第26代札幌コンサートホール専属オルガニスト
赤枝 サンテソン 留果 デビューリサイタル
2025年10月11日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
オルガン/赤枝 サンテソン 留果 Luca Akaeda Santesson
(第26代札幌コンサートホール専属オルガニスト)
J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ニ長調 BWV532
さまざまな手法による18のライプツィヒ・コラール集より
バビロンの流れのほとりで BWV653
メンデルスゾーン:オルガン・ソナタ 第3番 イ長調 作品65-3
レーガー:序奏とパッサカリア ニ短調 Wo0 4-6
グリニー:来たり給え、創造主なる聖霊よ
アラン:組曲 AWV86
デュプレ:サンフォニー・パッション 作品23より 第4楽章「復活」
2001年生まれの24歳。 Kitaraオルガンから柔らかくすっきりと抜けてくる美しい音色と、バランスの良い力強い響きを引き出すことができるいいオルガニストだ。日本最高峰のオルガンからこのような充実した響きを聴いたのは久しぶり。
全体的によく考えられたプログラムで、前半にドイツ、後半にフランスの作品を歴史順に演奏し、約300年のオルガン名曲を概観する形で紹介してくれた。
今日聴いた限りでは後半のフランス作品が良かったが、前半はデビューリサイタルということでかなり硬くなっていたようで、フランス物に限らず、幅広いレパートリーを持っているように思われる。
後半の冒頭、グリニーは音色がきれいで、語り口が自然。歴代Kitara専属オルガニストの中には、フランス風イントネーションのニュアンス豊かな名演を聴かせてくれた人も多かったが、今日の演奏もそれらに負けず劣らずの好演。落ち着いた歌い方で、輪郭が明瞭。しかも固くならず、作品の基礎情報をしっかりと伝えてくれた演奏で、5曲それぞれの性格が良く表現されていてとてもわかりやすかった。
続くアランでは、本人のトーク解説にもあったとおり、雰囲気がガラッと変わってモダン一色。音色は柔らかく、表情が多彩で色彩豊かな演奏。オルガンの響きがホールと馴染んできたようで、全体的に美しい音色。アランは歴代専属が得意としていたレパートリーだが、その中でも、一二を争う快演の一つだろう。
最後のデュプレは、静かなオープニングから、壮大なフィナーレまでスムーズな流れがとてもよく、オルガンの最強音が割れずにホール全体に豊かに響き渡り、鮮やかで気持ちの良い演奏だった。
アンコールにバッハのト短調の小フーガ。これが実に端正な演奏。レジストレーションはバランスがよく、心地よい響きがする組み合わせ。形が全く崩れず、終始一貫したテンポの中で、細かいニュアンスがとても表情豊かに表現されていて、これは久しぶりに聴いた立派なバッハ。確か札幌市内小学六年生全員を対象としたKitaraファーストコンサートの中でも演奏されるはず。子供たちにいいプレゼントになりそうだ。
前半はレーガーが充実した響きで中々の力演。歴代専属が何度もレーガーの作品を聴かせてくれたが、失礼ながらこの作曲家は何度聴いてもあまり親しみがわかない。しかしながら今日の演奏は、パッサカリアという作品の性格もあるのかもしれないが、わかりやすく、レーガーを身近に感じさせてくれた演奏。それまでちょっと不安だった響きのバランスがこの作品で見事に整い、重厚な響きで聴こえてきて、前半の締めくくりに相応しい仕上がりだった。
冒頭のバッハ、続くメンデルスゾーンはもちろん水準以上の演奏ではあったが、後半のフランス物やアンコールを聴いた印象から言えば、もっと柔軟で表現力のあるいい演奏を聴かせてくれるはず。また違う機会に是非聴きたいものだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。