PMFベルリン演奏会
2023年7月14日19:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
PMFベルリン
アンドレアス・ブラウ(フルート)
アンドレアス・ヴィッドマン(オーボエ)
アレクサンダー・バーダー(クラリネット)
リッカルド・ウィリス(ファゴット)
サラ・ウィリス(ホルン)
タマーシュ・ヴェレンツェイ(トランペット)
イェスパー・ブスク・ソレンセン(トロンボーン)
フランツ・シンドルベック(パーカッション)
佐久間晃子(ピアノ)
モーツァルト(シェーファー編):歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」
序曲 K. 588 [木管五重奏]
シューマン(ソレンセン編):歌曲集「詩人の恋」作品48から
美しい五月に/ばらに、百合に、鳩に、太陽/心を潜めよう
君の瞳に見入る時/恨みはしない/恋人の歌を聞くとき
[トロンボーン、ピアノ]
ベートーヴェン(レヒトマン編):五重奏曲 変ホ長調 作品4
クルーグハルト:木管五重奏曲 作品79
D. ローブ:チェルトフカ[トランペット、パーカッション]
バーンスタイン (プライス編):「ウエストサイド・ストーリー」組曲
から
アイ・フィール・プリティ - トゥナイト/マリア/アメリカ
PMFベルリン PMFHPより転載 |
今更だが、世界を代表する名手達によるアンサンブル。ファゴットのテルツォ以外は全てベルリン・フィルメンバーだが、今日最も存在感があったのはこのテルツォ。
特に後半で演奏されたクルークハルトやバーンスタインでの、抜群のテクニックとリズム感、臨機応変で気の利いた表現、均整感があり一切乱れのない音色など、おそらくファゴット奏者の中では最も優れた演奏家の一人ではないだろうか。
モーツァルトは先日12日のオープニング・ナイトでも演奏されたが、今日はやや粗っぽさが目立ち、12日の方が仕上がりは良かったようだ。それにしても見事なアンサンブル。
ソレンセン自身の編曲によるシューマンは弱音での繊細な表現が素晴らしい。しかも自然に歌い込まれた見事な無言歌となっており、これは彼ならではの素敵な演奏だ。トロンボーンとシューマンの歌曲は意外な組み合わせだったが、ソレンセンの高い音楽性に感服。
ベートーヴェンはあまり聴く機会のない、20歳を超えたばかりの頃の作品。ハイドン、モーツァルトの系図に繋がるウィーン古典派そのもののスタイルのようだ。明るく若い感性に満ちた作風を、手慣れた雰囲気でまとめ上げた演奏。ただ、どこに焦点があるのかよくわからない演奏だったが、これは編曲のためだろう。
そのベートーヴェンに対して、クルーグハルトはやはりオリジナルの木管五重奏曲ならではの魅力的な作品。各楽器の特性を生かした楽想と自然な息遣いが感じられる旋律線、手慣れた書法によるまとまりある美しい響きなど、メンバーも生き生きと演奏しており、これはさすがの名演。
ローブはユニークな創作活動をしているアメリカの現代作曲家。タイトルのチェルトフカは東欧の地名なのか。おそらく東洋の響きのパーカッションと西洋の音律のトランペットとの東西のコラボレーションを狙った作品で、それがプログラムに取り上げた理由のようにも思えるが、よくわからない。2人の演奏からは冷静客観的で、陰影あるモノクロトーンの響きが聴こえてきて面白かったが、作品の意図がわかる解説があると良かった。
最後のバーンスタインは、楽しみながら演奏する様子が聴衆にもよく伝わり、フィナーレにふさわしい名手達の競演だった。ファゴットのテルツォの鮮やかな演奏が冴え渡っており、全体のアンサンブルにより華を添えていた。
アンコールには出演者全員が登場し、賑やかに、Z.アブレウ(シュマイサー編)の「ティコ・ティコ」とルイ・プリマの「シング・シング・シング」。
このメンバーならではの華やかで楽しいステージ。ジャンルを超えた音楽が名演で同時に楽しめ、これはPMFでなければ味わえない醍醐味だ。
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