2024/11/24

 北海道二期会創立60周年記念公演

喜歌劇『こうもり』


2024年11月23日14:00 札幌市教育文化会館 大ホール


指 揮: 川瀬 賢太郎

演 出: 中村 敬一


アイゼンシュタイン:宮本 益光

ロザリンデ:後藤 ちしを

アデーレ:前田 奈央子

ファルケ博士:岡元 敦司

アルフレード:荏原 孝弥

オルロフスキー公爵:岩村 悠子

フランク刑務所長:小野寺 陸

ブリント博士:青山 壮汰

イーダ:木幡 周子

フロッシュ:小橋 亜樹


バレエ:桝谷博子バレエスタジオ

児童合唱:HBC少年少女合唱団

管弦楽:札幌交響楽団

合唱:北海道二期会合唱団



 広く親しまれている喜歌劇だけに、今回はどのような舞台なのだろうか、と楽しみに来場した観客も多いのではないだろうか。今日は音楽はもちろんのこと、エンターテイメント的要素も細部までよく練られていて、総合的にとても楽しめた公演だったといえる。


 今回は演出が中村敬一。わかりやすく、この会館の舞台の規模を上手に使い切ったなかなか優れた内容だった。

 冒頭、舞台にはパネル状のボードらしきものが10数枚並び、そこに色々な映像が流れる。おそらくプロジェクションマッピングか。ステージの奥にはスクリーンもあり、そこにはオペラの進行に合わせてウィーンの街の名所が投影されたりと内容が様々に変化して行く。また照明を使用しての多彩な色彩の変化が面白く、聴衆の目を飽きさせない。

 必ずしも広くはないここのホールのステージの奥行きを上手く利用して、必要最小限のセットでありながらも、各場面をわかりやすく豪華さを感じさせるように再現していた気の利いたセットで、楽しかった。

 

 音楽面では全体を統率していた指揮の川瀬賢太郎が大健闘。歌手の微妙に揺れ動く表現や即興性の多いユーモラスな演技などを臨機応変にサポートしながら、喜歌劇全体を見事にまとめ上げていた。

 

 歌手陣では、今日は特に男声グループが大活躍。ゲストのアイゼンシュタイン役の宮本益光がさすがの貫禄。ファルケの岡元敦司、アルフレードの在原孝弥、刑務所長小野寺陸もそれぞれの役柄をユーモアたっぷりに表現。何よりも男声陣は皆声量豊かで、説得力もあり存在感があった。

 女声陣は、ロザリンデ役の後藤ちしを、アデーレ役の前田奈央子はそれぞれの役柄を表情豊かに表現しており、またいつもなぜか役柄に恵まれないオルロフスキー公爵役を今日は岩村悠子が務め、これはとても良かった。

 合唱は全体をしっかりと引き締め、力強さがあって聞き応えがあった。


 この喜歌劇のもう一つの楽しみはフロッシュ役と台詞。

今日のフロッシュ役は小橋亜樹。以前、関西で「こうもり」を観た時は桂ざこばが演じており、予想外の大物が登場する重要で意外に難しい役柄。出来不出来の多い役柄だが、それを小橋はユーモアたっぷりに見事に演じており、進行を引き締めた貴重な役割を果たし、これは実に楽しかった。

 一方、劇中の台詞の役割も重要。それが進行の鍵となる場面が多いが、時事ネタなど盛り込みながらのユーモラスな内容で、はっきり明確に聴こえてきて、これも進行に円滑な流れを生み出していて、存分に楽しませてもらった。


 第2幕の舞踏会では出演人数があまり多くなく、豪華さにやや不足したのは否めないが、ゲスト登場したHBC少年少女合唱団は札響をバックに美しき青きドナウを歌い、背景にドナウの川の流れが投影され、これは観客に素敵なプレゼント。同じくゲストの桝谷博子バレエスタジオのバレエダンサーは伸びやかな踊りでステージに花を添え、好演だった。


 字幕は演出家が担当、気の利いた意訳も多くて、全体的にわかりやすく、この喜歌劇にふさわしい内容だった。

 

 オーケストラは札幌交響楽団。今回は1階席だったのでオーケストラピットに入ったオーケストラの響きが必ずしも万全に聴こえてこなかったのが残念だったが、もう何度も演奏している作品だけあって、比較的落ち着いた演奏だったように思える。


 全体的には時折粗っぽさも感じられたにせよ、1100席の規模に相応しいスケール感のある上演で、全体的に丁寧に作り込まれていた良質の上演だった。2日連続公演の第一日目を聴いて。

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