための7つのコラールより 第3番
「キリストはわれらに至福を与え」
J.S.バッハ:われら苦しみの極みにあるとき BWV641
ラドゥレスク: 受難のための7つのコラールより 第7番
「われら苦しみの極みにあるとき」
J.S.バッハ:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582
フランス生まれのオルガニストで、リヨン国立高等音楽院修了。楽器を豊かに響すことができ、フォルテッシモからピアニッシモまでの幅広い伸びやかな表現力を持つオルガニストだ。
プログラムはバッハとバッハに強い影響を受けた作曲家を中心に組み立てたもの。
冒頭のリストは、力強い音色で全体をしっかりまとめ上げており、多少の曖昧さはあったにせよ良く弾き込まれていた安定した演奏だった。
続いてはバッハのコラールと、同じコラールを用いたレスピーギの作品を交互に演奏。珍しいレスピーギのオルガンソロ作品はおそらくKitara初演か。レスピーギとオルガンの関係は意外だったが、そういえば、有名なローマ三部作にオルガンパートがあったことを思い出した。取り立てて何か強いメッセージ性のある作品には思えなかったが、今日の演奏の中では「前奏曲イ短調」が個性的で面白かった。
後半はバッハのコラールと、同じコラールを用いたラドゥレスクの作品を交互に演奏。ラドゥレスクもKitara初演か。演奏者本人によるプログラム解説によると、昨年他界したルーマニアの作曲家・オルガニストで、シェーンベルク、メシアンらから影響を受けた作品を書いているとのこと。
作風はレスピーギより独創的でより現代的な響きがするが、聴きやすくわかりやすい内容の作品。オルガニストらしく楽器の音色を効果的に使っており、
なかなか魅力的だ。
前半と後半で繰り返し演奏されたバッハのコラールは、レジストレーションの組み合わせによるのだろうが、本来室内で静かにソロで歌われるメロディーを大劇場で大合唱で歌っているように聴こえてきて、多少の違和感があった。
歌に例えれば、細かい言葉のイントネーションが曖昧で、歌詞がよく聴き取れなかったような印象を受け、全体的にやや単調に聴こえてきたのが残念。
発声、響きはとてもよかったので、コラールごとに明確な性格描写があるとより楽しめたと思われる。
最後のパッサカリアはディテールがやや不鮮明で変奏ごとの性格づけが物足りなかったものの、強弱の対比が明快で、全体的にわかりやすい演奏だった。
アンコールにバッハのト短調の小フーガ。緊張感から解放されたのか、響きがすっきりと抜けてくるレジストレーションで、Kitaraオルガンの美しい音色を見事に聞かせてくれた。フーガのテーマの表情、ニュアンスも豊か。これはとてもいい演奏で、本プログラム中のコラールもこのように弾いて欲しかった。
今日のプログラムはバッハのコラールに焦点を当てた興味深い内容だったが、やや重複が多く、バッハからの影響、関連性を説明するのであればレスピーギもラドゥレスクも各1曲聴けば充分。
デビューリサイタルであれば、今日聴けなかったフランスの作品など、より多彩なレパートリーを披露して欲しかったが、スケール感豊かで明朗な性格の音楽を聴かせてくれるオルガニストなので、今後の活躍に期待しよう。
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