PMFホームカミング・コンサート
2023年7月13日19:00札幌コンサートホールKitara小ホール
パシフィック・クインテット
アリーア・ヴォドヴォゾーヴァ(フルート)
フェルナンド・マルティネス(オーボエ)
リアナ・レスマン(クラリネット)
古谷拳一(ファゴット)
ヘリ・ユー(ホルン)
ロッシーニ(J. リンケルマン編):歌劇「セビリアの理髪師」序曲
日本の歌:山本教生編
花いちもんめ、浜辺の歌、村祭り、ふるさと
ファジル・サイ:木管五重奏曲 作品35
「アレヴィー派の親父たちはラクの酒席で」
Andantino tranquillo - Presto fantastico
Andante tranquillo - Moderato, "Ironique"
Andantino
Presto - Andantino
ニールセン:木管五重奏曲 作品43
ンで結成。「カール・ニールセン国際室内楽コンクー
ル2019」で第2位に入賞するなどヨーロッパで活躍中のPMF修了生による木管クインテットだ。全員が異なる国籍。
これは実に魅力的なクインテット。全員若く、5人
とも演奏技術が素晴らしいのは勿論だが、演奏に活力
と生命力がある。アクティヴで挑戦的でもあり、同時
にアンサンブルをする喜び、楽しみがダイレクトに聴き手に伝わってくる。
おそらくかなりの練習量を重ねているとは思うが、その努力の様子を全く感じさせないのがいい。どのような難曲でも完璧に手中に収めてしまう能力を持っているようだ。
特徴としてはハーモニーが実にきれいな事。よくある平均律的な伸びのないハーモニーではなく、自然に広がる純正の美しいハーモニーを生み出す。また、例えばファジル・サイでのユニゾンの旋律でも単に揃っている、ということだけではなく、音楽的に実に自然な音律で演奏されるので、これはとても心地よい。
演奏には立体感があって、遠くから聞こえるホルン、フルートとクラリネット、ファゴットとオーボエの対話など、左右と奥からの遠近感のある響きが調和して、多彩な表情が聴こえてきて、楽しい。
冒頭のロッシーニはやや慎重すぎたかもしれないが、このアンサンブルの底力を示してくれた好演。丁寧で誠実な音楽作りが作品に緊張感を与え、響きが次第にホールに馴染んでくる様子は、ライブならではの醍醐味だ。
日本の歌は、各楽器が大活躍。それぞれの歌の個性もよく表現されていたのでは。
ファジル・サイは色々な要素が盛り込まれた多様な顔を持つ作品。作風は意外と保守的で、20世紀前半の原始主義的要素と、かつ多国籍的要素があって、面白い作品だが、まとめるのが大変そうな難曲だ。
トルコの民族音楽的な世界観が強い作風のようだが、演奏からはそういうローカリティは感じられず、インターナショナルで幅の広い語り口だ。作品の多様な顔が、歯切れの良いわかりやすい解釈で表現されており、聴衆を最後まで惹きつけ、飽きさせない。特に個々のメンバーの演奏のレベルの高さが披露され、実に楽しい演奏だった。
ニールセンは完全に手中に収めた演奏で、整ったまとまりのある演奏。何度も演奏してきたのだろうが、初めて演奏するようなフレッシュさとエネルギーに満ちた演奏で、疲れを知らないタフさも披露してくれた名演だった。今まで聴いてきたニールセン像とは違う、外向きで空間の広さを感じさせるスケールの大きな解釈で、聞き応えのある見事な演奏だった。
アンコールにベルリン・フィルメンバーが登壇し、一緒に演奏。PMFならではの師弟共演で、楽しませてくれた。
木管五重奏は比較的地味な演奏をするグループが多いが、今日のようなスケール感を持つグループは初めて。今後の活躍が多いに楽しみだ。
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