ダネル弦楽四重奏団
2024年6月9日 15:00 札幌コンサートホールKitara小ホール
ダネル弦楽四重奏団
ヴァイオリン/マルク・ダネル、ジル・ミレ
ヴィオラ/ヴラッド・ボグダナス
チェロ/ヨヴァン・マルコヴィッチ
ピアノ/外山 啓介*
プロコフィエフ:弦楽四重奏曲 第2番 ヘ長調 作品92
ヴァインベルク:弦楽四重奏曲 第6番 ホ短調 作品35
ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲 ト短調 作品57*
2年おきの来札がほぼ定番になってきたようで、前回の2022年(2022年6月4、5日)に続いて2年ぶりのダネル弦楽四重奏団公演。今回はオールロシアプログラムで、かなり渋めな内容にも関わらず、場内はほぼ満席。
前回公演時よりも一層スケール感を増したようで、ちょっとした室内オーケストラよりも豊かな響きがするのではないか、と思わせるほど。4人とも音楽的にも技術的にも技量が揃っているのが強みだ。
プロコフィエフは、民謡を題材したなかなか気の利いた1941年の作品。第1楽章の途中で、マルクの弦が切れるハプニングがあり、数分の中断後、もう一度最初から演奏。2回めは力が抜けたのか、一転柔らかい音色になって、印象が大きく変わった。
演奏は、ことさら民族色を強調することもなく、また戦時の暗い雰囲気や土俗性もあまり感じさせず、どちらかというと室内楽作品としての高い完成度を感じさせた。
もちろん随所に見られるプロコフィエフ独特の剛腕な音楽進行ぶりなども過不足なく見事に表現されており、力強さと、皮肉っぽい抒情性を鮮やかに表現した好演だった。
ヴァインベルクは、1946年の作品。今日の作品の中では最も情緒的で繊細な作風を持ち、外向きの顔を持つプロコフィエフとは違う内に秘めた激しい情念を感じさせる。
ダネルはそんな作品の姿を見事な集中力で余すところなく伝えてくれた。
彼等はこの作品の初演者でもあり、すでにCDも発売されているが、それとはまた違った印象を受けた演奏。ライヴならではの録音には収まりきらないスケール感があり、各楽章の解釈もより繊細に、かつよりドラマティックになってきたようで、少しづつ表現の幅が広がっているようだ。
それにしてもプロコフィエフとショスタコーヴィッチというロシア音楽の大王達に挟まれても、なんら遜色ないオリジナリティを持つ音楽的にとても充実した作品だ。これはもちろんダネルカルテットの追従を許さない見事な演奏の成果によるものだろう。
続くショスタコーヴィッチは、1940年の作品。前半2曲と比較すると、より明確でシンプルな楽想と形式を持ち、ショスタコーヴィッチの作品の中では屈折した暗い感情が比較的少なく、その分聴きやすい。
前半とは違って、各パートのソロやソロ的な動きが多く、4人の力量が如実にわかる作品だ。4人とも個性的なモティーフが現れる各楽章ごとの性格を、繊細かつ音楽的に、均整感のとれた音色で見事に表現。一切弛緩することなく緊張感を保ちながら全曲を演奏し、これは聞き応えのある素晴らしい演奏だった。
彼等に負けず劣らず、この緊張感ある世界をダネルと一体となって表現した外山も素晴らしかった。特にフーガ風のユニークな楽想が展開していく第2楽章が、ピアノとカルテットが一体となった名演。
アンコールにこの作品の第3楽章スケルツォ。明快な演奏で本編よりも、こちらの方がその性格をよく表現していたようだ。
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