札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第15回
2023年11月21日19:00 札幌文化芸術劇場hitaru
指揮:マティアス・バーメルト
ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
管弦楽:札幌交響楽団
間宮芳生/オーケストラのためのタブロー2005
モーツァルト/交響曲第40番
ブラームス/ピアノ協奏曲第2番
間宮は札響初演。札響の管楽器群の多彩な表現が印象的。冒頭いきなり拍子木が登場し、ハッとさせられるが、間宮らしい底力のある逞しい生命力を感じさせる作品だ。
バーメルトは管楽器群から生き生きとした表現と繊細で美しい日本の笙の音色を想起させるハーモニーを、弦楽器群からは、武骨で力強さを感じさせる表現を引き出し、両者の一体感が実に見事。中では、特に長大で即興的な演奏を聴かせてくれたオーボエソロが素晴らしかった。
バーメルトが振ると、弦楽器がとてもよく歌い、音に厚みが出る。全体の音楽の流れ、統一感にも優れ、作品の魅力をとてもよく伝えてくれた演奏だった。
モーツァルトは札響演奏歴は70回だそうだが、意外に聴く機会の少ない名曲で、前回聴いたのがいつか思い出せない。バーメルトは古典であっても、編成を小さくすることはしないのが慣例のようで、今日も大編成の14型。
だが、大編成ならではのスケール感をことさら強調することもなく、全体的に弦楽器を豊かに美しく歌わせてのモーツァルトだ。
冒頭の主題の歌わせ方がやはりバーメルト。押さえつけず流れるようなボーイングによる、柔らかくすっと力の抜けた表情が素敵だ。この柔らかいアーティキュレーションで優美に歌わせる表現は、今日のモーツァルトの全体を通しての特徴。
第2楽章の終盤あたりでは、弦楽器群だけによる抜群のハーモニーの美しさを聴かせてくれるなど、この優れたハーモニー感覚も今日の素晴らしかった点の一つ。
第3楽章メヌエットでのシンコペーションのリズムの生き生きとした表情、終楽章の求心力のある演奏も良かった。
全体的には、やや14型を持て余しているところと、管楽器が今一つ冴えに欠けていた印象を受けたが、バーメルトならのモーツァルトで、名曲の魅力を余すところなく伝えてくれた。
ブラームスはオピッツが名演。元々ヴィルトゥオーソタイプのピアニストではなく、作品を表情豊かに表現する人だ。必ずしも音量は大きくなく、圧倒的な迫力はあまり感じさせない。だが、重要な音はすべて聴こえてきて、鋭いリズム感覚と停滞することのない求心的な音楽作りで、音楽に隙を与えない緊張感のある演奏だ。一方で第3楽章での穏やかでかつドラマティックな表現、第4楽章での快活な表情など、多彩な表情にも事欠かず、常にオーケストラと一体となったシンフォニックな響きを生み出して、なかなか聞き応えのあるブラームスだった。
オーケストラは弦楽器セクションが見事。第3楽章のチェロのソロをはじめとする豊かな表現力と抜きん出て美しい音色は札響ならでは。それに対して管楽器セクションはやや冴えにかけ、意外なミスが多かったのが残念。
コンサートマスターは会田莉凡。
今年度で首席指揮者を退任するバーメルトはhitaru定期初登場。次回はKitara 658回定期と東京公演で、次年度以降はhitaruは予定がないようだ。是非ここでまた聴いてみたい指揮者だ。