2023/08/01

 PMF GALAコンサート 


202373015:30  札幌コンサートホールKitara大ホール


【第1部】
ARK BRASS
(アーク・ブラス)
PMF
オーケストラ・メンバー
【第2部】
指揮/トーマス・ダウスゴー
ヴァイオリン/金川 真弓
管弦楽/PMFアメリカ、PMFオーケストラ


【第1部】
S.
シャイト:戦いの組曲
ヘンリー8世/E.ハワース編曲:組曲「棘のない薔薇」
ウォルトン/E.ハワース編曲:「スピットファイア」前奏曲とフーガ 


【第2部】
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
ブルックナー:交響曲 9 ニ短調(第4楽章補筆完成版)



ダウスゴー©Thomas Grøndahl  PMFHPより
 PMF札幌最終日の恒例ガラコンサート。
まず後半第2部から。今回はブルックナーの交響曲第9番の完成版が最大の注目点。その補筆完成版の第4楽章だけで30分近くもあり、交響曲全曲で約1時間半。管楽器が多用されているため、アカデミー生に加え、PMF教授陣も加わった総力戦の体制。
 指揮者のダウスゴーはデンマーク出身で、バーンスタインのセミナーや岩城宏之に師事するなど、PMFと日本にはゆかりの深い指揮者だが、聴いたのは今日が初めて。

 前半にメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。これは金川の豊かで幅広い表現力が素晴らしく、また何よりもダウスゴーのサポートぶりが実に見事。この作品で、ここまでオーケストラを繊細かつ美しく仕上げた演奏は本当に久しぶり。ソロとオーケストラが見事に一体化された名演で、歴代PMFのコンサートの中でも代表的名演の一つだと思う。


 ということで、大いに期待された後半のブルックナー。

 全体的にかなりスケール大きくまとめ上げた熱演。アカデミー生達の躊躇しない思い切った表現が素晴らしく、彼らの迫力に圧倒された1時間半だった。ここまでアカデミー生の積極的な表現力を引き出したダウスゴーの手腕は見事。一方で、第楽章での弦楽器群が産み出した重厚なハーモニーは今回の演奏の中でも特筆すべき仕上がり。

 ただし、協奏曲で聴かせた細かい配慮と繊細さがこの作品ではあまり感じられず、大きくまとめ上げる方に力点が働いていたようで、全体の枠組みがやや荒くなったのが惜しい。一夏限りのオーケストラとはいえ、個々のアカデミー生の実力は以前よりもかなり高くなっているはず。もっと踏み込んだ音楽的解釈を要求しても良かったのではないだろうか。

 特に管楽器が全体的に弦楽器を圧倒してしまう音量で、聴いていて辛かった。同じ大きな音でも、弦楽器と調和したもっと歌い込んだ柔らかい響きを引き出してくれると、聴きやすかったのだが。弦楽器群がかなり厚みのあるいい響きで演奏しているにも関わらず、両者が競うように音量を絞り出す結果になってしまったのは惜しい。

 その他、例えば、第1楽章でのベートーヴェンの第9を想起させる特徴的なホルンのモティーフの扱いが粗雑で、これは明らかに指揮者の責任。ここだけではなく、全体的にもう少し細部を深く彫り下げた、輪郭の明確な演奏に仕上げることもできたように思う。

 補筆された終楽章はライブでは初めての体験だが、トータルで聴くと再構成された違和感はさほど感じない。ただ、PMFホームページで読める第4楽章の再構成を担当した一人であるジョン・A・フィリップスの解説にある、この作品に込められたブルックナー自身の様々な思想的背景等は、ダウスゴーの目指すところではなかったようだ。

 とはいえ、多国籍アカデミー生による国際色豊かな補筆完成版の第9番、遺作とは思えない熱いメッセージを伝えてくれた演奏で、これはPMFならでは。この音楽祭で北海道初演となった大曲を聴き、その魅力を知った音楽ファンは多い。アカデミー生の今後の活躍を大いに期待しよう。


 ガラ第1部はARK BRASSの演奏。管楽器だけの演奏だが、良く歌い込まれた美しい音色の整ったアンサンブルで、シャイトとヘンリー8世の作品がシンプルで機知に富んだ魅力があることを紹介してくれて面白かった。

 PMFオーケストラメンバーが加わってのウォルトンは音楽の精度がやや曖昧になったがこちらも好演。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。