札幌交響楽団第669回定期演奏会
2025年6月1日13:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮とオーボエ独奏:ハインツ・ホリガー
管弦楽:札幌交響楽団
ホリガー/2つのリスト・トランスクリプション
ケルターボーン/オーボエと弦楽のための変奏曲
ウェーベルン/管弦楽のための6つの小品(1928年版)
シューベルト/交響曲「ザ・グレイト」
冒頭リストの編曲は、晩年のピアノ作品、「暗い雲」と「不運」によるもの。極端に音の数が少なく、謎めいたこの2曲をオーケストラ用に編曲するにはかなりのセンスが要求されるだろう。
一つのモティーフを断片的に刻むように異なる楽器で表現するなど、編曲の基本コンセプトは明らかにウェーベルンを意識しているようだ。原曲のピアノのモノトーンの響きが色彩感豊かに聴こえてくるので、原曲とはイメージがかなり違うため聴く方としては戸惑いがあり、聴衆も指揮者もどことなく手探り状態でのスタートだった。
2曲目のケルターボーンは1960年、21歳の若きオーボエスト、ホリガーのために書かれた作品。65年前、当時の俊英奏者ホリガーはきっと尖がった感覚でかなり鋭く演奏したに違いない、と想像させる86歳のホリガーの演奏で、年齢を考えれば奇跡的な完成度だ。
作風は前後2曲と比べるとかなりアクティヴな性格だ。個性的ではないにしても、当時としては前衛的で技巧的な作品だったのに違いない。コントラストが明確で、ここに配置したホリガーの意図が読み取れる。
ウェーベルンは、解説(沼野雄司)にもある通り、マーラーの長大重厚な交響曲と一緒の変則的な4管編成のかなりの大編成で、しかもわずか10分で終わり、主催者側にとっては極めて不経済とも言える作品だ。
作風と音色には冒頭のリスト・トランスクリプションとの共通性も感じられたが、大編成のライヴで聴くとかなりロマンティックでもあり、試行錯誤していた当時の時代の雰囲気がよく伝わってくる。管楽器グループのかなり高度な演奏テクニックによる抑制のある表現がとても素晴らしく、聞き応えがあった。全曲演奏は1995年以来2度目だそうで、貴重な機会でもあった。
後半のシューベルトは、前半のプログラムがかなり綿密に仕上げられていたのに対し、こちらは結構アバウト。12型で、ウェーベルンと比べるとかなりの小編成の印象。ただし響きはとても充実していた。
第1楽章、第2楽章は余計な感情を込めずにストレートに演奏しており、やや単調。それに対して後半のふたつの楽章は、基本的に同じ姿勢の演奏だが、作品の構成がこのような解釈に向いているのか、爽快な感覚も感じられた快演。前半の20世紀以降の作品はかなりロマンティックで多彩な表情を込めるのに、シューベルトではあっさりとまとめ上げるホリガーの独特の感性に今回は振り回されてしまったようだ。86歳にもかかわらず感覚の若々しさに感心。
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