2023-2024札幌交響楽団名曲コンサート
ポンマーの贈り物 ドイツ三大B
2023年8月26日14:00札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮 /マックス・ポンマー
管弦楽/札幌交響楽団
J. S. バッハ:ブランデンブルク協奏曲第3番
ベートーヴェン:交響曲第8番
ブラームス:交響曲第4番
ポンマー87才。2019年以来コロナ禍を経て4年ぶりの登場。久しぶりに貫禄十分の音楽を堪能することが出来た。
バッハは楽譜通り、ヴァイオリンとヴィオラ、チェロが各3人ずつ、ヴィオローネ(コントラバス)が1名とチェンバロ、合計11名の小編成。ポンマーがどこまで指示をしたのかはわからないが、実に生き生きとした躍動感に満ちた演奏。バッハならではの大胆で、かつ一貫した流れが見事に再現されていて、各弦楽器セクションの名技と第2楽章のチェンバロのソロも見事。
ベートーヴェンの編成は10型の中編成。ポンマーの指示は早めのテンポで、やや強引とも言える牽引振りだ。大枠をしっかり捉えておいて、あとはバッハ同様団員の自発性に委ねるやり方だったようだ。
第2楽章冒頭の表情記号はピアニッシモの指定。出だしの管楽器群など明らかに大き過ぎ、弦楽器とのバランスも良くないが、スケルツァンドの雰囲気がユーモアたっぷりに表現されていて、これは快演。
第3楽章のメヌエットでは、中間部でのホルンの溌剌とした二重奏とチェロの明快なソロのアンサンブルが素晴らしく、この箇所がこれほど印象に残った演奏は初めてだ。
終楽章は、前のめり風の落ち着かない独特の楽想と、どこか垢抜けない雰囲気がよく描かれていて、面白かった。
全体的にかなり大雑把なところもあったにせよ、何処か古き良き時代の昔話を聴いているよう。ポンマー以外からはけっして聴けない、味のある魅力的な演奏だっだ。
後半のブラームスは14型の大編成。全体の設定はやはり早めで、丁寧な仕上げをして音楽を整えていく、というよりは、やはりベートーヴェン同様に大きく作品を捉えていくやり方だ。
第1楽章は全体的にやや粗さを感じさせたが、第2楽章以後がとても良かった。第2楽章冒頭の堂々としたホルンのソロから始まる管楽器グループの豊かな音楽性や、ヴィオラ、チェロの重厚な歌い方、絶え間なく流れる音楽の美しさと全体の統一感は格別。
第3楽章のアクティヴな躍動感、第4楽章の各変奏ごとの豊かな性格描写、そしてそれらが積み重なってスケールの大きなパッサカリアが構築されていく様子は圧倒的で、これは素晴らしかった。
響きはちょっと渋めで、いつもの札響トーンではないが、これだけ充実したブラームスを聴くのは本当に久しぶりだ。
三大Bのプログラムは意外と聴く機会が少なく、貴重な機会。3人ともポリフォニーの名手であることはもちろん、バッハでの単一動機で展開される音楽の見事さ、ベートーヴェン、ブラームスと時代を下るにつれて動機に多様な性格を与えるようになり、ブラームスは更にその動機群に豊かな抒情性を与えて、より表情豊かな世界にした、と三大Bによる音楽史をレクチャーしてくれたようだ。教育的配慮もけっして忘れない。さすがポンマー先生だ。
6月に東京で聴いたシャルル・デュトワも同じ1936年生まれの87才。おふたりとも元気いっぱいで、素晴らしい。今後のより一層の活躍に期待しよう。
コンサートマスターは会田莉凡。大活躍だった。
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