〈Kitara室内楽シリーズ〉
カルテット・アマービレ
2023年8月27日15:00 札幌コンサートホールKitara小ホール
カルテット・アマービレ
ヴァイオリン/篠原 悠那、北田 千尋
ヴィオラ/中 恵菜
チェロ/笹沼 樹
ハイドン:弦楽四重奏曲 第79番 ニ長調「ラルゴ」作品76-5
シューマン:弦楽四重奏曲 第3番 イ長調 作品41-3
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 作品127
2015年桐朋学園大学在学中に結成された今年で8年目の若いカルテット。下手側から第一ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという比較的珍しい配置。
後半のベートーヴェンが素晴らしかった。全体の統一感が見事で、一つの大きな世界を作り上げており、技術的にも音楽的にも完成度は高い。聴衆に作品の本質を余すところなく伝えてくれ、聞き応えのある演奏だった。
第1楽章はアクティヴで求心的。堂々とした張りのある音色の序奏に引き続き、伸びやかに歌われた主題、それが次々と多様に変容していく様子が隙なく鮮やかに表現されており、秀悦。
第2楽章の変奏曲は、変奏ごとに丁寧かつ慎重に仕上げており、しかも各楽器の響きのバランスと調和が素晴らしい。美しい歌に満ちており、思わず惹き込まれてしまった名演だった。
第3楽章は心地よい鋭いリズム感と息の長いフレーズ感があり、一切弛緩することがない。ベートーヴェン特有のスケルツァンド楽章の性格がこれほど見事に表現された例は少ないのではないか。
第4楽章は様々なモティーフの対比が鮮やかに描かれ、かつ躍動感に満ちており、フィナーレに相応しい演奏。
それぞれの楽章の性格が明確に表現されているので、作品の構造を理解しやすく、集中して聴くことができた。後期のベートーヴェンというと聴く側も身構えるが、今日のような説得力のある演奏だと、残りの5曲も聴いてみたくなる。
前半のハイドンは躍動感があり、このカルテットの若いエネルギーを感じさせた好演。続くシューマンは作品に込められた、いかにもロマン派らしい熱い情熱が表現されていて、印象的ではあった。
ただし、後半の充実した到達度の高いベートーヴェンを聴いてしまうと、前半は明らかに完成度が低い。
2曲ともアンサンブルとしてはやや固く、未完成の響きがする。作品に対する意志統一が出来ていないようで、音色やボーイング、ハーモニーに統一感がベートーヴェンの演奏ほど感じられない。
ハイドンはより引き締まった演奏を、シューマンはもっとわかりやすく作品の魅力を聴衆に伝えてくれる演奏を、それぞれ期待してもいいだろう。
アンコールにピアソラの「リベルタンゴ」。これは理屈抜きに素晴らしい演奏だった。才能抜群のカルテットだ。今後の活躍を大いに期待しよう。
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