札響名曲コンサート
発掘!発見!オペラ名序曲集
2023年9月16日 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮 /マティアス・バーメルト(首席指揮者)
管弦楽/札幌交響楽団
ロッシーニ:「どろぼうかささぎ」序曲
レズニチェク:「ドンナ・ディアナ」序曲
モーツァルト:「劇場支配人」序曲
フロトウ:「マルタ」序曲
ウェーバー:「オベロン」序曲
エロール:「ザンパ」序曲
ボワエルデュー:「バグダッドの太守」序曲
ニコライ:「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
グリンカ:「ルスランとリュドミラ」序曲
全てオペラ序曲という、ありそうでない、意外と珍しいプログラムだ。
同工異曲の作品がこれだけ揃うと、逆に指揮者のセンスが試される場となってしまうが、そこはさすがバーメルト、彼だからこそ演奏出来たプログラムで、聴衆を最後まで惹きつけた快演だった。
バーメルトはつい1週間前の655回定期で名演を聴かせたばかり。今日も前回同様にオーケストラの響きはとてもいい。弦楽器群の軽やかで、力の抜けた爽やかな音色、管楽器群のソロなどとても魅力的。
全体的に良く歌わせていて、フレーズにはところどころ絶妙なアゴーギク、アクセントなどが付けられ、表現に多彩なニュアンスを与えている。ユーモラスな感覚もあり、これらは日本人指揮者からはなかなか聴けない感性だ。
モーツァルトがアンコールの「フィガロの結婚」序曲を含めて2曲演奏されたが、これらが意外と地味に聴こえたのは面白い体験。続きはオペラ本編でお楽しみください、という期待感を与えてくれているようで
、さすがモーツァルトだ。
ロッシーニの「どろぼうかささぎ」序曲は堂々とした威厳のある演奏で、独立したコンサートピースとしても鑑賞に充分耐え切れる内容。
そのほか、ウェーバーの「オベロン」序曲が演奏も作品も素晴らしかった。これは本編を少し観てみたい誘惑を感じさせる作品だ。
それ以外の序曲では、プログラム解説のオペラ・ストーリー概略を読み、バーメルトの演奏を聴けば、オペラ本編を観なくとも、もうこれだけで充分。オペラ全体の魅力を楽しむことができたような満足感を与えてくれた。
いくつか気になった作品では、エロールの「ザンパ」序曲。後半が、かつてNHKFM放送のテーマ曲として流れ、年配の音楽ファンには懐かしい作品だが、全体を通して聴くのは初めて。これが4幕もある喜歌劇の導入曲とはとても思えないほど気楽な内容だ。
グリンカの「ルスランとリュドミラ」序曲は弦楽器群の速いパッセージが見事に揃っていて気持ちが良かった。フィナーレの前に、ヴァイオリンがピアニッシモで演奏する静かなフレーズがとても印象に残り、いつもアンコールで聴いていると意外と気がつかない箇所だ。
今日のフルートのゲスト首席はちょっと遠慮気味か。もっと目立ってもよかったのでは。
休日の午後に楽しむにはなかなか面白いプログラム。これはひょっとして、滅多に聴けない大変貴重な演奏会だったのではないだろうか。
コンサートマスターは田島高宏。
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