札響の第9
12月10日17:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/広上 淳一
ソプラノ/秦 茂子
メゾソプラノ/清水 華澄
テノール/吉田 浩之
バス/妻屋 秀和
合唱/札響合唱団ほか
管弦楽/札幌交響楽団
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」
広上の第9は親しみやすく、気楽に楽しめる内容。ことさら何かを強調して表現するなど、特別な解釈をするわけでもなく、いつも聴き慣れている平均的な解釈で、定番中の定番。
細かい箇所など結構大雑把で、第3楽章などは、細部まで大切に表現して欲しいとか、その他の楽章でも全体的なアンサンブルのバランスのコントロールなど、丁寧に仕上げてほしい、と思う所もあったが、そういうことよりも、全体の大きな流れを大切したスケール感あるまとめ方だ。
かつ、メリハリがあり、骨格がしっかりしており形が崩れない。オーケストラは活気があり、生き生きと演奏している。重低音がしっかりと響き、重心の低い、この作品にふさわしい、いい響きがしていた。このオーケストラの自発性を引き出すのも広上の長所だ。
しかも伝えるべき情報はすべてきちんと伝えてくれた演奏で、全体的に深刻ぶらない、世俗的な親しみやすさを感じさせてくれた、明るい第9だった。これも広上ならではの魅力だろう。
ソリストは全員ステージ上前方で歌い、従って声も歌詞も充分伝わってきて迫力があった。バスの妻屋が声量と表現力が素晴らしく、さすがの貫禄。その他の歌手も安定感、声量もあり、作品の持つ声楽的な魅力を充分伝えてくれ、久しぶりに第9の独唱を堪能出来た。
合唱は札響合唱団を中心に、地元声楽家、札幌放送合唱団が加わった73名の合唱団(当日配布のプログラムより)。 P席で歌い、マスク着用で、一席ずつあけての着席。マスク着用ゆえに、詳細は不明だとしても、おそらく発声、発音、音程、声量など、安定した良質のコーラスだったと思う。その真髄は、やはりマスク着用義務が解けるまで待つことにしよう。
冒頭にワーグナーのジークフリート牧歌。ちょっと焦点の定まらないようなところもあったが、これも広上ならではの親しみやすい演奏だった。第9の前座としては立派すぎる作品だったような気がする。
やや空席が目立ったのが惜しい。コンサートマスターは会田莉凡。
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