札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第14回
2023年8月 3日19:00 札幌文化芸術劇場 hitaru
指揮とチェンバロ /鈴木 優人*
ピアノ /阪田 知樹
プーランク:フランス組曲*
グリーグ:ピアノ協奏曲
武満徹:夢の時
ストラヴィンスキー:「火の鳥」組曲(1919年版)
冒頭のプーランクは管楽器とチェンバロのための珍しい編成の作品で、鈴木が弾き振り。洒脱な雰囲気のある、いかにもプーランクらしい佳品だ。
最初の曲目ということもあるのだろうか、名手揃いの札響管楽器群にしては珍しく不調。それぞれの舞曲のテンポに今ひとつ乗り切れず、作品の快活さ、明快さが聴衆に伝わらずに終わってしまったようで、ちょっと残念だった。
グリークを演奏した阪田は素晴らしい演奏家。颯爽とした演奏で、すっきりと音が抜けてきて、迫力も充分。無理のない柔らかいテクニックの持ち主で、楽器がとても美しく響き、気持ちがいい。リズム感が抜群で、音楽が停滞することなくいつも前向き。第2楽章での抒情豊かな表現も、洗練された明るい響きでなかなか素敵だ。
鈴木指揮のオーケストラは第一楽章こそソリストとややテンポに違和感があり、かつ音量が大きすぎたきらいはあるが、全体的には好サポート。弦楽器の音色が少し硬質ではあったが、グリークのスケール感をよく伝えてくれた好演。
ソリストアンコールでガーシュウィン(アール・ワイルド編)のファシネイティング・リズム 。初めて聴いた作品だが、抜群のリズム感で楽しませてくれた。
休憩後の武満はオーケストラの音色がガラリと変化し、柔らかく、流麗。多彩な音型がまとわりつつ、ホール内に広がっていく響きの美しさは武満ならでは。この作品の依頼者はネーデルランド・ダンス・シアターの振付師イリ・キリアン。舞踏音楽としてはすでに古典となっているようで、女性3人と男性2人が登場する、武満の音楽からは想像出来ないとても動きの激しいハードな振付のようだ。
演奏会用作品としてはもう少し繊細さがあってもいいと思ったが、夢の多様な姿を描いた舞踏音楽として聴くには全く問題がない。移りゆく感性を見事に表現して武満の世界を余すところなく伝えてくれた。鈴木優人の優れた感性が最も発揮された演奏。
続くストラヴィンスキーは指揮者、オーケストラ共々手中に収めた安定感のある演奏。今日は全体的に硬質の音色だったが、それがストラヴィンスキーに相応しく、いい響きがしていた。管楽器群のソロがとてもよく、ピッチもきれい。鋭く、切れ味のいいリズミックな演奏で、特にカスチェイの踊り以降が、鈴木のタクトが冴え、充実した札響サウンドを見事に引き出し、楽しめた。
鈴木は今年3回目の登場。札幌のファンにもすっかり顔馴染みとなったようだ。コンサートマスターは田島高宏。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。