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2025/06/21

 札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第22回

 2025年6月19日19:00   札幌文化芸術劇場 hitaru


コンサートマスターとヴァイオリン独奏 / フォルクハルト・シュトイデ


モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」

ジョン・ウィリアムズ:「シンドラーのリスト」より3つの小品

ドヴォルジャーク:交響曲第8番


 


 シュトイデは2023年(6月17日札響名曲)以来の登場。曲の導入と、ところどころ重要なポイントだけ指示をして、あとは自ら演奏しながらリードしていくというのが基本で、これはいつものスタイル。今回は大曲のドヴォルジャークを含む重量級のプログラムだ。


 モーツァルトはシュトイデクラスの演奏家だとお手のものだろう、と思っていたが、意外と大変そうに演奏しており、やはりモーツァルト、一筋縄ではいかないようだ。

 とは言え、ごくたまに輪郭が不鮮明になるところがあったにせよ、美しい音色や多彩で奥行きを感じさせる表現など全体的な仕上がりはさすが。 

 シュトイデはソロに専念してオーケストラへの指示はほとんどなし。オーケストラは荒さがあったにせよ、指揮者に統率されている時には感じられない積極性があり、これがなかなか聴いていて楽しく、とても気持ちのよい演奏だった。


 このhitaruシリーズは現代作品を必ず一曲プログラムに加える、というのがコンセプト。ジョン・ウィリアムズはポピュラリティがあり、聴きやすく、わかりやすい。シュトイデのソロ、オーケストラとも表情豊かで、起承転結が明快で良かった。映画を観て知っている人はもちろん、そうでない人にも背景にある重い事実を感じさせるシリアスさも持った演奏だった。


 ドヴォルジャークは、アクティヴで前向き、かつスケールの大きな表現で、冒頭のモーツァルト同様、実に生き生きとした演奏。これはやはりシュトイデの音楽性のみならず、優れたリーダーとしての能力、キャラクターがあってこそなのだろう。

 こじんまりとまとまることなく、全員が一つの方向に向かって積極的に演奏しており、これは普段の演奏からは聴けない演奏だ。

 特に見事だったのは最終楽章。冒頭のトランペットソロは今まで聴いたことがないような抜けの良いすっきりとした音色で、全く迷いのない演奏。続く変奏曲の主題のチェロの表情が意欲的で実に多彩。変奏ごとに登場する管楽器のソロなど、伸びやかに、かつ皆楽しげに演奏しているのがとても印象的。

 もちろんシュトイデ率いる弦楽器セクションの思い切りのいい表情が実に素晴らしく、全体の牽引者。オーケストラの様々なセクションに活躍の場を提供するこの作品を選んだシュトイデの選曲が光る。ドヴォルジャークの意図をこれほど見事に再現してくれた演奏は初めてだ。

 荒削りだったり、神経質な指揮者だったら修正してしまうようなバランスの箇所があったにせよ、指揮者抜きゆえに見えてきたフレッシュなドヴォルジャークの姿が浮かび上がってきて、とても面白く、楽しく聴けた演奏だった。アンコールに同じドヴォルジャークのスラブ舞曲。


2025/10/20

 札幌交響楽団 第672回定期演奏会

 2025年10月19日13:00  札幌コンサートホールKitara大ホール



指揮 /トーマス・ダウスゴー

ヴァイオリン /竹澤 恭子

管弦楽/札幌交響楽団


ランゴー:弦楽四重奏曲第3番「ラビア(怒り)」(T.ダウスゴー編曲版)

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲

ニールセン:交響曲第4番「不滅」


 ダウスゴーは2023年7月のPMFで札幌登場、今回が2度目の来札。前回は必ずしも全てが好印象というわけではなかったが、今日は全体的にいい仕上がりの演奏会だった。

 ブラームスは2023年6月の名曲シリーズで、シュトイデがコンサートマスター兼ソロを弾いて以来。協奏曲としての仕上がりは指揮者がいる今日の方が断然素晴らしい。竹澤は札響定期の常連で、今回も完成度が高く、やはり何度も繰り返し聴いてみたくなる演奏家だ。


 まずダウスゴーがオーケストラからいい音を引き出し、見事にまとめ上げていた。客席から指揮ぶりを見ていると、どことなくぎこちなく見えてソリストとの合わせは大丈夫か、と一瞬不安になったが、これは全く心配なし。

 竹澤は各セクションとより明確なコンタクトを取るために、色々な方向を向いて演奏し、指揮者の如く積極的にオーケストラをリード。キャリアの豊富さを感じさせるいいアンサンブルを作り上げていた。前回のシュトイデのように素っ気なくやや事務的だった音楽進行と比べると、協奏曲の醍醐味を聴衆に示してくれた秀演と言えるだろう。

