2021/11/30

Kitaraワールドオーケストラ&合唱シリーズ>

鈴木 優人指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン


2021112315:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ト長調 BWV541
       さまざまな手法による18のライプツィヒ・コラール集より※
      いざ来ませ、異邦人の救い主よ BWV659
      トリオ《いざ来ませ、異邦人の救い主よ》BWV660
      いざ来ませ、異邦人の救い主よ BWV661


     カンタータ第61

         《いざ来ませ、異邦人の救い主よ》BWV61
     ブランデンブルク協奏曲 5 ニ長調 BWV1050
     クリスマス・オラトリオ BWV248より
      第一部《声をあげてよろこび、その日々を讃えよ》

                   ※オルガン独奏/鈴木 優人


指揮・オルガン独奏/鈴木 優人
ソプラノ/森 麻季 アルト/青木 洋也 テノール/櫻田 
バス/ドミニク・ヴェルナー
管弦楽・合唱/バッハ・コレギウム・ジャパン


   前半は待降節の季節にぴったりのプログラム。鈴木優人のオルガンソロに続いてカンタータ第61番。待降節の開幕にふさわしく、エッジの効いたクリアな演奏のフランス風序曲でスタートし、以後の流れもスムーズで、全体的に作品の内容がよく伝わってきたわかりやすい演奏だった。
 冒頭の合唱が硬めで不安だったが、最後のコラールでは声がよく響くようになり、イエス到来への期待が表現されていた。レチタティーヴォとアリアを歌ったテノールの櫻田はベテランらしい安定感と明瞭な歌詞でさすがだ。バスのドミニクヴェルナーは深みのある声と豊かな表情がイエスにふさわしく素晴らしい。ソプラノの森麻季はやや不調で、イエスを迎え入れる喜びは充分伝わり切らなかったが、透き通った表情がよかった。


 ブランデンブルグ協奏曲第5番は、名手7人の競演。ゆとりある遊び心に満ちた演奏で楽しめた。鈴木優人のチェンバロは、第一楽章の鮮やかなソロ、第二楽章の柔軟で表情豊かな表現、第三楽章での軸がぶれない安定したテンポで、好演。チェンバロもいい音が出ていた。ヴァイオリンの若松夏美の振幅ある伸びやかな表情のソロは彼女ならではの魅力。鈴木秀美のチェロと共に鈴木優人を見事にサポートしながらのアンサンブルは、素晴らしかった。トラヴェルソの菅きよみの落ち着きある演奏も良かった。これだけの上質な演奏は久しぶり。


 最後はその名の通り本来はクリスマスに演奏されるクリスマスオラトリオだが、本日は一足先にその第一部を演奏。鈴木優人の指揮は全体をしっかりと統括。アクティブでリズム感が良く、生命感に満ちており、音楽が硬くならない。しかも細部まできちんと仕上げた演奏で、クリスマスを迎えた喜びとイエスに対する愛を描いた作品の魅力がしっかりと伝わってきた。

 声楽グループはレチタティーヴォでもアリアでもコラールでも、緻密で細部の仕上がりが良い。まるで器楽のようにピッチやリズムも安定。歌詞も明瞭でアンサンブルに破綻がない。呼吸が浅くならず、オケと一体となって彫りの深い音楽を作り上げていた。アルトの青木 洋也が技術的にも音楽的にも安定した好演。個人的には合唱にはもう少し声そのものの魅力が欲しい。

 以前のBCJより、ワンランク上の演奏だったと思う。その立役者は指揮者の若き才能に加え、久しぶりの登場で存在感を示した鈴木秀美。安定した通奏低音で、アンサンブルを監視しながら核となり、時に睨みを効かせながらの演奏はさすが。


 冒頭のオルガンソロは三つのライプツィヒコラールがよく歌いこまれた演奏で好演。前奏曲とフーガはさすがに緊張していたのか、音が鳴りきらず、やや表情が固めだったのが惜しまれる。ビジターで、いきなりKitaraの大オルガンを演奏することはいかに優秀な音楽家でも難しい。十分なリハーサル時間がとれなかったのだろう。そのハンディを考慮すると、よく弾いていたと思う。





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