PMF GALAコンサート
2022年7月31日15:30 札幌コンサートホールKitara
〈出演〉
【第1部】
オルガン/ニコラ・プロカッチーニ
(第22代札幌コンサートホール専属オルガニスト)
From OZONE Till DAWN
PMF Special Trio/鈴木瑤子×松井修太郎×石川紅奈
ヴァイオリン/三浦文彰
ピアノ/高木竜馬
【第2部】
指揮/ラハフ・シャニ
ピアノ/小曽根真
管弦楽/PMFアメリカ、PMFセクションリーダー、PMFオーケストラ
(掲載写真はいずれもPMF HPより)
〈プログラム〉
【第1部】
J. S. バッハ:プレリュードとフーガ ト長調 BWV541
From OZONE Till DAWN PMF Special Trio
プロカッチーニ:ブラームスの交響曲第2番の主題による即興演奏
プロコフィエフ:5つのメロディ 作品35bis
ラヴェル:ツィガーヌ
【第2部】
ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 作品26
ブラームス:交響曲 第2番 ニ長調 作品73
ラハフ・シャニ ©Marco Borggreve |
冒頭のウェーバーが良かった。楽曲の設計がしっかりしており、細部まできちんとコントロールされた演奏。ピアニシッモからフォルテまでダイナミックレンジが広く、歌わせ方は伸びやかで生き生きとしている。彫りの深い立体的な音楽作りが印象的だった。
プロコフィエフのソリスト小曽根は、クラシックを専門とするピアニストのような技術的ゆとりと全体を貫く逞しさこそやや不足していたにせよ、熱演。特に第二楽章の変奏曲が多彩な表情があって、面白かった。
例えばシンコペーションリズムでソロとオケがやり取りをする第三変奏など初めて聴くゆっくりとしたテンポで驚かされたが、楽譜を見るとAllegro moderato (poco meno mosso)と書いてあるので、これは正解だ、というような箇所がいくつかあって、普段気づかないプロコフィエフ像を聴かせてくれた。シャニの指揮は、小曽根にピッタリ合わせた隙のないタクトで、これは素晴らしかった。
アンコールに「小曽根 真:My Witch’s Blue」。テーマとそれに基づく即興演奏。軽やかで綺麗な音、かつ鮮やかな即興で、実に素敵な演奏。小曽根の本領発揮。
後半はブラームス。今回のPMFオーケストラは、コロナ禍の中での再開で、受講生は基本形の12型が編成できる人数で、いつもより少なめ。従って恒例の大編成作品によるプログラミングは不可能だったが、管楽器群が活躍し、弦楽器群とのコラボレーションの大切さがよくわかるブラームスの交響曲が課題だったのは、とても良かったのではないか。
シャニの指揮は、冒頭のウェーバーでの姿勢と基本的に変わらない。だが、例えばプロのオーケストラであれば、管楽器ソロの音量、バランス、他セクションとの調和などを考え、全体を概観しながら演奏するのだろうが、今回はその基本的な表現がいつものPMFオーケストラよりも荒い。もちろん、それを学ぶためにPMFに参加しているのだろうが、プロのオケマンとしての表現の基本、心得をシャニやPMF講師陣がどのように、あるいはどこまで指導しているのだろうか、がちょっと気になった。
とは言え、ドイツ的でもない、ヨーロッパ的でもない、いわば多国籍のインターナショナルなサウンドによる素晴らしい熱演。シャニの解釈は手堅く、しっかりとした構成力がある。よく歌い込み、しかも細部の仕上げも丁寧だ。誰かの解釈を真似たものでもない、堂々としたオリジナリティある演奏で、受講生も熱演。PMFオーケストラ以外からは聞くことのできない独特の熱気のある演奏で、これはとても楽しかった。
第1部はプロカッチーニのバッハで開幕。レジストレーションの選択、組み合わせがとても良く、調和の取れた音色がホール内に響き、実に心地よいサウンド。特にフーガのバスの動きが歯切れよく、力強く聴こえ、Kitaraオルガンの醍醐味を味わうことができた好演。
プロカッチーニの即興演奏は、第一楽章冒頭のモティーフによるもの。彼にしては珍しくモダンで、高音部の音色を効果的に生かし繊細な雰囲気を醸し出した即興。起承転結がもう少し明快だとわかりやすかったかもしれない。
ガラコンサート全体としては、演奏をじっくり鑑賞でき、PMF再開にふさわしい落ち着いた雰囲気があって、良かった。
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