2021年10月30日(土曜日)13:00 札幌コンサートホールKitara小ホール
出演:ワーヘリ
(ユーフォニアム/外囿 祥一郎 テューバ/次田 心平 ピアノ/松本 望)
モンティ/金井 信編曲:チャールダーシュ
ブラームス/松本 望編曲:ハンガリー舞曲 第5番
加羽沢 美濃:やさしい風
中橋 愛生:アロハ・オエ・ディエス・イレ
松本 望:空への階段
ビゼー/西下 航平編曲:「カルメン」の主題による幻想的組曲
リスト/松本 望編曲:ハンガリー狂詩曲 第2番
コロナ禍で昨年6月13日開催予定が延期になったトークイベント付きコンサート。
この一風変わった「ワーヘリ」(ワールド・ヘリテージの略)という名前の由来は、日本ジャズ界の巨匠、前田憲男が「世界的に珍しいデュオであると共に彼らが遺す音もまた世界遺産」という意味を込めて命名したとのこと。確かにこの組み合わせは他に聞いたことがない。
快晴で中島公園のイチョウが美しく、公園は散策を楽しむ人々でいっぱい。緊急事態宣言解除で、会場は様々な年齢層でほぼ満席。親子連れや、楽器愛好者の若者が多く、珍しい組み合わせのアンサンブルへの期待と、久しぶりの快晴に恵まれたお昼のコンサートのためか。
演奏はお話しをはさみながら約1時間。低音でビートを刻む役割だけではなく、旋律楽器として活躍できる能力と、低音域ゆえの豊かな表現力を持つ楽器であることを伝えてくれ、3人によるお話しも面白く、楽しい演奏会だった。
特に楽しかったのが2台の金管楽器のみによる中橋の「アロハ・オエ・ディエス・イレ」とビゼーの「カルメン」からの4曲。幅広くよく歌い込まれた感性豊かな演奏で、低音楽器の魅力を余すところなく伝えてたのではないか。
ただ、一級のプロでも長時間吹き続けるのはかなり辛い楽器のようだ。また、低音楽器特有なのか、時々ディテールが甘くなりがちなところもあったが、そこをしっかりと締めていたのがピアノの松本。切れ味よく、鋭いリズムで一切妥協がない。管楽器のブレスに合わせるなどの細かい配慮よりは、隙の無い密度の高い音楽を作り上げるほうを優先、アンサンブルを弛緩することがないように、リーダー役として、しっかりとまとめ上げていたのが素晴らしい。
その松本の作曲による「空への階段」が、同音反復のリズムから始まり、フランス風のフワッとした雰囲気を見せながら次第に盛り上がり、プロコフィエフのトッカータ風の激しい動きをしながら、エンディングに向かうなかなか面白い発想の作品で、金管楽器の新たな可能性を示してくれ、これは楽しめた。
同じ松本の編曲で、フィナーレの「リストのハンガリー狂詩曲第2番」では金管楽器にここまで難しいフレーズを吹かせるのか!とびっくりさせる場面も登場するなど、3つの楽器がそれぞれ最も美しくかつ効果的に響くように書かれた見事な編曲。彼らの信頼関係の深さが感じられる素晴らしい演奏だった。
その他、北海道の味噌ラーメンの話題から誘導されたミ、ソ、ラのモティーフによる松本の即興演奏が素敵だった。ラヴェルを思わせるフランス印象派的な雰囲気から始まり、シャンソン風の洒落たメロディーが現れる展開となり、最後はミソラを弾いて終わる機知に飛んだ演奏で、これは実に見事。プログラムにはなく、金管組の休憩の時間を作るための即興的アイディアだったらしいが、これに応えた松本も素晴らしい。なお彼女は北海道出身で東京芸大の作曲科卒業。
終演後、金管両氏によるトークイベントが一時間ほど行われた。事前に質問を募集しての実施。半数以上の来場者が残り、このグループに対する期待度が高いことが窺われた。
このコンサートはコンサートホール企画連絡会議(Kitaraのほか、新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ、所沢市民文化センターミューズ、すみだトリフォニーホール、京都コンサートホール、アクロス福岡(福岡シンフォニーホール)の全6館により構成)連携事業。これまでにプラジャークカルテット、ダネルカルテット、ハイドン・フィルなど素晴らしい演奏家達が登場している。
今回は福岡シンフォニーホールとの連携。ここのホールはシューボックス型のクラシックなホールで、ゴージャスな雰囲気のいい響きのするホール。これらについてはまたあらためて紹介したい。
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