2022/01/16

 Kitaraランチタイムコンサート>

筑前琵琶で言祝ぐはつ春

〜人間国宝が紡ぎ出す音色と語りの至芸〜


202211513:00   札幌コンサートホールKitara小ホール


筑前琵琶/法和院 奥村 旭翠(人間国宝)
プレトーク/尾藤 弥生(北海道教育大学教授)


「平家物語」より 抜粋/初世  旭宗作曲:那須與市
大坪 草二郎作詞/初世  旭宗作曲:茨木




定例の小ホールでの邦楽ニューイヤーコンサート、今回は筑前琵琶で、ソールドアウト。

 琵琶の歴史は奈良時代から始まる。時代とともに改良発展し、主に現在5種類の楽器とジャンルが存在し、筑前琵琶が登場したのは明治時代中期頃。

 声楽はメリスマの多い装飾的な旋律で、琵琶は語り唱えながら演奏するための伴奏楽器(以上配布プログラム解説より)。


 Kitara主催で琵琶が登場する演奏会は過去にもあったが、人間国宝の演奏者によるソロの演奏会は初めて。


 琵琶はバチではじいて演奏するので、力強い音も出せ、表現の幅は広い。三味線と共通の音色も持っているので、庶民から貴族まで幅広い階級で愛好され続けたのに違いない。

 奥村旭翠の歌は、歌詞の明瞭さ(歌詞が添付)、表現力、声量、声の質、音程、リズム、メリスマの美しさなど、どれもハイレベルで、心に迫る感情表現が素晴らしい。琵琶は微妙なニュアンスからドラマティックな表現まで実に多彩に表現されており、申し分ない。凛とした美しさがあり、喜怒哀楽のドラマを一人で演じ切るこのジャンルならではの醍醐味を十分味わうことが出来た演奏だった。


「那須與市」は淡々と進む語りが魅力的。矢を射った瞬間とその後の喝采のドラマに至る過程が印象的でわかりやすい。その後、演奏者によるお話しがあり、楽器と人間国宝についてユーモアいっぱいに大阪弁で話してくれ、これは楽しかった。2曲目の「茨木」は演奏者が是非聴いていただきたい作品とのこと。鬼の腕を奪って逃げるシーンや、随所で登場した筑前琵琶の長い素晴らしいソロもあり、これは思わず惹き込まれるような素晴らしい演奏だった。

 アンコールに平家物語の有名な冒頭から一節。


 コンサートホールで演奏される邦楽は、例えば武満徹に代表される西洋と日本がコラボレーションした作品が中心だったが、今日のような純邦楽は日本人であるアイデンティティを感じさせ、心に響くものがあって、とてもいい。

 ステージは屏風と毛氈が設置されており、いつもの小ホールとはちょっと趣の違う雰囲気でこれもなかなかいい。 Kitara小ホールは今日のような邦楽ソリストだけの演奏会でも、とても良く響く雰囲気のある良質なホールであることを改めて認識した。


 このシリーズの前回に登場した(令和2年1月)邦楽四重奏団もクオリティの高い演奏家集団で、邦楽の世界の魅力をたっぷり紹介してくれた良質なコンサートだった。特に尺八のソロは、Kitara小ホール演奏史に残る名演だったと言える。

 このシリーズは新しい発見もある楽しいコンサートなので、今後も邦楽の優れた演奏家の招聘を期待している。

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