2025/11/07

 北星学園大学チャペルコンサート

大森潤子バッハ無伴奏ヴァイオリン演奏会

2025年11月6日12:20 北星学園大学チャペル


ヴァイオリン/大森潤子


バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 BWV 1001

    無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番 二短調 BWV 1002



 バッハの無伴奏ヴァイオリン作品全曲を大森潤子の演奏で年に一度、2曲ずつ演奏し3年で完結するシリーズで、今回が6巡目のスタートとなる演奏会。一人の演奏家によるバッハの無伴奏を何度も繰り返し聴いていくユニークな企画。

 前回聴いたのは一昨年の2023年11月。この時は各第2番を演奏していたので、聴き逃した昨年は恐らく各第3番を演奏して5巡目を終了したのだろう。

 配布プログラム解説によると、昨年からバロック弓を使用して演奏し、それに加え今年はさらに415のバロックピッチで演奏するとのこと。ただし、楽器と弦は従来から愛用しているモダン仕様のものと思われる。従って前回2023年と異なる点はバロック弓の使用と半音低い415のピッチによる演奏。


 元来モダン仕様の楽器を、弓とピッチをバロック仕様に変えて演奏することはかなり難しい試みだ。しかし、そこはさすが大森で、充分説得力のある演奏ができる確信があったのだろう、チャペル全体に落ち着いた柔らかい響きが広がり、聞き応えの演奏だった。

 バロック仕様だと、一般的には表情が柔らかく繊細な雰囲気になりがちだが、しかし、この人が弾くと、線が太く、生命力のあるたくましく力強いバッハ像が伝わってくる。これは彼女の持つオリジナリティなのだろう、懐の深さを感じさせた演奏だった。各曲ごとの性格の違いがそれぞれ的確に描かれていたが、特にソナタでは第2楽章のフーガのクリアな表現、パルティータでの終曲の力強い表現が印象深かった。


 ただし、恐らく弦のテンションと弓のバランスが完全になじみきっていないとこがあったようで、ところどころ音程や表情、アーティキュレーションが曖昧になるところがあったのは惜しい。

 一方で、とピッチだけバロック仕様でも、現代の楽器を使用するのであれば、基本的にバッハの時代のバロックヴァイオリンとは仕様と音色が異なるので、折衷案としてそのギャップをどう解決した演奏法になるのか。次回はその解答案が提示される演奏を聴かせてくれることだろう。次回が楽しみだ。

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