森の響フレンド札響名曲シリーズ
~わたしの3大B:広上淳一篇
2024年6月 8日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮 /広上 淳一<友情指揮者>
ピアノ /小山 実稚恵
J.S.バッハ: 管弦楽組曲第3番
ベートーヴェン:交響曲第1番
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番
バッハとベートーヴェンの初期の交響曲は小編成で演奏することも多いが、今日は2曲とも12型。
バッハは最近の古楽器演奏のイメージとはかなり違った、輪郭の太い大柄の昔懐かしい演奏スタイルだ。
大編成であっても、各舞曲のテンポの違いなどコントラストが明確だと面白いのだが、今日は序曲とアリア、それに続く3つの舞曲の性格の違いがよく伝わって来ず、淡々と音楽が流れるようなところがあって、組曲としての全体像が見えてこなかったのが残念。
ただし、オーケストラはよく歌い込まれた生き生きとした表情の演奏を聴かせてくれて、この指揮者らしい伸びやかで生命力を感じさせたバッハだった。
ベートーヴェンはバッハ同様輪郭の太い演奏だったが、広上ならではのオーケストラの主体性を生かした演奏。やや大味ではあったが、若きベートーヴェンの颯爽とした楽想が豊かに表現されていて、大ホールで聴くに相応しいスケール感のある演奏だった。
ブラームスは14型の大編成。ピアノが前に設置されて、オーケストラは前半よりやや後ろに下がったためか、多少響きがこもりがちになったが、音色はこちらの方がクリア。ポジションによる響きの違いを味わうことできて、これは面白い体験だった。
小山がコンチェルトを弾くときは、オーケストラとの対話が特に濃密だ。
輝かしいソリスティックな表現をさりげなく聴かせながらも、トータルではオーケストラの響きの中へ入り込んで、調和させていく音楽作りが魅力的。
特に今日は楽器の響きが渋めで、例えるなら艶消し風の味わいある深みのある音。時々硬めの音がしたものの、これは他のピアニストからは聴けない小山ならではの世界だ。
全体的に、ハーモニーの厚さ、豊かさを感じさせた演奏で、特に第2楽章冒頭のすっと抜けてくる美しい音色と旋律の歌い方の素晴らしさ、第3楽章の冒頭のソロの骨太な表情と一気呵成に突進していく力強い見事な表現など、この作品の魅力を存分に味わうことができた。
オーケストラはもう少し念入りに仕上げてほしいところもあったにせよ、ソリストと一体になった好演。
アンコールの前に広上のトークがあり、能登半島の震災支援と、アンコールを小山と連弾でブラームス(「4手のためのワルツ集作品39」より第2番、第15番)を演奏する旨告知。海外ではこのような例が結構あるようだが、札響で体験するのは初めて。広上のピアノ演奏は小山を器用にサポート、名曲シリーズに相応しい親密さを創出してくれた。
今日はほぼ満席。コンサートマスターは田島高宏。
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