ロンドン交響楽団
2024年9月29日15:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/サー・アントニオ・パッパーノ
ピアノ/ユジャ・ワン
管弦楽/ロンドン交響楽団
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番
マーラー:交響曲第1番
ロンドン交響楽団は2年前に来札(2022年10月3日、指揮/サー・サイモン・ラトル)しており、そのときはシベリウスの交響詩が2曲とブルックナーの交響曲第7番 ホ長調 WAB107(B-G.コールス校訂版)を演奏している。
今回は首席指揮者に就任したばかりのパッパーノが率いての公演。このオーケストラの魅力は何と言っても柔らかくて上質で美しい響きだろう。それは弦楽器だけではなく管楽器でも発揮され、もちろんアンサンブルも整っていて、今日はどの箇所でもその心地よい柔らかい響きが聴かれ、あらためて洗練されたいいオーケストラだと実感させられた。
22年の札幌公演ではやや強引とも言えるラトルの指揮が時々調和を乱すことがあったが、今日のパッパーノは、よく歌う振幅の大きい解釈で、オーケストラを自然体で無理なく響かせ、このオーケストラの美点を過不足なく引き出していたと言えるだろう。
マーラーでは最終楽章で派手に盛り上げ、大音響で締めくくり、聴衆を沸かせていた。陽性で明るいマーラーで、第1楽章から第3楽章までは全体のバランスなどとてもよくコントロールされており、管楽器群の溌剌とした表情などとても魅力的ではあった。ディテールがやや甘いところもあり、重箱の隅を突けば事故が起こっていた箇所もあったのかもしれないが、生き生きとした若々しいマーラー像を描いており、好みはわかれるだろうが、魅力充分の演奏だった。
それにしても最近のマーラー演奏はオーケストラの技術的レベルが向上するに連れ次第に派手になってくるようで、ショーピース的な扱い方が増えてきているような気がするのは筆者だけだろうか。
ラフマニノフのソリストはユジャ・ワン。ちなみに彼女は、札幌文化芸術劇場hitaruに納品された数台のスタインウェイの選定者。同劇場開館時に、札幌デビューリサイタルを行っており、札幌は2回目。
演奏はラフマニノフならではの技巧的なパッセージやロマンティックなメロディの歌い方など、どの楽章、どのフレーズも過不足なく的確に表現され、手慣れたプロフェッショナルの仕事ぶりで、安定感は抜群だ。ただ、今日は体調不良だったようで、いつもの体全体から溢れるような伸びやかさのある表情がなかったのは残念。珍しくアンコールは全く弾かず、ステージマナーもぎこちなく笑顔もなし、彼女のKitara初登場を楽しみに来場したファンは少々期待外れだったのではないか。
オーケストラは随所で柔らかく美しい響きを聴かせ、すっきりとした洗練されたラフマニノフで、これはとても素敵だった。
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