第23代札幌コンサートホール専属オルガニスト
ヤニス・デュボワ デビューリサイタル
2022年10月8日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
オルガン/ヤニス・デュボワ
(第23代札幌コンサートホール専属オルガニスト)
J.S.バッハ:幻想曲とフーガ ト短調 BWV542
メンデルスゾーン:オルガン・ソナタ ニ短調 作品65-6
ブラームス:前奏曲とフーガ ト短調
デュリュフレ:アランの名による前奏曲とフーガ 作品7
J.アラン:幻想曲 第1番 JA72、第2番 JA117
トゥルヌミール:神秘のオルガン「精霊降臨節」作品57 第35曲
聖母被昇天より第5楽章 パラフレーズ・カリヨン
第23代目はリヨン国立高等音楽院で学んだフランス人。骨格のしっかりした音楽と重量感のある音を出し、楽器を響かせる優れたテクニックを持っている。
歴代のKitaraの専属オルガニストは、オルガニストにより音色は異なるが、ほぼ全員が楽器を美しく響かせるテクニックを持っており、これはオルガニストの場合、とても重要な要素だ。Kitaraでは常に本当のオルガンの響きを聴けることは実に素晴らしい。
デビューリサイタルということもあり、かなり緊張していたようだ。特に前半のプログラムで、力んでいたのか、鍵盤を弾くノイズや、オルガンの響きがやや硬く聞こえてくるところがあったにせよ、プログラム全体からは、前任者のニコラ・プロカッチーニとは対象的な、力感溢れる硬派のオルガニストという印象を受けた。
冒頭のバッハでは作品の資質剛健な雰囲気が良く表現されていたが、フレーズ、アーティキュレーションなど、細かい表情が十分表現しきれないまま流れてしまうところがあったのは惜しい。
メンデルスゾーンは、楽章ごとの音楽的な対比などもう少しわかりやすく演奏して欲しかったが、次第に場内の雰囲気に慣れてきたのか、このオルガニストの優れた音楽性の一端が伺われ、好演。
後半は緊張もかなりほぐれてきたようだ。フランスの作品は,やはり自国の言葉で語れる心強さがあるのか、表現に次第にゆとりと柔軟性が出てきた。作品の個性がよく描かれており、特にアランとトゥルヌミールが好演。
アランは、硬質ながらも、何処か革新性を感じさせる今までにはない新しさのある演奏で、意外にも藤倉大など、日本人の現代作品との共通性を感じさせるところがあり、これはとても面白かった。
最後のトゥルヌミールは、恐らく即興演奏を楽譜に書き留めた作品だと思われるが、即興性よりは全体の構成を捉えた骨組みのしっかりした演奏。1930年前後の作品で、これを含めた一連のオルガン作品は「メシアンの前身と見なすことができ(当日配布プログラムの演奏者本人の解説)」、作品に内蔵された、全く古さを感じさせない現代的な発想が見事に表現された好演だった。オルガンの響きが次第にホールに馴染んできたようで、響きも充実していた。
アンコールにバッハの「オルガン協奏曲 イ短調 BWV593より 第1楽章」。緊張も解け、力が抜けて、オルガンが自然な響きを奏で、柔らかい上質の響きが場内に広がり、この日の演奏の中では音楽的にも最も優れた内容だった。
今日はかなり緊張していたようだが、そういう状況でも、演奏はミスが少なく、作品に対する真摯な取り組み方が感じられ、作品の骨格をしっかりと表現できるオルガニストのようだ。今後の活躍を大いに期待しよう。
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