札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第22回
2025年6月19日19:00 札幌文化芸術劇場 hitaru
コンサートマスターとヴァイオリン独奏 / フォルクハルト・シュトイデ
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」
ジョン・ウィリアムズ:「シンドラーのリスト」より3つの小品
ドヴォルジャーク:交響曲第8番
シュトイデは2023年(6月17日札響名曲)以来の登場。曲の導入と、ところどころ重要なポイントだけ指示をして、あとは自ら演奏しながらリードしていくというのが基本で、これはいつものスタイル。今回は大曲のドヴォルジャークを含む重量級のプログラムだ。
モーツァルトはシュトイデクラスの演奏家だとお手のものだろう、と思っていたが、意外と大変そうに演奏しており、やはりモーツァルト、一筋縄ではいかないようだ。
とは言え、ごくたまに輪郭が不鮮明になるところがあったにせよ、美しい音色や多彩で奥行きを感じさせる表現など全体的な仕上がりはさすが。
シュトイデはソロに専念してオーケストラへの指示はほとんどなし。オーケストラは荒さがあったにせよ、指揮者に統率されている時には感じられない積極性があり、これがなかなか聴いていて楽しく、とても気持ちのよい演奏だった。
このhitaruシリーズは現代作品を必ず一曲プログラムに加える、というのがコンセプト。ジョン・ウィリアムズはポピュラリティがあり、聴きやすく、わかりやすい。シュトイデのソロ、オーケストラとも表情豊かで、起承転結が明快で良かった。映画を観て知っている人はもちろん、そうでない人にも背景にある重い事実を感じさせるシリアスさも持った演奏だった。
ドヴォルジャークは、アクティヴで前向き、かつスケールの大きな表現で、冒頭のモーツァルト同様、実に生き生きとした演奏。これはやはりシュトイデの音楽性のみならず、優れたリーダーとしての能力、キャラクターがあってこそなのだろう。
こじんまりとまとまることなく、全員が一つの方向に向かって積極的に演奏しており、これは普段の演奏からは聴けない演奏だ。
特に見事だったのは最終楽章。冒頭のトランペットソロは今まで聴いたことがないような抜けの良いすっきりとした音色で、全く迷いのない演奏。続く変奏曲の主題のチェロの表情が意欲的で実に多彩。変奏ごとに登場する管楽器のソロなど、伸びやかに、かつ皆楽しげに演奏しているのがとても印象的。
もちろんシュトイデ率いる弦楽器セクションの思い切りのいい表情が実に素晴らしく、全体の牽引者。オーケストラの様々なセクションに活躍の場を提供するこの作品を選んだシュトイデの選曲が光る。ドヴォルジャークの意図をこれほど見事に再現してくれた演奏は初めてだ。
荒削りだったり、神経質な指揮者だったら修正してしまうようなバランスの箇所があったにせよ、指揮者抜きゆえに見えてきたフレッシュなドヴォルジャークの姿が浮かび上がってきて、とても面白く、楽しく聴けた演奏だった。アンコールに同じドヴォルジャークのスラブ舞曲。
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