回想の名演奏
群馬交響楽団創立75周年記念演奏会
山田和樹指揮/群馬交響楽団東京演奏会2020
2020年10月30日19:00 東京オペラシティコンサートホール
指揮/山田和樹
ヴィオラ/今井信子
管弦楽/群馬交響楽団
ベルリオーズ:イタリアのハロルド
ガーシュイン:パリのアメリカ人
ラヴェル:ラ・ヴァルス
今話題の指揮者、山田和樹を初めて聴いた演奏会。1979年生まれで,当時は40才になったばかり。まだ若手の世代に属するが、傑出した、素晴らしい指揮者であることを確信できた演奏会だった。
映像で見ていた限り比較的地味な指揮者に思えたが、実際は動きも大きく、飛び上がったりするシーンもあり、若々しくエネルギッシュである。
指揮は明確、オーケストラをよく統率しており、そこから生まれる響きは極めて充実している。明らかにオーケストラ本来の実力を余すところなく引き出す、指揮者として最も必要な能力を持っていることを証明している。
たくましい生命力を感じさせ、音楽は一歩も停滞することがない。音楽の作り方も自然で嫌味が無い。現在の日本の指揮者の中でも、おそらく抜群の才能の持ち主だ。
一方の群馬交響楽団も聴くのは初めて。山田の見事な指揮にもよるが、音も響きも美しく、安定した良質のオーケストラだ。
最初は今井信子のヴィオラソロで、ベルリオーズ。この日、聴いた席は3階席下手側のバルコニー席(3階L2列席)で、ステージの半分が見えない見切り席。身を乗り出して見ると、辛うじてコンサートマスターの弓の先までと、ソリストのボーイングの様子を確認することができる程度。だが、音響的には素晴らしく、聴こえてくる音は厚く、充実している。演奏は見事だった。
ヴィオラソロはとてもきれい。音程はよく、音色も充実しており、申し分ない。オーケストラは安定しており、ヴィオラコンチェルトとも言えるこの作品の魅力をしっかり伝えてくれた。ここでの山田はオーソドックスに全体をまとめ上げ、なかなかいいセンスだ。
より素晴らしかったのは後半。ガーシュインは、リズム感、メリハリある表現、自由自在の管楽器のソロ、オケの充実した響きなど、前半とはがらりと雰囲気が変わり、ホールいっぱいに豊かな響きが広がり、文句なしに楽しめた。
最後はラヴェルの「ラ・ヴァルス」。一筆書きのような鮮やかな指揮で、最後まで一気に演奏した爽快な演奏。おそらく即興的にテンポをかなり変えていたような気もするが、オーケストラが見事に反応し、この作品の面白さ、管弦楽法の素晴らしさが見事に再現された名演だ。
色彩感、躍動感、生命力があって、これは他の誰からも聴けない音楽だ。
アンコールは無し。団員も満足した表情を見せていた。
この当時は,コロナ禍の制限下で、市松模様での席設定。2、3階正面席はそれなりに埋まっていたが、それ以外は比較的空席が多かった。
なお、3月17日に、札幌コンサートホールで、山田和樹指揮の横浜シンフォニエッタ演奏会がある。川久保環紀をソリストにブラームスのヴァイオリンコンチェルトとベートーヴェンの交響曲第7番を演奏予定。前回聴けなかった古典を中心にしたプログラムで、大いに楽しみだ。
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