〈びわ湖ホール・iichiko総合文化センター・札幌コンサートホールKitara・ やまぎん県民ホール 共同制作〉
沼尻 竜典作曲
歌劇『竹取物語』
2024年12月7日15:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/阪 哲朗
演出/中村 敬一(原演出:栗山 昌良)
出演/びわ湖ホール声楽アンサンブル
かぐや姫/砂川 涼子*
翁/迎 肇聡
媼/森 季子
帝/西田 昂平
石作皇子/有本 康人
庫持皇子/大野 光星
阿倍御主人/市川 敏雅
大伴御行/晴 雅彦*
石上麻呂足/平 欣史
大将/有ヶ谷 友輝
月よりの使者/德田 あさひ
石上麻呂足の使者/石毛 博也(HBC少年少女合唱団)
職人/有ヶ谷 友輝、奥本 凱哉、古屋 彰久、五島 真澄、砂場 拓也、
林 隆史
合唱/びわ湖ホール声楽アンサンブル、札幌市内合唱団
管弦楽/札幌交響楽団
*客演
全曲は2時間を少し超える歌劇としては比較的短めの作品で、沼尻自身によるプログラムノート(当日配布プログラム掲載)によると「昭和歌謡、大河ドラマの音楽のイメージが盛り込まれた昭和の香り満載のオペラ」だそうだ。
オペラ全曲は今回札幌初演だが、抜粋ではフィナーレの第5景から「2021年Kitaraのニューイヤー」(札幌コンサートホール主催、2021年1月11日)で、作曲者沼尻の指揮、今回と同じ砂川とびわ湖ホール声楽アンサンブルによって一部初演されている。
このときのわかりやすく親しみやすい、という印象は、今回あらためて全曲を鑑賞してみても基本的に変わらないが、作風は歌劇というよりはミュージカル風だ。
今回の席はちょうどステージを斜め後ろから見る席。従って声楽陣の表現、バランスなど詳細は他都市公演のレビューに譲るが、指揮者とオーケストラの全体像と演奏をじっくりと鑑賞できた面白い席だった。
今日の指揮者、阪は、前半はやや生真面目過ぎたきらいもあるが、全体的に沼尻の指揮の時よりも格調高い作品にまとめ上げていたようで、新たな生命が与えられていたようにも感じられた。
演出は先日の北海道二期会の「こうもり」と同じく中村 敬一(原演出:栗山 昌良)。上演形態は、中村の演出ノート(当日配布プログラム)に、「アクティングエリアはあまり広くない密な空間としオーケストラもステージ上で演奏し、指揮者や演奏者たちも舞台空間の役者として捉えて舞台に上げている」とあった通りのコンパクトな上演形態だ。
ステージは照明を効果的に見事に使いこなして、色彩豊かで、美しい。またオルガンのあるポディウム席を活用し、かぐや姫を迎えに来た月の使者がオルガン前で歌うなど、このホールならではの立体感を生かした演出で、全体的に落ち着いた仕上がり。
中村の演出ノートにあったとおり、オーケストラはステージ上で演奏。阪の指揮は、柔軟で声楽陣とのコンタクトは申し分なく、ほぼ両者一体となった万全のアンサンブル。なによりも音楽的にしなやかで、オーケストラの音がきれいでよくまとまっており、この物語の童話的世界を見事に表現していたのではないか。作曲者沼尻のオーケストレーションもさすがに立派。
Kitaraでのオペラ上演は過去ホール主催でモーツァルト、札幌交響楽団主催でブリテン、北海道二期会主催でヴェルディなど、かなりの演目が上演されており、それぞれ個性的なステージを創出していたが、技術的進歩もあるのだろう、光を効果的に使って描いたステージとしては今日が最良の出来。
4館の共同制作ということもあり、かなり効果的でいい舞台を作り上げることができたようだ。
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