2025/10/20

 札幌交響楽団 第672回定期演奏会

 2025年10月19日13:00  札幌コンサートホールKitara大ホール



指揮 /トーマス・ダウスゴー

ヴァイオリン /竹澤 恭子

管弦楽/札幌交響楽団


ランゴー:弦楽四重奏曲第3番「ラビア(怒り)」(T.ダウスゴー編曲版)

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲

ニールセン:交響曲第4番「不滅」


 ダウスゴーは2023年7月のPMFで札幌登場、今回が2度目の来札。前回は必ずしも全てが好印象というわけではなかったが、今日は全体的にいい仕上がりの演奏会だった。

 ブラームスは2023年6月の名曲シリーズで、シュトイデがコンサートマスター兼ソロを弾いて以来。協奏曲としての仕上がりは指揮者がいる今日の方が断然素晴らしい。竹澤は札響定期の常連で、今回も完成度が高く、やはり何度も繰り返し聴いてみたくなる演奏家だ。


 まずダウスゴーがオーケストラからいい音を引き出し、見事にまとめ上げていた。客席から指揮ぶりを見ていると、どことなくぎこちなく見えてソリストとの合わせは大丈夫か、と一瞬不安になったが、これは全く心配なし。

 竹澤は各セクションとより明確なコンタクトを取るために、色々な方向を向いて演奏し、指揮者の如く積極的にオーケストラをリード。キャリアの豊富さを感じさせるいいアンサンブルを作り上げていた。前回のシュトイデのように素っ気なくやや事務的だった音楽進行と比べると、協奏曲の醍醐味を聴衆に示してくれた秀演と言えるだろう。

 ステージ上でソリストが動きすぎると、人によっては音量がガラリと変化し、興醒めになる例も多いのだが、少なくとも今日座った席で聴く限りではほとんど気にならなかった。

 もちろん繊細な表情や、作品にふさわしい風格、スケールの大きさも申し分なく、ソリストとしても見事だった。

 アンコールにバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタから。これは美しく良く歌い込まれた素敵な演奏だった。


 ニールセンは、定期では1988年12月の秋山和慶氏以来だそう。著名な指揮者の録音が多い作品だが、実際には全曲をライブで聴く機会はほとんどない。

 今日の演奏はいいリズム感に支えられたすっきりとした爽快な演奏。弦、菅のバランスがとても良く、充実したしかも引き締まった響きで全体をまとめ上げていた。日頃聴き慣れている日本人指揮者からは感じられない歯切れの良さと逞しさが感じられ、とても気持ちの良い演奏だった。

 滞るところや理屈っぽいところがなく、常に明晰。ただ、出自が同じデンマークということもあってか、アクセントとか、民謡風のメロディーの歌い方など独特の世界観があるようで、それが上手く作用したようだ。失礼ながらニールセンがこんなに聞き応えのある作品とは思わなかった。


 他に冒頭にダウスゴーの編曲で、デンマーク出身のランゴーという作曲家の弦楽四重奏曲のオーケストラ版。第3楽章のコラールは、オルガン席前に弦楽カルテットが配置され、カルテットとステージ上のオーケストラが対話するように演奏されていた。プログラム解説によるとダウスゴー自身は普遍的魅力を感じているようだが、様々なモティーフが交錯し、普遍性よりも個人的思い入れが強すぎる作品のように思えた。これはまた改めて違う機会に聴いてみたい作品だ。

 コンサートマスターは会田莉凡。





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