PMFホストシティ・オーケストラ演奏会
2023年7月23日18:00 札幌コンサートホールKitara 大ホール
指揮/川瀬賢太郎
フルート/デニス・ブリアコフ
管弦楽/札幌交響楽団(PMFホストシティ・オーケストラ)
PMFオーケストラ・メンバー
バーンスタイン:スラヴァ!(政治的序曲)
プッツ:フルート協奏曲
チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64
冒頭のバーンスタインは、名チェリスト、故ロストロポーヴィチが1977年ワシントン・ナショナル交響楽団音楽監督に就任したお祝いのために書かれたもの。
ともかく賑やか、かつ華やかなお祭り騒ぎの作品で、これ以上ないというほどオーケストラが爆発的に派手に鳴る。途中録音で音声が流れるなどユニークなところもあるが、起承転結が明確でとてもわかりやすく、見事なオーケストレーションはさすがバーンスタインだ。PMFオーケストラメンバーも加わり、川瀬が賑やかさを見事に演出、これは楽しい演奏だった。
プッツは、現代アメリカの作曲家で、アメリカではかなり評価が高いようだ。フルート協奏曲は過去と現代の音楽をミックスさせ、程よく現代風の香りを漂わせた作品。モーツァルトのパロディの第2楽章や、ソリスト以外全員手拍子でリズムパターンを表現する第3楽章のフィナーレなど、アイディアは面白く、エンターティメント的要素をも持ち合わせている。しつこくおしゃべりが続くように、同型パターンの音型が繰り返される場面が多いが、印象に残る作品ではある。
ソリストのブリアコフは安定感があり、音がすっと遠くまで抜けてきて、表現力の豊かないい奏者だ。ただ、この作品、ソロパートはフルートの特性とは今ひとつ馴染まないようだ。むしろアンコールのバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ 第1番 第1楽章 アダージョ(フルート編曲版)で、ブリアコフの美しい音色と見事な音楽性が発揮され、これは素晴らしかった。
チャイコフスキーは川瀬が見事にまとめ上げた力演。特に後半の2つの楽章は申し分がないほどよく仕上がっていたのではないか。スケールの大きい演奏で、この作品の魅力をほぼ充分引き出していたと思う。ただ、今日の札響はいつもよりは音色が少々荒く、全体的に弦楽器と管楽器のハーモニーがあまりきれいではない印象を受けたが、それは気のせいだったかもしれない。
このホストシティ・オーケストラ演奏会、昨年はPMF客演指揮者のケン=デイヴィッド・マズアが振っていた。今回の川瀬はもちろんいい指揮者だが、いつも聴き慣れた指揮者よりは、せっかくのPMF期間中の演奏会、出来れば客演指揮者等が振ってくれた方が、聴衆としてはより楽しみが増えるのだが。
コンサートマスターは会田莉凡。