2026/08/24


 第26代札幌コンサートホール専属オルガニスト

赤枝 サンテソン 留果 

      フェアウェルオルガンリサイタル

2026年8月22日 札幌コンサートホールKitara大ホール


J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ハ長調 BWV566a

       さまざまな手法による6つのコラールより 

      わが魂は主をたたう BWV648

M.ヴェックマン:第2旋法によるマニフィカト

J.S.バッハ:さまざまな手法による18のライプツィヒ・コラール集より

      おお愛する魂よ、汝を飾れ BWV654 

      パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582

ヴィエルヌ:オルガン交響曲 第2番 ホ短調 作品20より 

       第1楽章 アレグロ、第2楽章 コラール、第4楽章 カンタービレ

フランク:オルガンのための6つの小品より 第5曲 祈り 嬰ハ短調 作品20

アラン:連祷 AWV100



 このオルガニスト、ともかく音が綺麗。しかもオルガンでこれだけ感性豊かに歌い込んだ演奏を聴くのは久しぶり。特にレガートの美しさは歴代専属オルガニストの中でも群を抜いているのでは。

 そのほかにも、一つずつの音がきちんと鍵盤の底まで弾き込まれ、すっきりと抜けてくる確実で明確な響き、根音がしっかりとしたまとまりのあるハーモニーの響き、そしてゆったりとしたテンポでも決して停滞することのない良質のテンポ感とリズム感など、彼の演奏を通じて、久しぶりにKitaraオルガンの透明感ある美しい音色と響きを味わうことが出来た。


 レガートの美しさでは、バッハの「おお愛する魂よ、汝を飾れ 」。息が長く途切れることなく歌い続けられるコラール旋律が素晴らしく、装飾音など含め全体的に滑らかで柔らかい表情が実に素敵だった。

 パッサカリアは今年のPMFガラコンサート(7月26日)でも弾いていたが、今日は細部まで気配りされた演奏で、音型のディテールの変化が手に取るように分かり、一貫したテンポの中で停滞することなく次々と変容していくバッハの凄みを感じさせた秀演だった。

 そのほかのバッハも良かったが、ヴェックマンのレジストレーションによる表情の変化が素晴らしく、何よりも響きが明瞭で雲ひとつない晴天のような音が心地よかった。


 後半はフランスの作品集。ドイツの作風、雰囲気とはガラリと変わり、特にバッハで聴かせた明晰さとはまた違った、しなやかでまろやかな響きが印象的。

 ヴィエルネの、オルガンシンフォニーならではの分厚くスケール感ある表情の豊かさが見事。ここでは厚い和声が濁ることなく表現されていて聞き応えがあった。

 フランクはとてもよく歌い込まれ、Kitaraオルガンの洗練された音色の美しさとホールの優れた音響効果とが一体となった素敵な演奏だった。Kitaraでなければ決して聴くことのできない良質の響きだ。

 アランの「連祷」は歴代専属が好んで演奏する名作だが、今日の演奏はバッハ同様細部まで入念に仕上げられており、全体的な響きに埋没しがちな細やかな音型が手に取るように聴こえてきて、楽曲の構造がクリアにされており、今までのアラン演奏とはまた違った魅力が感じられてとても面白かった。

 ドイツとフランスの名作を演奏し、これだけ異なる性格の作品を過不足なく優れたバランスで演奏できるオルガニストは貴重。まだ二十代半ばのようだが、今日のような誠実で丁寧な演奏を忘れることなく、優れた音楽家として大成することを期待したい。

 

2026/08/07


札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第26回

 2026年8月5日19:00 札幌文化芸術劇場 hitaru


指揮 /沖澤 のどか

ヴァイオリン /中野 りな

管弦楽/札幌交響楽団


林 光:吹き抜ける夏風の祭

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲

プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」組曲より

         ~沖澤のどかセレクション~

 モンタギュー家とキャピュレット家(第2組曲No.1)

 少女ジュリエット(第2組曲No.2)

 マスク(第1組曲No.5)

 ロメオとジュリエット(第1組曲No.6)

 ティボルトの死(第1組曲No.7)

 別れの前のロメオとジュリエット(第2組曲No.5)

 ジュリエットの墓の前のロメオ(第2組曲No.7)



    現在多方面で活躍中の沖澤のどかが札幌初登場。プレトークでのお話しを聞くと、明るく元気がよく、おしゃべり好きの活発な人柄のようで、指揮にもその人柄が現れていたようだ。

 後半のプロコフィエフがとても良かった。オーケストラをよく把握し、札響からベストのサウンドを引き出し、管楽器群からは厚みのある豊かな響きを構築、弦楽器群はよく歌わせ、共に響きがとてもきれいで最強音でも聴きやすい。耳障りな響きは一切なく、全体的にとてもバランスの良い、いい音を導き出し、しかも細部まで細やかで豊かな表情があり、音楽的にも申し分ない。

 冒頭の「モンタギュー家とキャピュレット家」のこれから起こるドラマを予期させるような不安感と期待感とが入り混じった表情、「ロメオとジュリエット」での歌い込まれた繊細で美しい表情など、ピックアップすればきりが無いほど多彩な表情に満ちており、これほど音楽的に豊かなプロコフィエフは滅多に聴けないのでは。

 単なるバレエ音楽の枠を大きく超えた名曲であることを実感させた演奏で、沖澤の素晴らしい音楽性と統率力が感じられ、その幅広い活躍ぶりは当然だと思わせた。


 とは言いつつ、後半のプロコフィエフの仕上がりの良さから見ると、冒頭の林光はやや物足りない。プレトークによると、この作品、祇園祭をモティーフにしているとのこと。筆者もこの祭を猛暑の中何度か経験しているが、そんな大衆の個人的想いではなく、もっと長い歴史の中で語り継がれる普遍的な祭の情景を、その準備から描写しているようだ。今日の演奏は、まとまりのあるとてもいい音がしていたが、全体的に一本調子。作品そのものは、もっと幻想的で多彩のように思えたので、もし演奏機会がまたあれば次回に期待しよう。


 シベリウスはソリストの中野りなが素晴らしかった。2025年3月に札響とチャイコフスキーのコンチェルトを共演していたようだが、聴くのは初めて。

 技術的には申し分なく、逞しさを感じさせる豊かな響きと音色が特徴で、シベリウスを太い線で明確にしっかりと描いてくれた名演。沖澤は単なるサポート役に留まらず、表現力豊かな、ドラマティックなシベリウスを聴かせてくれ、ソリストと一体となったスケールの大きいシベリウスを聴かせてくれた。

 時としてオーケストラが響き過ぎ、ソリストが埋没してしまう瞬間もあったにせよ、コンチェルトでこれだけオーケストラを豊かに響かせた演奏は滅多にないので、とても聞き応えがあった、充実した演奏だった。

 ソリストの音程の取り方が時々低めでオーケストラと調和していない箇所もあったように聴こえたが、これはあくまでも個人的好みで、気のせいかもしれない。

 コンサートマスターは会田莉凡。