第27回リスト音楽院セミナー 講師による特別コンサート
クリストフ•バラーティ ヴァイオリンリサイタル
2025年2月21日19:00 札幌コンサートホールKitara小ホール
ヴァイオリン/クリストフ・バラーティ
ピアノ/ガーボル・ファルカシュ
ベートーヴェン:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第5番 ヘ長調「春」
作品24
シューマン:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第1番 イ短調 作品105
ブラームス:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第3番 二短調 作品108
1997年のホールオープン時から開催しているリスト音楽セミナーは、今年で27回を迎えた。
四半世紀が過ぎ、セミナー講師は世代交代し、今回、現リスト音楽院主任教授2人による演奏会を聴けるのは実に貴重な機会で、感慨深いものがある。
ヴァイオリンのバラーティは、今回初登場。現代的な安定したテクニックによる力強い表現が特徴の優れた演奏者で、録音等で聴くバッハも完全にモダン奏法で実にたくましいバッハだ。
今日の演奏を聴く限り、ベートーヴェンももちろん素晴らしかったが、ロマン派以降の作品により優れた特性を発揮するヴァイオリニストのようだ。
冒頭のスプリングソナタは、今日の他の2曲と比較して聴いてみると、まだピアノが主導権を握っていた18世紀後期の伝統を色濃く残している作品であることがよくわかる。ここではむしろファルカシュのピアノが主役で、各楽章に登場する様々なモティーフの表現がしなやかでかつ性格描写が素晴らしい。
バラーティのヴァイオリンは冒頭のためか、会場での響きなどを探っているようなところがあったにせよ、端正な様式観と安定したテクニックで作品の性格を落ち着いた表情で表現していた。
シューマンになると2人とも一転して情熱的で熱い表現。特にバラーティが俄然実力を出し始め、音色、響きが場内に大きく広がり、作品に含有された様々なモティーフを微に入り細に入り、多彩に表現、実に聞き応えがあった。
意外と演奏される機会が少ないが、シューマンならでは深いロマンティックな世界を堪能することができたとともに、この時代の室内楽の傑作の一つであることを認識させてくれた演奏だった。
ブラームスは両者のバランスはもちろん、アンサンブルも申し分なく、実にまとまりのある良質の演奏。ブラームスらしい濃密で厚みのある表現が、何よりも自国の言葉で話しているような自然な抑揚で表現されていたのが見事。
ファルカシュは、先日見事なソロを聴かせてくれたが、伴奏でも安定感、音色、場面ごとの表情に多彩さがあり、ソリストとの一体感が素晴らしい。
バラーティのヴァイオリンはともかく表現力豊か。2人のアンサンブルによる特にロマン派の2曲は、滅多に聴けない名演だった。
アンコールにブラームスのヴァイオリン・ソナタ イ短調「F.A.Eソナタ」より 第3楽章 スケルツォ ハ短調 WoO2。これは2人ともスケールの大きいダイナミックな演奏で存分にその実力を披露してくれた。
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