2025/12/24

 札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第23回

2025年12月23日19:00  札幌文化芸術劇場hitaru


指揮/広上淳一

ヴァイオリン/米元響子

管弦楽/札幌交響楽団


尾高惇忠:ヴァイオリン協奏曲

ラフマニノフ:交響曲第2番



 尾高惇忠の遺作、ヴァイオリン協奏曲は札響初演。世界初演は尾高が2021年2月に他界した後の同年6月25日に、京都コンサートホールで今日と同じ広上、米元と京都市交響楽団で行われている。
 広上のプレトークによると、わかりやすい優れた作品とのこと。


 京都での初演のために書かれた遺稿が今年発見され、配布プログラムに掲載されている。これを読むと、聴きやすい現代音楽とは、という方向を模索しながら作曲したことと、同時に病を意識して完成をさせた旨書かれている。

 そういう背景を思いながら聴いてみると、過去を回想しながら、様々な社会の出来事、師である人々や多くの作品との出会い、そこから受けた影響などをもれなく綴っている印象を強く受けた。

 一部難解な現代音楽の雰囲気を持ちながらも、穏やかなところ、ちょっと驚かせる先鋭なところなど、作風は多岐にわたり、ソリストと管楽器の対話など協奏曲とのしての要素も多彩で、聴き手を飽きさせない。

 ソリストの米元は、オーケストラとよく音色、ピッチを融合させながら一体となって音楽を創造していくタイプの演奏家で、ピッチを高めにとりブリリアントに演奏するソリストタイプではない。この落ち着いた音楽性が、尾高の作品ととてもよくマッチングしていたのではないだろうか。

 作曲家ご指名のソリストだったとすれば、その演奏を想定して作曲したのか、あるいは自分の作品を託するに相応しい演奏家だったことは確かであろう。

 広上はオーケストラをよくコントロールして、尾高の、想像するにおそらく暖かい人柄だったのだろう、その雰囲気を聴衆に余すところなく伝えてくれた。   

 広上によると札響は尾高惇忠の管弦楽作品をほとんど演奏しており、作品に対する理解力はとても優れているとのこと。そのためか、オーケストラは違和感なくまた疑問点もなく演奏できていたようだ。トータルではとても優れた札響初演だったと言える。


 後半のラフマニノフは、広上が50回ほど振っているお得意のレパートリーとのこと。息の長いフレーズの歌い方、メリハリある楽想の表現、輪郭のしっかりとした構成、それでいて柔らかく豊かな響きで全体をまとめ上げており、名演と言ってもいいだろう。

 ダイナミックな動きで指揮をする姿は確信に満ちていて、オーケストラの能力を余すところなく最大限に引き出し、オーケストラもそれに応え伸びやかな明るい音色で自信を持って演奏していた。久々に気持ちのいいコンサートだった。

 コンサートマスターは会田莉凡。

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