2022/03/01

 <第24回リスト音楽院セミナー>


ライブビューイング特別講義


2022年2月2616:00   札幌コンサートホールKitara小ホール

講師/ガボールファルカシュ(リスト音楽院教授)

通訳/谷本聡子(札幌大谷大学教授)


レクチャーテーマ リストと19世紀のハンガリーの作曲家たち



    ハンガリーとオンラインで結んでの特別講義。リスト音楽院出身のピアニストで日本在住のギュラ•ニャリ(Gyula Nyari )が編纂し、日本でのみ発売されている「ハンガリー人作曲家ピアノ作品集」(ヤマハミュージックメディア、2011年)に基づいてのレクチャー。

 ステージ上に設置された大きなスクリーンに、ピアノの前に座った講師が映し出され、講義と演奏を行う。それを通訳が的確に翻訳していく、という流れ。タイムラグなどは全くなく、技術的には完璧だ。


 フランツリストを中心に、交友関係、師弟関係のあった作曲家とその作品を紹介する内容。著名な人物はショパンだけで、その他はコルネールアーブラーニ(18221903)など、日本ではほとんど知られていない人物ばかりだ。

 ちなみにこのアーブラーニは1875年の王立音楽院、現在のリスト音楽院の創設に関わった人物で、作曲家としても活動していたが、むしろ理論、評論関係に大きな功績を残している。リストは彼の作曲したチャールダーシュに基づいて、ハンガリー狂詩曲第19番を作曲した。


 興味深かったのはカールフィルチュ(183045)で、ショパンにも師事をした天才ピアニストだったが、結核で早逝したそう。


 他に紹介されたのはフェレンツエルケル(181093)、ミハーイモショニ(181570)、ヴィンセントアドラー(182671)、カーロイアグハージ(18551918)。

 ファルカシュの演奏で、アーブラーニの作品がいくつか紹介された。中にはオリジナル曲と、リストが添削し手を加えたアレンジ版を比較して演奏する例もあり、リストの作曲技法を探る手がかりともなる面白い企画でもあった。


 音楽史上の知られざる作曲家を探訪することは、テーマが明確であれば、単なる落ち穂拾いに止まらない大きな発見がある。個々の作品が人口に膾炙する作品かどうかは、わずか2時間のレクチャーの中で判断するのは難しいが、今回のように一人の大作曲家の人脈を通して、そこに集う様々な人物を追跡していくことは、謎解きをする期待感もあって、大変興味深い。

 聴衆が少なかったのが残念だったが、リスト音楽院セミナーでは、毎回講師による特別講義を開催しており、ヨーロッパの第一線で活動している教育者、演奏家ならではの興味深いレクチャーを聞くことができる。優れたレクチャーは将来的に、記録に留めて置くことを是非検討していただきたい。

(写真はファルカシュ教授、Kitaraホームページから引用。)

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