 ステージ上でソリストが動きすぎると、人によっては音量がガラリと変化し、興醒めになる例も多いのだが、少なくとも今日座った席で聴く限りではほとんど気にならなかった。

 もちろん繊細な表情や、作品にふさわしい風格、スケールの大きさも申し分なく、ソリストとしても見事だった。

 アンコールにバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタから。これは美しく良く歌い込まれた素敵な演奏だった。


 ニールセンは、定期では1988年12月の秋山和慶氏以来だそう。著名な指揮者の録音が多い作品だが、実際には全曲をライブで聴く機会はほとんどない。

 今日の演奏はいいリズム感に支えられたすっきりとした爽快な演奏。弦、菅のバランスがとても良く、充実したしかも引き締まった響きで全体をまとめ上げていた。日頃聴き慣れている日本人指揮者からは感じられない歯切れの良さと逞しさが感じられ、とても気持ちの良い演奏だった。

 滞るところや理屈っぽいところがなく、常に明晰。ただ、出自が同じデンマークということもあってか、アクセントとか、民謡風のメロディーの歌い方など独特の世界観があるようで、それが上手く作用したようだ。失礼ながらニールセンがこんなに聞き応えのある作品とは思わなかった。


 他に冒頭にダウスゴーの編曲で、デンマーク出身のランゴーという作曲家の弦楽四重奏曲のオーケストラ版。第3楽章のコラールは、オルガン席前に弦楽カルテットが配置され、カルテットとステージ上のオーケストラが対話するように演奏されていた。プログラム解説によるとダウスゴー自身は普遍的魅力を感じているようだが、様々なモティーフが交錯し、普遍性よりも個人的思い入れが強すぎる作品のように思えた。これはまた改めて違う機会に聴いてみたい作品だ。

 コンサートマスターは会田莉凡。





2023/06/19

 森の響フレンド札響名曲コンサート

ウィーンのヴァイオリンで聴く

ブラームスとJ.シュトラウスⅡ


2023年6月17日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール


コンサートマスターとヴァイオリン独奏 / フォルクハルト・シュトイデ


ブラームス:ヴァイオリン協奏曲


J. シュトラウスⅡ:「くるまば草」序曲

          ワルツ 「もろびと手をとり」

          常動曲

          入り江のワルツ

          ポルカ「雷鳴と稲妻」



 シュトイデは2018年Kitaraのニューイヤー(2018年1月14日)以来の登場。2018年は、ブルッフのヴァイオリンコンチェルトの弾き振りだったが、今日はブラームス。オーケストラの書法が全く違うので、ブルッフほど簡単には行かなかったようだ。 

 弾き振りと言いながらも、オーケストラを信用してか、細かい箇所はほとんど振らずに、ほぼお任せ。

 ソロは観客の方を向きながら演奏しているので、アンサンブルはコンサートマスター(ブラームスは田島高宏)だけが頼りだ。

 ソロから離れているオーケストラのプレイヤー、例えば管楽器セクションは何処までソリストの演奏が聴こえているのだろうか。微妙なタイミングや音量などのバランス等、やはり指揮者がいないとアンサンブルがかなり辛かったように聴こえた。シュトイデがもう少し指示する機会が多いと、もっといい仕上がりになったのではないか。

 とはいえ、ソロは素晴らしく、かつ、オーケストラの響きは全体的に引き締まってまとまりがあり、申し分ない。特に終楽章の力感あふれる表現が聞き応えがあった。全体的に良かっただけに、細部の未消化がちょっと気になった演奏だった。


 後半はコンサートマスターとして登場。全てJ•シュトラウス2世の作品ばかり。前半とはオーケストラの響きがガラリと変わり、全体的に安定感に満ちた音。

 指揮者無しで、コンサートマスターが采配を振ると、明らかにオーケストラ全体の響きが変わる。今日はウィーン風の雰囲気だ。軽やかで、柔らかく、しなやかな伸縮自在の表現で、弦の音がすっきりと抜けて聴こえてくる。ウィンナワルツの独特なリズムの表現もさまになっていて、ごく自然に表現できており、これはとても楽しかった。

 明らかに日本人指揮者からはなかなか聴くことのできないヨーロッパ風のニュアンスとサウンドだ。指揮者よりもダイレクトにメンバーに音楽が伝わるためなのだろうか。

 シュトイデが冒頭のプレトークでも話していたが、ウィーン風のローカルな訛りのドイツ語をオーケストラは習得しなければならなかったので、大変だっただろう、とユーモアたっぷりに話していたが、それが見事に消化されていて、団員もその表現を楽しんでいるよう。その雰囲気が聴衆にもよく伝わってきて良かった。


 ようやく夏らしくなってきた暑い日に、ニューイヤーコンサート風のプログラム。どことなく違和感があったが、すっきりとした気分で帰路につけた気持ちのいい演奏会だった。