第22代札幌コンサートホール専属オルガニスト
ニコラ・プロカッチーニ
フェアウェルオルガンリサイタル
2022年8月20日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
オルガン/ニコラ・プロカッチーニ
(第22代札幌コンサートホール専属オルガニスト)
J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ホ短調 BWV548
シューマン:ペダル・ピアノのためのスケッチ作品58
プロカッチーニ:即興演奏
ヴィエルヌ:幻想的小品集より 月の光 作品53-5、鬼火作品53-6
メシアン:聖霊降臨祭のミサより 第4曲 聖体拝領唱「鳥たちと泉」
フランク:3つのコラールより 第1番 ホ長調
ヴィエルヌの「月の光」は、細部の表情がよく描かれていて、これは素敵だった。ただし、息の長いフレーズ感が感じられず、全体の構成感にやや不足していたのが惜しまれる。「鬼火」は本人の解説にもあった「闇に浮かぶ神秘的な炎のような世界」が想像でき、これは名演。
メシアンは、本当に鳥が鳴いているように聴こえるなど、細かい情景描写が素晴らしかった。メシアンの驚くべき個性と、緻密で透明な書法が見事に再現されていた。これも歴代専属が好んで演奏する作品だが、丁寧な仕上げで抜群の出来だったと言える。
フランクは、じっくりと時間をかけ、繊細なオルガンの響きを確かめ、そのハーモニーと音楽の推移を楽しみ、作品を慈しむように演奏。全体的な流れがもう少し前向きであれば、とも思われたが、プロカッチーニのフランクの対する畏敬の念が感じられた演奏だった。
アンコールにフィッシャーの「シャコンヌ」を選ぶのは、彼らしいなかなか渋い選択だ。バロック期の、どちらかというとチェンバロでよく演奏される名品で、オルガンで聴くのは初めて。
研究探究型のオルガニストで、まだ若いが、幅広い世界観、音楽観の持ち主だ。音楽的にも技術的にも優れており、今後の活躍が大いに楽しみである。ヨーロッパに戻っての更なる活発な活動に期待しよう。