2025/02/19

 〈ハンガリーの俊英たちⅤ〉

トポラーンスキー・ラウラ ソプラノリサイタル

2025年2月16日15:00 札幌コンサートホールKitara小ホール


ソプラノ/トポラーンスキー・ラウラ
ピアノ/中島 幸治(第15回リスト音楽院セミナー最優秀受講生)


リスト:美しい芝生が広がるところ S.284

       彼らは何と言った S.276
       わが子よ、私がもし王だったら S.283
       愛の夢より 第3番 変イ長調 S.541(ピアノ・ソロ)
バルトーク:8つのハンガリー民謡 BB 47
コダーイ:4つの歌より 第2曲「ナウシカア」
      
愛しい人、私のところに来ないで

      チターリの山の下には

      
モーツァルト:歌劇『イドメネオ』K.366より 心の中に私は感じる
          歌劇『フィガロの結婚』K.492より 恋人よ、早くここへ
ヴェルディ:歌劇『リゴレット』より いつも日曜日に教会で
シューベルト:4つの即興曲より 第3番 変ト長調 D.899(ピアノ・ソロ)
ワーグナー:歌劇『タンホイザー』より おごそかなこの広間よ
レハール:喜歌劇『ジュディッタ』より 私の唇は熱い口づけをする
チレア:歌劇『アドリアーナ・ルクヴルール』より 私は創造の神の卑しい僕




 ハンガリーの俊英たちは今年で5回目、初めての声楽家登場のためか来場者も多かったようだ。
 ハンガリーの歌姫と言えばかつてのシャシュ・シルビアを思い出すが、スケール感では今日のラウラも全く引けを取らないのではないか。

 前半は、比較的聴く機会の少ないハンガリーの作曲家特集。

 リストの歌曲は歌われる機会が本当に少なく、今日は貴重な機会。今日はフランス語の詩による作品で、歌詞がややわかりにくかったにせよ、繊細で表情豊か。よく通る声と中島のピアノのバランスがよく、リストならではの優れた書法がよく表現されていたのではないか


 バルトークは短い民謡風の歌が8曲、歌詞がハンガリー地域の民謡詞で、民族色の強い語りかけるような作品かと思っていたが、今日の歌唱を聴く限りでは国際色豊かで、幅広い世界観を持つ作品のようだ。歌よりは中島のピアノの雄弁な表現がその幅広さを示していて、むしろピアノが主役のように聴こえてきたのが意外だったが、これがバルトークの狙いだったのかもしれない。


 続くコダーイの作品がこの3人のハンガリーの作曲家の中では最も聞き応えがあった。特に「ナウシカア」でのラウラがとても表現力豊かで、切々とした深い表情が伝わってきて、場内の雰囲気をガラリと変えるほど。続く2つの歌曲でもラウラの情感溢れる豊かな表現がとても素晴らしく、今日の作品だけで言えば、民謡を素材とした声楽作品ではバルトークよりも親しみやすく、芸術性も高いように思われた。


 後半はオペラアリア集から。歌姫に必要な豊かな声量と華やかさがあって、オペラの舞台に立つとより存在感がありそうだ。

 イタリア語系のアリアは、申し分ない表現力。もう少ししなやかさや艶っぽさがあればとも思ったが、それはあくまでも今日のステージからの印象で、おそらくオペラの舞台に立って歌ってくれると、存分に魅力的な歌を聴かせてくれるのだろう。

 今日はドイツ語系の歌がそれぞれ説得力のある歌唱で良かった。特に、ワグナーが、張りのある輝かしい歌唱で聴衆を圧倒。続くレハールのオペレッタでは雰囲気をガラッと変えての歌唱で、存分に楽しませてくれた。 R・シュトラウスなど聴きたかったが、それは後の楽しみとしよう。


 全編を通じてしっかりと歌を支え、多彩な表現で共に演奏を盛り上げた中島がとても良かった。2曲のピアノソロが気分転換の役割を果たしており、なかなか気の利いたプログラミング。伴奏ピアニストとしての活躍をもっと期待したい。

 アンコールにプッチーニ:歌劇『ジャンニ・スキッキ』より 私のお父さん。

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