札幌交響楽団 第677回定期演奏会
2026年5月31日13:00 札幌コンサートホール Kitara大ホール
指揮/エリアス・グランディ
コントラルト/ゲルヒルト・ロンベルガー
女声合唱/札響合唱団
児童合唱/HBC少年少女合唱団ジュニアクラス
管弦楽/札幌交響楽団
マーラー:交響曲第3番
この作品、大作ゆえにライヴで聴く機会は極めて少ない。この札幌コンサートホールで前回聴いたのは、確か2000年のPMFで、最近惜しくも他界したマイケル・ティルソン・トーマスの指揮だったと思う。アカデミー生が冒頭のホルンを元気いっぱいに演奏していたことをうっすらと記憶している。
札響では2010年の定期に尾高忠明の指揮で演奏されたようだが、残念ながら聴いていない。従ってライヴで聴くのは四半世紀ぶり。
今日は素晴らしい公演だった。何よりもグランディが首席指揮者ならではの大活躍。良く歌い込まれ細部まで丁寧に仕上げられ、全体的にやや遅めのテンポによる演奏で曖昧な箇所はひとつもない。各楽章の性格描写が的確かつわかりやすく、間延びしたり先走ったりするところが全くない。スコアのあちこちに書かれているマーラーの指示、「急がないで!」を思い出すほど、落ち着いた安定した演奏だった。
それと良質の響き。これだけ金管楽器が多ければ、もっと派手で大音響の演奏が繰り広げられるのだろうと思いきや、金管楽器群が洗練された、かつ精巧にコントロールされた、例えれば、ヨーロピアンスタイルとでも言える、極めてバランス感覚に優れた演奏。
この管楽器群と弦楽器群が作り出す全体の響きがまるでヨーロッパの良質のオーケストラを聴いているようだった。特に第6楽章のフィナーレに向かって次第に音量を増大していくところでも、まとまりのある極めてバランスのいい響きを失わず、これはとても心地良かった。こういう感覚の響きを札響から聴くのはひょっとして初めてかもしれない。
そのグランディの要求に見事に応えたオーケストラもまた素晴らしくかった。特に、金管楽器ではトロンボーンの首席山下と、昨年11月に退団し、今日エキストラ首席として出演した福田の両名。良くコントロールされた音色と表現で、「歌う金管楽器」として本日の主役級の大活躍。余すところなくマーラーの魅力を堪能させてくれた。そのほかの管楽器グループももちろん好演。木管では最近フルート首席が良く音が通るようになってきて、今日もいい演奏だった。
今日は対向配置で、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンが離れて座っており、マーラーのように対位法的に各セクションの独立性が強い場合はこの配置がいいようだ。特に、終楽章のようにいかにもマーラーらしい通俗的歌謡性を感じさせる単純な旋律と豊かな対位法的動きとが一体となった楽章ではこの対向配置が抜群の演奏効果を挙げていたのではないだろうか。
弦楽器は力まず、柔らかいボーイングでいい音色での演奏。特に第2楽章でのヴァイオリンの主題の歌い方が秀悦。軽やかでマーラーのいう無邪気さが素敵に表現されていて、これもグランディの的確な指示ゆえか。
逆に、各パートがクリアに聴こえてきただけに、もう少し厚みのある響きがあれば、などと感じたところもあり、この辺は今後の課題かもしれない。
コントラルトのゲルヒルト・ロンベルガーが深い奥行きのある声で、説得力のある歌唱。女声合唱団はやや歌詞がわかりにくかったにせよ児童合唱団と共に好演。
トータルではここ最近の定期では抜群の仕上がりだったと言えよう。グランディの今後の活躍が多いに期待できる。
コンサートマスターは田島高宏。