札幌交響楽団第655回定期演奏会
2023年9月10日13:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮 /マティアス・バーメルト(首席指揮者)
ピアノ /リーズ・ドゥ・ラ・サール
ラヴェル:クープランの墓(管弦楽版)
ファリャ:スペインの庭の夜
フランク:交響曲
今回は首席指揮者のバーメルトが登場。彼が振ると、オーケストラはまろやかで豊かな音がするし、安定感があるので、聴いていてとても心地よい。
ラヴェルは12型で、上質のすっきりと抜けてくる音色で統一されており、前回のポンマー(8月26日「札響名曲コンサート」)での剛健な響きとは全く違う響きを聴かせてくれ、その対比が楽しかった。
冒頭の「プレリュード」では16分音符の軽やかで美しい流れ、以降「フォルラーヌ」のやや気だるい雰囲気、「メヌエット」の柔軟なリズム感など、力の抜けたいい響きが聴こえてきて、とても印象的。フィナーレの「リゴドン」は、なめらかで、柔らかい音色で駆け巡るような躍動感を表現しており、バーメルトならではの上品なラヴェルだった。
ファリャからは14型。題名のとおり、全てが夜の情景を描いた全3曲からなる。通常の協奏曲と異なり、この作品にはピアニスティックな派手さはないが、リーズ・ドゥ・ラ・サールが各曲の微妙な雰囲気の違いを繊細に、かつやや硬質の響きで表現し、バーメルトが全体を落ち着いた雰囲気でまとめ上げていた。
もう少し熱い民族的感性を主張した演奏も多いが、今日は作品の背景にあるフランス風の感性で統一した演奏だ。多少地味な印象も受けたが、オーケストラとソロピアノが見事に融和した好演だった。ソリストアンコールにシューベルトの「楽に寄す」。
フランクは、堂々とした安定感のある演奏。弦と管のバランスは良好。各楽器間での動機の受け渡しも滑らかで、作品の構造もよくわかり、しかも音楽の流れがとても自然。全体的に、オーケストラが無理のない自然な響きを奏で、札響の特質である柔らかく、しかも重厚感のある響きを今日は聴くことができた。
作品を構成する動機類には確かにベートーヴェンやワーグナーの強い影響が感じられ、もっと重量感のある響きで表現する指揮者もいるが、本来、フランクはオルガン曲や室内楽作品に見られるように、柔和で敬虔な落ち着いた感性の作風が特徴だ。今日のような柔らかい音色での音楽作りが、フランクの理想に最も相応しいような気がする。
今日はフランクに限らず、全体的に管楽器群、特に木管楽器群のピッチがとてもきれい。しかも随所で聴くことができた弦楽器、管楽器の女性奏者達による美しいソロが素晴らしかった。
また、今日は久しぶりにフルートの元首席、高橋聖純が客演首席として登壇。冒頭こそやや違和感を感じさせたものの、以前同様安定感のある美しい音色を聞かせてくれ、その健在ぶりを示してくれたのは嬉しかった。
バーメルトは前回のポンマーよりは6歳!も年下だ。ゲルマン魂に満ちたポンマーと柔和で垢抜けた雰囲気を創出したバーメルト、両巨匠の演奏をわずか2週間ほどの期間で続けて聴けたのは実に楽しい経験だった。2人の強烈な個性の違いを見事に表現した札響もまた素晴らしかった。
コンサートマスターは会田莉凡。
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