札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第11回
2022年12月15日19:00 札幌文化芸術劇場hitaru
指揮/川瀬賢太郎
サクソフォン/上野耕平
ピアノ/山中惇史
パーカッション/石若駿
管弦楽/札幌交響楽団
ニールセン:フェロー諸島への幻想の旅
吉松 隆:サイバーバード協奏曲(1994)
メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」
吉松隆がよかった。サクソフォンの上野は、何度も来札しており、札幌の聴衆にはお馴染みだが、やはりこの人の音楽的センスは抜群で、サクソフォーンの楽器の範疇を超え、聴衆に訴えかけてくる優れた表現力がある。今回は、喜怒哀楽が豊かな、鮮やかな演奏を聴かせてくれた。
山中、石若も、アンサンブルに対する優れた感覚を持っており、美しい音色による繊細な表現が素晴らしい。
特に第2楽章に込められた吉松の思いが、3人による繊細で、透き通るような音色で表現され、これはとても感動的な演奏だった。
パーカッションの石若の澄んだ美しい音がとても印象的で、時には主役として自己主張をしたり、また影でそっと支えたりと、見事な存在感だ。パーカッションが、多彩な表現能力を持った、しかもとても優美な楽器であることを示してくれた。
オーケストラはややソロを邪魔するような、大きすぎる響きの箇所もあったにせよ、ソリストとの一体感があって、いい演奏だった。
吉松の作品には、ほんのりとした調性感覚と、日本人ならではの情緒豊かな感性がある。「美しい旋律や和声を否定した20世紀の前衛音楽に反旗を翻し、1980年代から「世紀末叙情主義」を標榜(当日配布プログラム解説より)」している通り、今日の演奏は吉松作品のそんな魅力を存分に伝えてくれた。吉松が来場し、この演奏を鑑賞。
3人で、アンコールにロンドンデリーの歌。ピアノの山中がしゃれた即興を聴かせ、上野がそれに答え、石若が彩りを添える、という呼吸の揃った鮮やかな演奏で、聴衆への素敵なクリスマスプレゼントとなった。
メンデルスゾーンは、楽曲の性格が比較的明確な後半の第3、4楽章が、表情に豊かさがあり、充実した響きのまとまりある演奏で、聞き応えがあった。
ただ、今日座った一階の20列では、弦楽器の厚い響きに覆われて木管楽器群のソロがKitaraのように抜けて響いてこない。ここは客席によってかなり響きに違いがあるにせよ、メイン会場のKitaraとは、響きのバランスが異なるので、その調整が今回はやや不調だったのかもしれない。
第1、2楽章はもう少し丁寧な交通整理と、ピアノ、ピアニッシモの美しさが感じられる豊かな表情があるともっと良かった。全体にやや大味で、秘めたロマンティシズムがあまり感じられなかったのがちょっと残念。
冒頭のニールセンは、プログラムに掲載されていた作曲者自身のコメント通りに音楽が進行して、なかなか面白い作品だった。管楽器の音色がきれいで、ローカル色豊かな、遠近感のある素朴な雰囲気が感じられ、いい演奏だった。
コンサートマスターは田島高宏。
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