札幌交響楽団 第643回 定期演奏会
2022年3月13日13:00開演 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/ピエタリ・インキネン
フルート/工藤 重典
管弦楽/札幌交響楽団
ステーンハンマル:序曲「エクセルシオール!」
ニールセン:フルート協奏曲
シベリウス:交響曲 第5番
久しぶりに、予告通りの来日外国人指揮者の登場。インキネンは1980年フィンランド生まれ。強い個性は感じさせないが、オーケストラからバランスのよい、やや硬質だが良質の豊かな響きを引き出し、全体のまとめ方がとても上手い指揮者だ。
指揮者の意向か、すべて北欧作曲家の作品で統一。中々渋い選曲だが、個性的で魅力たっぷりの名曲ばかりだ。定期ならではのプログラムだが、来場者が少なかったのが残念。
スウェーデンの作曲家、ステーンハンマル(1871〜1927)の序曲は1896年の作品で札響初演。賑やかな明るい作風で、北欧の民俗風の香りがあるが、全体的にはドイツ後期ロマン派系の厚い響きがする。オーケストラのためのエチュードのような技巧的な箇所が多く、弦楽器も管楽器も大活躍。インキネンは、音楽が騒々しくならない限界のところまでオーケストラを上手くコントロールしながら盛り上げ、全体をしっかりとまとめ上げた快演。
ちなみにステーンハンマルはエーテボリ交響楽団の芸術監督を務め、ニールセンを指揮者として招聘したり、友人のシベリウスの作品を紹介していたそうだ。
ニールセンはデンマークの作曲家。このフルート協奏曲は1926年の作曲で、ステーンハンメルに負けず劣らずアクティブな作品だが、クラシックな作風のステーンハンマルに対して、これは第一次世界大戦後の時代を物語る垢抜けたモダンな作風。
ソリストの工藤重典は札幌出身の大御所的フルーティストでさすがの名演。躍動する多彩な楽想が、明るい音色、落ち着いたテンポと歯切れ良いリズム感で表現され、この作品の特徴でもあるオーケストラの管楽器群との対話が素晴らしかった。打楽器とフルートソロの協奏は、打楽器がもう少し音が前に出た方が面白かったのでは。
ソリストアンコールでドビュッシーの無伴奏フルートのための「シランクス(パンの笛)」
シベリウスは冒頭から明確なオリジナリティを感じさせ、やはり北欧一の作曲家であることを強く認識させられた。インキネンはオーケストラを統率する、というよりは団員の自主的なアンサンブルと表現力を促し、それをサポートしていく、という指揮。特に、終楽章のホルンに繰り返し登場するパッサカリア風モティーフなど、絶妙にコントロールされた管楽器群の優れた表現力とアンサンブルが見事。弦楽器の緻密で深い表現とよく調和し、スケールの大きなシベリウス像がしっかり描かれていた。
冒頭の北欧の望洋な大自然を感じさせる響きなど、もう少し繊細な味わいが欲しいところも幾つかあったが、全体としては最近の札響の好調さを物語る、音楽的にも技術的にもよくまとめ上げられた好演。
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