Kitaraのニューイヤー
2022年1月8日15:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/齋藤友香理 ソプラノ/冨平安希子 テノール/宮里直樹
管弦楽 札幌交響楽団
ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
チャイコフスキー:バレエ組曲「白鳥の湖」作品20a より
レハール:喜歌劇「微笑みの国」より
序曲
私たちの心に愛を刻んだのは誰?/君こそ我が心のすべて
今一度ふるさとを
レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」より
ワルツ(舞踏会の妖精たち)
おお我が祖国よ/ヴィリアの歌/唇は語らずとも
シュトラウス2世:観光列車 作品281/常動曲 作品257
美しく青きドナウ 作品314
指揮者は札幌初登場の齋藤友香理。三十代の若手で、日本でオペラデビューするなどある程度活躍した後、2013年からドレスデンで研鑽を積んでいる。その成果なのか、ヨーロッパナイズされた雰囲気の、柔らかく、暖かい音楽を奏でる。しかもオーケストラを豊かに響かせるので、とても聴きやすい優しいサウンドが聴こえてくる。これは女性指揮者だから、ということではなく、この指揮者の優れた特質だ。
オペラでデビューしただけに、後半のレハールがよかった。
「メリー・ウィドウ」からは絶好調で、特にワルツ「舞踏会の妖精たち」はオーケストラを伸びやかなサウンドでよく歌わせ、華やかさと繊細さがバランス良く表現された素敵な演奏で、今日一番の出来だ。
テノールの宮里直樹とソプラノの冨平安希子を迎えてのソロ、デュエットは歌もオーケストラのバックアップも申し分なく、好演。テノールの宮里はさすがの歌唱で、声量も表現も一級品、冨平は中音域がオーケストラに埋もれて、ちょっと聴きにくかった他は、見事な歌唱。ともに聴衆を魅了した。
「微笑みの国」は演奏される機会は少ないが、指揮者の思い出の曲らしく、序曲も歌もいずれも上質の演奏で、楽しめた。
最後の「美しく青きドナウ」は、この指揮者らしく、丁寧に細部まできちんと仕上げた演奏。シンフォニックでしっかりとした響きと、柔らかいワルツのリズムがよかった。
前半のプログラムでは、冒頭のウェーバーは少々緊張気味で、指揮者とオーケストラの探り合いのような雰囲気もあったが、ホルンの秀逸なソロなど、管楽器群の活躍もあって、伸びやかで、冒頭にふさわしい演奏だった。
チャイコフスキーは、バレエ公演のために演奏しているような全体的に遅めのテンポ。コンサートでは組曲版は早めのテンポで演奏される場合が多いが、今日のようなバレエを想定させるテンポだと、じっくり作品を味わうことができ、同時にバレエの色々なシーンを想像しながら聴けるので、面白さが倍増する。
ただし、今回は音楽だけを鑑賞する機会なので、そうするとダンサーのステップに合わせていくようなテンポ感だと、聴いていてやや物足りない。ベテラン指揮者のような、オーケストラを一気にドライブしていくようなスケール感があるともっと楽しめたのでは。
全体的には、繰り返しが多い作品では単調になりがちなところもあったが、音楽性の豊かな指揮者で、共演者がいるジャンルでより力を発揮するタイプか。今ならオペラで一歩抜きん出たいい仕事をしそうだ。将来期待できる指揮者だと思う。
今回のようにニューイヤーコンサートに若手指揮者が登場するのは楽しい。プログラミングが独創的だし、オーケストラからいつもとは違う新しいサウンドを引き出してくれるのが魅力だ。
コンサートマスターは田島高宏。随所で聴かせたソロが良かったが、やはり彼がいると札響の音全体が締まっていい。そしてホルン、オーボエ、トランペット、フルートの女性奏者が大活躍。いいソロを聴かせてくれた。
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